旅・宿・移住

2008/04/01

忘れられないビール酒場 その1

黄金色にかがやくそのビールはかすかにフルーツの香りがする。おさえめなガス。微かな甘み。しかしホップは効いている。これは美酒だ。噂に違わない逸品だ。
毎晩でも、通い詰めたいビール酒場が、世界にはいくらでもあるんだ。

ウィーン

最初ウィーンへ行った時は、あちこちでいろいろと飲んだけれど土地柄としてワインが主流で、ビールは傍流なのだろうと思っていた。
ワインはいくらでもあるけど、個性あるローカルなビールは見つからなかったのだ。
ところが、今回の旅立ち前に下調べをしてみたら、オーストリアは全国レベルでにみるとワインではなく、ビール文化圏に属するのだと分かってきた。もちろん歴史的にウィーンはオーストリア帝国ハプスブルグ家のお膝下である。この国は古くはワイン文化圏に属するけれど、そもそも水よしホップよし麦よしの土地柄である、特にザルツブルグ地方にはヨーロッパでも最良のビールがあると聞いた。またウィーンにはヴィエンナ・スタイルのビールがあるのもご承知の通り。
ここでも旨いビールを求める我が原則 は生きる。
“旨いビールが飲みたければ、足と時間と金を使え"である。

さてこの度の目的はビールだ。ONLY BEER, NOTHING BUT BEERである。
シュテファン寺院すぐそばのホテルKONIG VON UNGARNにトランクを入れて、居酒屋が群雄割拠するバミューダ・トライアングル地区に走る。週末である。すでに先乗りした友人Dが席を確保して待っているのだ。

件のビール酒場の名はクラクラKRAH,KRAHである。土曜日の夜である。表まで客が溢れる盛況である。人並をかき分け、友人が待つ席にたどり着くと、目の前もクラクラだ。すでに何組もが大いに酩酊し、ビールジョッキを手に、立ち上がって歌っている。
あらためて見渡すと店内にはドイツ風な重厚さは無い。以前からある古い店にもかかわらず、世界中の学生街によくあるように、テーブルや椅子も自然なニス塗りである。壁一面にウィーンで公演が行われた様々なアーティストのコンサートポスターが幾重にも貼ってある。ジョー・コッカーもいる。フィル・コリンズもリシャール・ガリアーノもいた。あえて気取りのない、無頓着を装った風情だ。
この夜は時差ボケプラス、睡眠不足にも拘わらず随分飲んだ。
JORGER WEISSE、TAXIS ROGGEN、BUDWEISER BUDVAR、ERDINGER、HAINFELDER
GOLD FASSEL PILS(OTTAKLINGER)、GRIEKIRCHNER DUNKEL、TRUMER PILS、MAISEL WEISSE、SCHNEIDER WEISSE、PIEBELS ALT、HANNEN ALT、KONIG LUDWIG
、クラクラオリジナル、以上14種。
すべて生である。2時までかかって、クラクラのメニューにある生ビールは全て征服した。価格は日本と比べて3~4割安の感覚だ。数年前にはこれほど多くのビールブランドが揃っていなかった、とウィーン通の友人Dも驚いていた。客層が比較的若いせいだろう。ワインを飲む人は殆ど見られず、オーストリアでもワインからビールへ移行する世界的趨勢の一端をみる思いだった。

で翌日朝にはウィーン通にはことのほかビール/食事共に名高いシュタッドバイセルSTADBEISLへ行く。ここで飲めるHUBERTUSの評価が内外でめっぽう高く、ウィーンへいったらここだよ、という声が日本まで聞こえてくるのだ。
朝11時。夜の来店のために場所を確かめようとアムホーフからナグラー小路に行ってみたらもう店は空いている。歩道のテラスで朝食をとっている人がいる。私はテーブルにつくなり、ウベルタスのジョッキを頼んだ。黄金色にかがやくそのビールはかすかにフルーツの香りがする。おさえめなガス。微かな甘み。しかしホップは効いている。これは美酒だ。噂に違わない逸品だ。
夜再訪するのが待ち遠しくなる1杯になった。





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