アメリカ編 その2
ねえ、君。今すぐ行ってみたくないか。星空へも届きそうなケーブルカーが駆けて昇るあの坂の街、あの黄金色に光り輝くビール酒場へ。
サンフランシスコへは、アンカー・スティームANCHOR STEAMが飲みたくて行った。日本で時々瓶のアンカーを買って、その独特のフルーテイな味わいに魅せられていたからだ。アンカーはスティームというだけあって独自な製法をとっている。すなわちラガーの製法でエールを作っていると言ったら分かりやすいだろうか。したがってビールの苦みが苦手な人でも充分に楽しめるビールになっている。アンカーではこのほかにアンバー系のリバテイエールLIBERTY ALE、スタウト系のポーターPORTER、さらに深い味わいのオールドフォグフォーンバーリーワインOLD FOGHORN BARLEY WINEも作っている。基本的にサンフランシスコを中心にする地ビールであるが、アメリカ国内はもとより世界各地に販売網を広げているようだ。
しかし私が飲みたいのはドラフトである。
ただただアンカーの生が飲みたかったのである。現地で、蔵出し間もない、新鮮な1杯のジョッキを傾けたかったのである。そのための、はるばると世界旅なのだ。
そんな気負った気持ちでサンフランシスコの街へ着いてからは、あちこちのバーやレストランでアンカーを浴びるように飲んだ。
しばらくして落ち着いて見渡すと、アンカーはあるていどの店には必ず常備しているようにも見受けられた、とくにここでなければならないといいた店も見あたらないようだ。
なんと4ドルの定食の中華屋にもあった。これでわたしもやっと落ち着きを取り戻し、サンフランシスコを散策する余裕ができたものであった。
サンフランシスコ周辺には行くべきビール酒場は実に多い。このベイエリア地域には地ビールが群集しているからだ。
その代表はやはりノースビーチのサンフランシスコ・ブリュワリーだろう。
街で一番古いブルーパブといわれるだけあって開設は1896年である。私が訪れたときはアルバトロスというラガーとレッド系のエンペラーノートン。ポーターのグリプマンがあった。南京豆の殻を大きくしたような形の扇風機が頭の上でゆったりとクルクル回っている。食事もできるが誰も食べている人はいなかった。ワイワイガヤガヤひたすら飲むのがこの店では通例のようだ。郷にいれば郷に従えである。ままよとグラスを重ねたらホテルにもどるノブヒルの坂道が昇れなくなってしまった。
お店はシテイライト書店のすぐそばである。ケルアックもここのビールを飲んだかもしれないと考えるとさらに旅の感傷が深まる。我もまた、終わりなきオンザロードである。見果てぬ果てしなき路上の旅人である。すこしだけわたしも若返る。
日曜から木曜の4時から6時まではハーフパイントのビールがわずか1ドルで飲める。
ねえ、今すぐ行ってみたくないか。星空へも届きそうなケーブルカーが駆けて昇るあの坂の街、あの黄金色に光り輝くビール酒場へ。
ことビールに関しては、オレゴン州ポートランドの右に出る都市はないといいきったのが我が師マイケル・ジャクソンだ。都市部においては最低12.州全体では軽くその2倍以上のブルワリーがあると著書「世界ビール大全」にいうのだ。ちなみに隣のワシントン州にはやはり20以上。メッカ、シアトルには10以上のビール酒場があると読んだ。
真面目なビール愛好家として、オレゴンに行かずに済むものだろうか。世界のビール酒場探訪者を自称するものとしてシアトルで飲まずに済ませられるものだろうか。
持論の「ビールは喉の乾きをいやすだけのものではない」という思いが内から湧き上がる。
私はシリアスなビアラヴァーである。
額に汗する勤労者が今日という日に感謝し、明日への希望をつなぐための不可欠の飲み物。恋人や友人と、しみじみと和み、喜びと共に味わえる生活飲料。風土と気候と人々の知恵がはぐくみそだてたもの。数千年の古来から営々と連なる欠くべからざる文化だ。
ビール酒場は人々が日々集い共感する一大ページェントなのだ。
