非日常の1日とは……
クルーズと言うと、友人の多くは「海の上の船だろ、歩き回っても三日で飽きるな、オレは」と手を振って苦笑する。アラスカのジュノーを出港すると、かなり長い航海日になる。アリューシャン列島沖に添ってベーリング海から南下すれば、あと1週間余りで帰国という頃だ。ある日の非日常を書いてみよう。
未明。
8階のサンデッキに、日の出を撮ろうと毎朝ビデオやカメラを持った人が現れる。早い人は、4階のプロムナード・デッキをウオーキングし始める。最初は僕も、心新たにと歩き始めたが、段々寝坊になり、体を動かすのはデッキゴルフに変わってしまった。 06:30〜07:30 6階のラウンジ「海」では、モーニングコーヒーを口にする船客が集まる。ここで、しばし、昨夜のカジノ話に花が咲く。現場の目撃者になれなかった僕は、ただただ聞き役に回るだけだ。こうした中、急ぎ足で立ち去る人たちがいる。
07:00〜07:30
同じ階のスポーツデッキで、「お早う体操」が始まるからだ。そういえば、トレーニングウエアの胸には、スタンプが押される出席表のカードが揺れていた。目覚めの体に優しい、ストレッチが行われる。
これは、パナマ運河通航の際、運河関係者が思わず見とれていた。平均年齢70歳の船客だから、ラジオ体操そのものが身体が馴染んでいる。当然のように体を動かしている。雨天でない限りは、この広いウッドデッキ一杯に拡がって手を挙げている。ここは、時に運動会のグランドになったり、一昨日のように、餅つきの会場になったり、櫓を組んで盆踊りの広場に変わる。バスケットコートにもなるが、遊んでいる人は一度もみないままだ。
07:30〜09:00
朝食の時間だ。人によっては、もう展望風呂でひと浴びしてきた人もいる。和食好みの人は、お盆にセットされて運ばれてくる。洋食の人は、ヨーグルトも野菜も果物も、毎朝焼かれたパンも、迷うほどに種類がある。他に、暖かい料理も取り分けられる。ここで、初めての方と同じテーブルになれば、気さくに挨拶を交わす。街の中心地まで乗り合わすシャトルバスで一緒だったりしたことから親しくなることが多い。
09:00〜10:00
4階のドルフィンホールで、「ソシアルダンス教室」、初級のタンゴが始まる。同じ時間に、同じ階のプロムナード後方デッキで、始まるデッキゴルフに参加する。海洋動物が現れるかもとデジカメは忘れない。同じ時間、朝食を外した人は、6階のラウンジ「海」のスープ&ブレッドコーナーを利用する。ダベリングの時間とする人も多い。6階のカジノコーナーでは、「コントラクト・ブリッジ教室」が、7階のリドデッキでは、フィットネス「チェア・エクササイズ」が、スカイベランダでは「アートクラフト教室」が開かれ、妻が座っている。1階のシアターでは航路にマッチする映画を映されており、本日は東映映画「二百三高地」だ。
12:00〜13:30
昼食となる。和食でも洋食でもフルコースだ。100日間、一度も同じメニューは出さないというのが、MOPASの自慢だ。日本から途方もなく離れた洋上で「ハモ」を食べたり、夕食は焼酎祭りがあったりする。
13:30〜14:30
入国・帰国説明会が4階のドルフィンホールで行われる。明後日、ロシアのペトロパブロフスク・カムチャツキーに初寄港するからだ。 何もなければ、麻雀や囲碁将棋をする人もこの時間に多い。マニキュアをしたり、アロマテラピールームやマッサージルームで横になったりする人もいる。
14:45〜17:30
7階のリドデッキで、「フリーマーケット」が開かれる。ロングクルーズ恒例のイベントだ。各地で買った土産物や各自のアクセサリー、衣類等々船客ショップや、エンタティナーからの即売会を含めた「蚤の市」である。我先にと殺到する。
15:00〜16:00 急いでいるのには、わけがある。6階のラウンジ「海」では、先日メインショーで大好評だった、
チェロ奏者、吉川よしひろさんのミニコンサートが聴きたいからだ。やはり、満席となった。ニューヨーク在住の彼は、カナダのビクトリア港から乗船したアーティストだ。弓で弾く、掌で叩く、フィンガーピッキングをする。ジャズチェロリストでありながら、クラシックもラテン、スパニッシュの音も聴かせる。アメリカチェロユニオンでは日本人初のチェリスト会員で、「サムライ・チェリスト」と称されている。彼が独特なのは、スタンディング奏法で、しかも彼の考案したエフェクター機能を足で操作しながらリアルタイムで録音再生したベース和音を二重に聴かせる。「Memory of Goshen」というオリジナル曲は、アメリカの片田舎で出逢った92歳の日本人をモチーフにしており、胸を揺すられる。
