2008.04.07特集

桜色を紅色の水面に浮かべて

早咲きに散った「春」を拾い 家路につく午後 遅めの昼食の横に 小鉢をもう一つ 予期せぬ「春」の訪れに いつもの食卓が表情をかえた
写真:菊池 友理
(シャッタースピード:1/250秒、絞り値:F1.8、ISO感度:100、レンズ:50mm f1.8)

 東京の各地で桜が開花しはじめた3月。菊池さんの家からほど近く、最寄りのバス停がある角にも無数の「春」を芽吹かせた一本の桜が立っている。咲いたばかりの命が早くも地面に落ちているのを気の毒に思い、ふわりと丸めた手の中に持ち帰る。まだ若い「春」を枯らしてしまわないよう、紅色の小鉢を取り出し、水を張って浮かべた。

 「せっかく咲いた花だから、少しでも長生きしてほしい」。花びらの質感を目立たせるため、絞りを開放して撮影した一枚。周りをぼかすことで、桜だけに目がいくような構図をとらえ、紅い衣をまとった桜はよりみずみずしく咲き続けた。


しおれても、花は美しい

(シャッタースピード:1/1250秒、絞り値:F1.8、ISO感度:100、レンズ:50mm f1.8)

 「自分のために花を買ってきて生けるのが好きなんです」。普段から心にゆとりのある生活を心がける菊池さんにとって、花は日常生活の一部として溶け込んでいる。何気ない日常を撮るときも、花のある風景は多く、その数だけ演出方法にも工夫が見られる。

 菊池さんがカナダに滞在していた昨年春、誕生日に贈られた白い花が短い命を終えようとしていた。生き生きとした花ではなく、しおれかけた花にも生命の力を感じることができる。バルコニーの手すりに並べた花をモノトーンで撮影した一枚からは、残りわずかな命を全うしようとする小さな生命の呼吸が聞こえてくるようだ。


CANON EOS 5D
CANON EOS 5D

以前からCanonのフィルムカメラを使用していた菊池さんは、現在も同社デジタルカメラのEOS 5Dを愛用。メーカーの乗り換えも考えたが、Canonの色合いが好きだったため、購入当時、同価格帯のデジタルカメラで唯一のフルサイズボディだった同モデルを選んだ。

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菊地 友理 菊地 友理

グラフィックデザイナーとしてデザイン事務所に勤務する傍ら写真家としても活躍。2005年より活動の拠点をカナダ・バンクーバーへ移し、写真展、ローカル紙、雑誌、ウェディング撮影、モデル撮影などを手がける。2007年以降は日本とカナダを行き来しながら活動。人物、風景、自然、料理、静物などを中心に撮る作品は、グラフィカルな切り口と女性ならではの穏やかで優しい視点が特徴。ユナイテッド・フィーチャー・プレス所属。

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