旅・宿・移住

2007/03/01

広大なプライベートビーチへの誘い

ビーチリゾートを選ぶ際、どうしても外せない選択肢、それは「プライベートビーチ」の存在だ。ホテルの宿泊客だけが利用できる専用のビーチがあるか否かということ。

 だからといって、観光ガイドブックに名を連ねる、有名なパブリックビーチが悪いと言っているわけではない。広大な白砂のビーチに無数のパラソルが咲き、沿道に並ぶ数え切れないほどの商店に圧倒されながらウィンドウショッピングをするのも飽きないし、ビックリするほど美味しい料理を出す穴場のお店を発見することもしばしばである。

 あくまでも、日常の喧騒を忘れ、別世界に身を置くべくビーチリゾートに来ている。それが一番の目的。海水浴場の活気(と言ってしまうと身も蓋もないが)は、あくまで旅のスパイス程度。その点、プライベートビーチは、そのホテルの占有物そのものだ。そこには、ゆっくりと流れる時間に身を委ねて、思い思いの旅のスタイルを楽しむ人たちが創り出す、何ともいえない一体感が醸成されている。そしてなにより、ゴミがほとんど落ちておらず、ホテル側のメンテナンスが十分に行き届いている。一流のリゾート地であっても、公共ビーチとなると、どうしてもゴミが目に付いてしまう。そんな光景は、訪れる人々の倫理観を問い直すほどの痛烈な事実でもある。

 もちろん、プライベートビーチさえあればいいわけでもない。それに猫の額ほどの広さでは意味がない。少なくとも専用ビーチの広さ1kmは欲しい。実に6kmに及ぶプライベートビーチを持つホテルもある。ホテルのある湾全体、見渡す限り全ての海岸線がプライベートビーチになっている。ここまでくると、その景色は圧巻そのもの。散歩をしようと歩き出しても、雄大な景色に比べて、自分自身の位置がいつまでも変化しないことに、少し可笑しさが込み上げてきたりもする。いざ海に入って泳ごうとすると、左右の一番近くで泳いでいる人でも200〜300メートル先だったりすることもザラだし、海に入っているのが自分ひとりだけだったりすることもある。「もし自分がプライベートビーチで泳いでいて溺れても誰も気づかないだろうな」と、変な不安が襲ってきたりするものだ。海辺の看板には当日の波の状況を示す旗がたなびいているものの、監視員などといった気のきいた人たちはもちろんいない。そりゃそうだ、こんなに広いビーチ、監視しきれるわけがない。旗の横には「自己責任で海に入ってください」と書かれた看板が、堂々と鎮座しているのだから。

 夜の静寂さは、プライベートビーチに違った表情をもたらす。昼間とは打って変わった、全てを飲み込んでしまうような真っ黒な波が、リズムよく押し寄せてくる。そんな海辺にじっと目を閉じて座っているだけでも、体全体の疲労感が一気に溶け出していくように感じるものだ。そして朝、真っ青な空の下で延々と続くビーチに、昨晩上陸した無数のカニ達が砂を掻き出し、丸めた砂粒の立体芸術が、果てしなく広がる。そんな毎日が飽きてしまうようで、不思議と全く飽きない。






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