浮かぶ20階建てマンション
2月下旬から3月下旬にかけて、横浜港大さん橋国際客船ターミナルには、3年振りとなる「QE2」をはじめ、内外のクルーズ客船が多数入港した。
2月25日に「ザ・トパーズ」と「プリンセス・ダナエ」が、3月5日に「アマデア」、6日(火)に「クイーンエリザベス2」、10日に「ぱしふぃっくびいなす」と「飛鳥2」が、20日には「オーロラ」が停泊した。この後は、3月31日から4月2日には、世界一周クルーズに出航する「飛鳥2」と「ぱしふぃっくびいなす」が同時停泊。国内外の客船は、格好の被写体になったようだ。
世界のメガシップが接岸すると、まさにデパート、いやマンションが桟橋に建造されたような景色となる。
カメラに収まりきれないほど大きい。知っての通り、現時点での世界最大級はロイヤル・カリビアン・ナショナルの「フリーダム・オブ・ザ・シー」や「リバティ・オブ・ザ・シー」、3船目の「インディペンデンス・オブ・ザ・シー」の16万トン。全長が新幹線13両分である。
これらが、ショートクルーズのカリブ海、地中海で火花を散らしている。船上のシンクロナイズド・スイミングショー やボクシング・リング、カラオケルーム、アイス・スケートリンク、1350座席もあるシアターやサーフィンパーク・フローライダー、ロック・クライミング・ウオールから商店街まである「洋上のリゾート都市」だと言われる所以だ。
それでいて、船客の平均年齢はなんと41歳。クルーズ大国アメリカでは53%が6〜8泊だそうだ。日本からマイアミ観光付きカリブ海クルーズで出かけても30万円弱の設定だ。
シンガポール発着のアジア最大客船「スーパースター・ヴァーゴ」は76,800トン。全長が約268m、横浜の「ランドマークタワー」を横にして海を走っているような巨船である。今のところ日本最大は、カリブ海の客船「クリスタル・ハーモニー」を改装した「飛鳥2」の50,142トンである。
10万トンクラスの乗船経験者に訊くと、意外な答えが返ってきた。船の中では迷子になるし、人に出会っても部屋番号を聞かないかぎり、航海中に二度と会うことができない、寄港地での乗船下船にかなり待たされる、ゆったりしたいのに行列させられるのはまっぴらだ、と。
僕がここで書いている「にっぽん丸」は、約2万2千トン。1973年に日本船として初めて世界一周クルーズした客船で、今は三代目。美食が評判だが、腎不全を抱える僕にも、塩分制限だが美味い食を出してくれる。しかも米国公衆衛生局の船舶衛生検査で日本船最高得点を記録し続けているというのが嬉しかった。思ったほどに「豪華」客船という取り繕った感覚はなかった。船友の言葉を借りれば「高級老人倶楽部なのだ」という。たしかに、平均年齢70歳が集まっている。が、団塊の世代が乗るようになれば平均年齢も若くなるに違いない。体力がある若い時は、フライ&クルーズ。その後に日本船クルーズをと考える人も多い。但し、私の妻は、9・11以降、絶対に空路の旅はしないと言って憚らない。狭い座席で長時間同じ姿勢から、エコノミー症候群になるという心配もない。飛行機での1時間を、通常、船は1日かけて航走する。
船室はコンパクトに工夫されている。新婚時代に帰ったと思えば、さして狭さは感じない。勿論ホテル同様、ランクはある。スイートの40平方メートルから、デラックス19平方メートル、そして1階2階4階が同じステートルームで14平方メートル。この14平方メートルだって設備は充分だ。三人分のクローゼットに、TV・DVD・CDプレーヤーあり、ソファーとテーブルに2ベッド、作り付けチェストの抽出は3段、ミニ冷蔵庫、ドレッサーにシャワー、洗面台である。しかも、船内のトイレは全室ウオシュレットである。ラウンジやホールその他の場所に殆ど一日中出かけているので、部屋は眠りに帰るだけと言っていい。外国船では、船が修理でドック入りをしない限り、船室で暮らす老人がいるそうだ。豪華客船ヴィクトリア号で育てられた、あの映画「海の上のピアニスト」のような方だ。