16:00〜17:00
休む間もなく、4階のドルフィンホールでは、「ダンス教室」受講生がドレスアップして踊る「撮影会」が行われた。同じ時間に1階シアターでは、上野樹里らの女子高生ジャズバンド映画「スイングガール」が上映されていた。
18:30〜夕食。
ドレスコードが「フォーマル」の日は、この時間から公の場ではフォーマルウエアとなる。レストラン・マネージャーに案内されて席に着く。そこで、また新しい方々との出会いが始まる。全国から集まっているのに、どこかに不思議な繋がりがあったりして驚かされる。時には、オフィサーやエンタティナーと同じテーブルで食事をする。
20:15〜21:15
4階のドルフィンホールで、「チャリティ・オークション&ビンゴゲーム」が行われる。船に関係する品物を競り落とした売上をユニセフに寄付するという趣旨。後半のビンゴは、落胆の溜息が会場に響くほど、船客全員が集まると言っても過言ではない、大好評である。だが、なぜいつもあの人がビンゴになるのかが解せない。
21:15〜22:45
15分待って「ダンスタイム」として楽しむか、6階のカジノコーナーへ流れる人と、ラウンジ「海」での落語を聴く人、または1階でナイトシアター「無敵艦隊」の洋画に、または「ネプチューン・バー」に繰り出す人とそれぞれが分かれる。僕はと言えば、古今亭菊之丞の噺を聞いた後に、バーに寄るつもりだ。バーは、免税だから気楽、酔って千鳥足でも徒歩で帰れるから安心。時には、「カラオケタイム」というのが、プールサイドで始まることがある。飲んでないときは、船尾にある展望風呂で、サウナに入って湯舟に浸かって、疲れをほぐし、1日たっぷり費やして休むことになる。
どうだろう?ほんの一例だが、と友人に話してみると、身を乗り出していた。そうそう、夜食もあるから、口にするチャンスも1日7食ある。もし、すべてを無視して自室のNHKTVを見ていても、24時間開いているライブラリーで自分の時間を過ごしても、船は目的地に進んでいくのだが。
8階のサンデッキに、日の出を撮ろうと毎朝ビデオやカメラを持った人が現れる。早い人は、4階のプロムナード・デッキをウオーキングし始める。最初は僕も、心新たにと歩き始めたが、段々寝坊になり、体を動かすのはデッキゴルフに変わってしまった。 06:30〜07:30 6階のラウンジ「海」では、モーニングコーヒーを口にする船客が集まる。ここで、しばし、昨夜のカジノ話に花が咲く。現場の目撃者になれなかった僕は、ただただ聞き役に回るだけだ。こうした中、急ぎ足で立ち去る人たちがいる。
07:00〜07:30
同じ階のスポーツデッキで、「お早う体操」が始まるからだ。そういえば、トレーニングウエアの胸には、スタンプが押される出席表のカードが揺れていた。目覚めの体に優しい、ストレッチが行われる。
これは、パナマ運河通航の際、運河関係者が思わず見とれていた。平均年齢70歳の船客だから、ラジオ体操そのものが身体が馴染んでいる。当然のように体を動かしている。雨天でない限りは、この広いウッドデッキ一杯に拡がって手を挙げている。ここは、時に運動会のグランドになったり、一昨日のように、餅つきの会場になったり、櫓を組んで盆踊りの広場に変わる。バスケットコートにもなるが、遊んでいる人は一度もみないままだ。07:30〜09:00
朝食の時間だ。人によっては、もう展望風呂でひと浴びしてきた人もいる。和食好みの人は、お盆にセットされて運ばれてくる。洋食の人は、ヨーグルトも野菜も果物も、毎朝焼かれたパンも、迷うほどに種類がある。他に、暖かい料理も取り分けられる。ここで、初めての方と同じテーブルになれば、気さくに挨拶を交わす。街の中心地まで乗り合わすシャトルバスで一緒だったりしたことから親しくなることが多い。
09:00〜10:00
