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2007/07/31

僕の心のふるさと〜鳥取・皆生温泉(2)

<浪漫溢れる“映画・砂の器”のロケ地巡り>
“砂の器”は松本清張の長編小説。
映画やテレビドラマでも目にしたことがある方は多いはずだ。
松本清張ファンの父に連れられ私が小学4年生の頃、映画館で見たのがこの砂の器だった。

当時公開されていた、ETや南極物語、ドラえもんなどが大好きだった、どこにでもいる小学生だった私を父親は度々、天城越えやロッキー、そしてガンジーなど理解するのには難しい映画によく連れていったものだ。

中でも砂の器は、内容も暗く悲しいものだったが、家族に囲まれ元気で暮らしている自分とは比べ物にならない過酷な人生を辿った和賀英良(この映画の中での真犯人。幼い頃ハンセン病の父親と一緒に日本各地を放浪し、島根で巡査に助けられ、後に有名な音楽家になり大物政治家の娘と結婚することになるが、自分の過去を知られたくないが為に、恩人であるこの巡査を殺してしまう…)
に大いに感じ入るものがあった事を今でも覚えている。

ここで知らない方の為に、砂の器の物語を簡単に紹介しよう。

あらすじ―――。
ある夜、蒲田駅の線路で一人の男が殺された。被害者の身元は不明で、唯一の手がかりは東北訛りと「カメダ」という言葉だけ。
捜査は難航を極めたが、丹波哲郎演じる今西警部補と森田健作演じる吉村刑事は持ち前の粘り強さで、以下の事実を突き止めた。
(1) 東北弁で「カメダケ」と話すと「カメダ」と聞こえてしまうこと。
(2) 鳥取や島根の一部地域でも東北弁に似た方言を話す地域があること
(3) そしてその鳥取と島根の県境に亀嵩(かめだけ)という村があることを知る。

一方、そのころ「ヌーボー・グループ」とよばれる、若い世代で新しい芸術論を唱えるグループがいた。今西警部補はその中の一人、評論家関川重雄の愛人・恵美子に接触。
やがて本浦秀夫(加藤剛)という一人の男にたどり着く。
本浦秀夫は石川県の寒村に生まれ、父・千代吉(加藤嘉)がハンセン病に罹患したため母が去りやがて村を追われ、やむなく父と巡礼姿で放浪の旅を続けていた。
3年後に島根県の亀嵩(かめだけ)で駐在の三木謙一巡査(緒方拳)に保護された。
父はそのまま療養所に入れてもらい、本浦秀夫は子の無い三木夫妻に引き取られることになった。
しかし、秀夫はすぐに三木の元を逃げ出し姿を消した。
大阪まで逃れた秀夫は自転車屋の和賀夫婦のもとで店員として働きだしたが、その後、空襲で夫婦は亡くなり、同空襲で原本と副本がともに焼失した和賀夫婦の戸籍を詐称して和賀英良と名乗り、新進気鋭の天才作曲家として世間の注目を集めていた。
和賀は過去の出来事が発覚する事を恐れ、自分の元を尋ねてきた三木を蒲田駅で殺してしまう。

今西警部補は、三木殺害の真犯人として和賀を追い詰めていくなかで、和賀の過去とハンセン病に対する差別の現実を垣間見てゆく。

以上があらすじだが、この映画を改めて見ると、出演者の鬼気迫る演技と、人間の業のようなものを感じると共に、この映画の完成度の高さに脱帽したものだ。
しかし、今回トライアスロンがキッカケで、この映画の重要な場所である亀嵩に訪れる機会に恵まれたことに何か因縁のようなものを感じた。

<山陰の山奥にひっそり佇む亀嵩>
鳥取県の隣、島根県仁多郡出雲町に、この砂の器でも登場する『亀嵩(かめだけ)駅』がある。
皆生温泉から山陰本線で宍道へ、そこから木次線という超ローカル&日本有数の赤字路線で40分ほど行けばお目当ての亀嵩駅に到着する。
この木次線の各駅には愛称がついていて、この亀嵩駅の愛称は『少彦名命(すくなひこなのみこと)』である。
ところで、映画『砂の器』で撮影されたのは、同じ木次線であるが、ホームは出雲八雲駅で駅舎は八川駅であったそうである。
しかし、映画化された当時はこの亀嵩に注目が集まり、記念碑が作られ、裏側には小説の冒頭部分が刻まれている。

またこの亀嵩駅はローカル線ならではの特徴がある。
駅舎は扇屋という蕎麦屋さんになっており、名物の奥出雲そばを食べることができる。
しかも駅業務も同店の店主が行っているそうだ。

私が訪れたときは夕方で、駅の周りを囲む深い森からはヒグラシの鳴き声しか聞こえない。
村の集落は2kmほど離れていて、夜になると街灯もなく深い闇につつまれるそうだ。
帰りの電車をホームで待っていると、この地球上には私しかいないのではないか?と錯覚するほど、人気がない。 

もしかしたら、森の中から色々な生き物が、『おい、見てみろ!久しぶりに人間がいるぞ』と話をしている気がしてくる。
しかも出雲大社にも近いこの山奥にポツンと一人残されると、山の精霊か、もしくは守り主と出会いそうな気になってくる。

今、映画のロケ地巡りがにわかに流行っていて、もっと人がいて賑やかで華々しい場所をイメージするが、このロケ地は違う。
今、注目されている場所とは差別化された落ち着いた大人の愉しさがあるのだ。

次回も、皆生を中心とした、私のお気に入りの場所をお知らせしましょう。





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