ドクターもナースもいるし、話しかけてくれるバーテンダーも理髪師もいる。笑わせてくれるマジシャンも、楽しませてくれるカジノの美人ディーラもいるからだ。
僕にとって退職後「無所属で生きる」ということは、言うまでもなく自宅がベースキャンプになる。が、そこは既に妻のライフスタイルが完成している城だということに気付かされる。二人の部屋を海の上にシフトした結果は、互いに非日常の世界で過ごすことになった。帰国してからは、平和裏に城での共同生活を始めることができたのだ。クルーズがリセットの役目をしたというわけである。
最近、驚くようなメガシップのニュースを知ることになった。ひとつは、アメリカで開発中の旅客飛行船だ。日テレの番組「未来予報書201X」で、“空飛ぶ豪華客船”という「エアロスクラフト」が近々に就航すると紹介した。ヘリウムガスとジェットで航行する飛行船と飛行機のハイブリッド旅客機で、高さ49m、幅73m。長さ194mはジャンボ機の3倍弱。巡航速度はゆったりと280kmの遊覧飛行となる。
ふたつ目は、空前絶後、世界最大のスケール。37万トンという巨船が日本で計画されている。全長500m、幅55m、20階建ての巨船が、22ノットのスピードで航行する。約6000平方メートルの多目的ホールは、通常のホテル宴会場の約10倍の広さがあり、室内スポーツ競技の開催が可能だ。さらに驚かされるのは、ショッピングモールの長さが300m、幅15m、高さ18.4mの吹き抜けのアトリウム形式で、面積は、銀座三越の全フロアー面積とほぼ同じ。船内には、1200室を持つ独立したホテルがなんと3カ所。しかも、
客室を分譲マンションとして販売することを検討中だという。分譲型客船は既に「ザ・ワールド」(43,188トン)が航行しているが、ついに日本にも誕生するというのだ。
まさに「浮かぶリゾートマンション」である。ホテル西洋から銀座4丁目三越までが船の長さだと言ったら、妻は「想像できないわよ」と目を丸くした。
船の名前は、…我が国最初の物語…「かぐや姫」。恋する貴族は5人ではなく、6000余人となる。
カメラに収まりきれないほど大きい。知っての通り、現時点での世界最大級はロイヤル・カリビアン・ナショナルの「フリーダム・オブ・ザ・シー」や「リバティ・オブ・ザ・シー」、3船目の「インディペンデンス・オブ・ザ・シー」の16万トン。全長が新幹線13両分である。これらが、ショートクルーズのカリブ海、地中海で火花を散らしている。船上のシンクロナイズド・スイミングショー やボクシング・リング、カラオケルーム、アイス・スケートリンク、1350座席もあるシアターやサーフィンパーク・フローライダー、ロック・クライミング・ウオールから商店街まである「洋上のリゾート都市」だと言われる所以だ。
それでいて、船客の平均年齢はなんと41歳。クルーズ大国アメリカでは53%が6〜8泊だそうだ。日本からマイアミ観光付きカリブ海クルーズで出かけても30万円弱の設定だ。
シンガポール発着のアジア最大客船「スーパースター・ヴァーゴ」は76,800トン。全長が約268m、横浜の「ランドマークタワー」を横にして海を走っているような巨船である。今のところ日本最大は、カリブ海の客船「クリスタル・ハーモニー」を改装した「飛鳥2」の50,142トンである。 10万トンクラスの乗船経験者に訊くと、意外な答えが返ってきた。船の中では迷子になるし、人に出会っても部屋番号を聞かないかぎり、航海中に二度と会うことができない、寄港地での乗船下船にかなり待たされる、ゆったりしたいのに行列させられるのはまっぴらだ、と。