4階のドルフィンホールで、「ソシアルダンス教室」、初級のタンゴが始まる。同じ時間に、同じ階のプロムナード後方デッキで、始まるデッキゴルフに参加する。海洋動物が現れるかもとデジカメは忘れない。同じ時間、朝食を外した人は、6階のラウンジ「海」のスープ&ブレッドコーナーを利用する。ダベリングの時間とする人も多い。6階のカジノコーナーでは、「コントラクト・ブリッジ教室」が、7階のリドデッキでは、フィットネス「チェア・エクササイズ」が、スカイベランダでは「アートクラフト教室」が開かれ、妻が座っている。1階のシアターでは航路にマッチする映画を映されており、本日は東映映画「二百三高地」だ。
12:00〜13:30
昼食となる。和食でも洋食でもフルコースだ。100日間、一度も同じメニューは出さないというのが、MOPASの自慢だ。日本から途方もなく離れた洋上で「ハモ」を食べたり、夕食は焼酎祭りがあったりする。
13:30〜14:30
入国・帰国説明会が4階のドルフィンホールで行われる。明後日、ロシアのペトロパブロフスク・カムチャツキーに初寄港するからだ。 何もなければ、麻雀や囲碁将棋をする人もこの時間に多い。マニキュアをしたり、アロマテラピールームやマッサージルームで横になったりする人もいる。
14:45〜17:30
7階のリドデッキで、「フリーマーケット」が開かれる。ロングクルーズ恒例のイベントだ。各地で買った土産物や各自のアクセサリー、衣類等々船客ショップや、エンタティナーからの即売会を含めた「蚤の市」である。我先にと殺到する。
15:00〜16:00 急いでいるのには、わけがある。6階のラウンジ「海」では、先日メインショーで大好評だった、
チェロ奏者、吉川よしひろさんのミニコンサートが聴きたいからだ。やはり、満席となった。ニューヨーク在住の彼は、カナダのビクトリア港から乗船したアーティストだ。弓で弾く、掌で叩く、フィンガーピッキングをする。ジャズチェロリストでありながら、クラシックもラテン、スパニッシュの音も聴かせる。アメリカチェロユニオンでは日本人初のチェリスト会員で、「サムライ・チェリスト」と称されている。彼が独特なのは、スタンディング奏法で、しかも彼の考案したエフェクター機能を足で操作しながらリアルタイムで録音再生したベース和音を二重に聴かせる。「Memory of Goshen」というオリジナル曲は、アメリカの片田舎で出逢った92歳の日本人をモチーフにしており、胸を揺すられる。
16:00〜17:00
休む間もなく、4階のドルフィンホールでは、「ダンス教室」受講生がドレスアップして踊る「撮影会」が行われた。同じ時間に1階シアターでは、上野樹里らの女子高生ジャズバンド映画「スイングガール」が上映されていた。
18:30〜夕食。
ドレスコードが「フォーマル」の日は、この時間から公の場ではフォーマルウエアとなる。レストラン・マネージャーに案内されて席に着く。そこで、また新しい方々との出会いが始まる。全国から集まっているのに、どこかに不思議な繋がりがあったりして驚かされる。時には、オフィサーやエンタティナーと同じテーブルで食事をする。

20:15〜21:15
4階のドルフィンホールで、「チャリティ・オークション&ビンゴゲーム」が行われる。船に関係する品物を競り落とした売上をユニセフに寄付するという趣旨。後半のビンゴは、落胆の溜息が会場に響くほど、船客全員が集まると言っても過言ではない、大好評である。だが、なぜいつもあの人がビンゴになるのかが解せない。
21:15〜22:45
15分待って「ダンスタイム」として楽しむか、6階のカジノコーナーへ流れる人と、ラウンジ「海」での落語を聴く人、または1階でナイトシアター「無敵艦隊」の洋画に、または「ネプチューン・バー」に繰り出す人とそれぞれが分かれる。僕はと言えば、古今亭菊之丞の噺を聞いた後に、バーに寄るつもりだ。バーは、免税だから気楽、酔って千鳥足でも徒歩で帰れるから安心。時には、「カラオケタイム」というのが、プールサイドで始まることがある。飲んでないときは、船尾にある展望風呂で、サウナに入って湯舟に浸かって、疲れをほぐし、1日たっぷり費やして休むことになる。

どうだろう?ほんの一例だが、と友人に話してみると、身を乗り出していた。そうそう、夜食もあるから、口にするチャンスも1日7食ある。もし、すべてを無視して自室のNHKTVを見ていても、24時間開いているライブラリーで自分の時間を過ごしても、船は目的地に進んでいくのだが。