僕がここで書いている「にっぽん丸」は、約2万2千トン。1973年に日本船として初めて世界一周クルーズした客船で、今は三代目。美食が評判だが、腎不全を抱える僕にも、塩分制限だが美味い食を出してくれる。しかも米国公衆衛生局の船舶衛生検査で日本船最高得点を記録し続けているというのが嬉しかった。思ったほどに「豪華」客船という取り繕った感覚はなかった。船友の言葉を借りれば「高級老人倶楽部なのだ」という。たしかに、平均年齢70歳が集まっている。が、団塊の世代が乗るようになれば平均年齢も若くなるに違いない。体力がある若い時は、フライ&クルーズ。その後に日本船クルーズをと考える人も多い。但し、私の妻は、9・11以降、絶対に空路の旅はしないと言って憚らない。狭い座席で長時間同じ姿勢から、エコノミー症候群になるという心配もない。飛行機での1時間を、通常、船は1日かけて航走する。
船室はコンパクトに工夫されている。新婚時代に帰ったと思えば、さして狭さは感じない。勿論ホテル同様、ランクはある。スイートの40平方メートルから、デラックス19平方メートル、そして1階2階4階が同じステートルームで14平方メートル。この14平方メートルだって設備は充分だ。三人分のクローゼットに、TV・DVD・CDプレーヤーあり、ソファーとテーブルに2ベッド、作り付けチェストの抽出は3段、ミニ冷蔵庫、ドレッサーにシャワー、洗面台である。しかも、船内のトイレは全室ウオシュレットである。ラウンジやホールその他の場所に殆ど一日中出かけているので、部屋は眠りに帰るだけと言っていい。外国船では、船が修理でドック入りをしない限り、船室で暮らす老人がいるそうだ。豪華客船ヴィクトリア号で育てられた、あの映画「海の上のピアニスト」のような方だ。
ドクターもナースもいるし、話しかけてくれるバーテンダーも理髪師もいる。笑わせてくれるマジシャンも、楽しませてくれるカジノの美人ディーラもいるからだ。 僕にとって退職後「無所属で生きる」ということは、言うまでもなく自宅がベースキャンプになる。が、そこは既に妻のライフスタイルが完成している城だということに気付かされる。二人の部屋を海の上にシフトした結果は、互いに非日常の世界で過ごすことになった。帰国してからは、平和裏に城での共同生活を始めることができたのだ。クルーズがリセットの役目をしたというわけである。
最近、驚くようなメガシップのニュースを知ることになった。ひとつは、アメリカで開発中の旅客飛行船だ。日テレの番組「未来予報書201X」で、“空飛ぶ豪華客船”という「エアロスクラフト」が近々に就航すると紹介した。ヘリウムガスとジェットで航行する飛行船と飛行機のハイブリッド旅客機で、高さ49m、幅73m。長さ194mはジャンボ機の3倍弱。巡航速度はゆったりと280kmの遊覧飛行となる。
ふたつ目は、空前絶後、世界最大のスケール。37万トンという巨船が日本で計画されている。全長500m、幅55m、20階建ての巨船が、22ノットのスピードで航行する。約6000平方メートルの多目的ホールは、通常のホテル宴会場の約10倍の広さがあり、室内スポーツ競技の開催が可能だ。さらに驚かされるのは、ショッピングモールの長さが300m、幅15m、高さ18.4mの吹き抜けのアトリウム形式で、面積は、銀座三越の全フロアー面積とほぼ同じ。船内には、1200室を持つ独立したホテルがなんと3カ所。しかも、
客室を分譲マンションとして販売することを検討中だという。分譲型客船は既に「ザ・ワールド」(43,188トン)が航行しているが、ついに日本にも誕生するというのだ。まさに「浮かぶリゾートマンション」である。ホテル西洋から銀座4丁目三越までが船の長さだと言ったら、妻は「想像できないわよ」と目を丸くした。
船の名前は、…我が国最初の物語…「かぐや姫」。恋する貴族は5人ではなく、6000余人となる。