緯度的・風土的・気候的にもあのあたりでは旨いビールができるにきまっている。不味いビールなどできるはずない。
それにしても40社以上のビールか(スゲー)。1社に最低四種として160種類(ウシャー)。一週間ではたりない(体に悪いゾ)。一ヶ月でも不十分かもしれない(でも俺ならヤレル)。またしても私は移住をまじめに考えてしまった。
さて、今回のビール酒場巡りはサンフランシスコに降りて、カルフォルニア州を南から北へ縦断し、オレゴンを走り抜け、ワシントン州シアトルに至る全行程1500キロ、10日間の正にシリアスなビアラヴァーの旅である。
まず、オークランドへ向かった。地下鉄の駅から街の中央で表に出ると近代的な町並みが広がっていた。五分ほど歩いたワシントン906番地にあるのが、パシフィック・コーストPACIFIC COAST。すぐわきに小さな市場があり、町並みを見渡すと、あたりは古くからの地区だとわかる。店は入って右がバーカウンター。左にテーブル席が10ほど。その奥にはテラスがあった。
ビールはCODE BLUE BARLEY WINE、GRAY WHALE ALE
BLUE WHALE ALE、IMPERIAL STOUT、CASK BLUE
EMERALD ALE、IRISH STOUT の7種。
24時間まるで寝てないし、おまけに午前中ゆえ、全7種のテイストをお願いした。
やや大きめのショットグラスを目の前に並べて色の薄い順に空けてみたら、バーリーワインとスタウトが出色の出来映えだった。
ブリュワリーは教室程度のものが地下にあり、7種ほどの樽で交互に醸造していた。
週末の金曜日のせいか、カウンターの中のバーマンの老中年二人もウエイトレスの中年二人もニコニコ笑顔が絶えない。全体にのんびりした雰囲気のなかでみなさんな楽しそうにビールの飲み、ブランチを楽しんでいた。
さて、夜は本店がパロアルトにあり、その筋では本格的なドイツ風なビールとして高名な
GORDON BIERSCHへ行く。
BARTをエンバーカデロで下車し、ベイブリッジの方向へ歩く。しかし人通りはほとんどなく、町並みもだんだん寂しくなっていく。こんなとこにビール酒場があるのかなーと不安になった頃、ヒルズ・ブラザーズ・プラザの一角にそれがあった。オソルオソル入ってみて本当にビックリ。そとでは人っ子一人歩いていないように見えたのに店内には2,300人のビール好きが溢れかえっていたのだ。
小学校の体育館ほどのスペースの真ん中を横断するどでかいカウンター、窓側には若干のテーブルはあるがほとんどの人がスタンデイングで飲んでいる。ベイブリッジ側にはテラスもあり、そこも満席である。私たちはやむを得ず二階のレストランで飲む事にした。
ゴードンが誇るビールは三種類。PILSNER、DUNKEL、MARZENである。
小麦ビールのメルツェンの味付けにいささかの不満が残ったが、ほか2種は充分満足した。「良いビール酒場には、何十種ものビールは不要だ、旨いビールがありさえすれば、種類は1つでも2つでもよいのだ」という原則の見本のような店だった。料理も自前のビールを使ったものが多く、ここの地ビールに良くあっていた。
トイレにいく途中で覗いたブリュワリーは半地下にあり、これも立派な大教室クラスであった。醸造者のダン・ゴードンはドイツ、世界最古のビール醸造所ヴァイヘンシュテファンで学んだ職人と聞く。ロケーションはやや不便だがビールの味、料理のグレードを評価し、SF一のビール酒場と断定したい。
翌日、バスを11丁目で降り、バークリーにある、トリプルロックTRIPLE ROCKの姉妹店、TWENTY TANKへ向かう。
ハリソン通りに近い、11丁目の316番地。ここもやはりなんでこんなところに、という見本のような店である。夜ならタクシーでしか来れないようなヤバイ、ブロックにココもあった。
ここのバーのエヴァがとても快活でキビキビと働きかつ可愛く、ついついグラスを重ねたのがRED TOP ALE、BOWSERS BROWN ALE、FRAU COW(WHEAT)、KINNIKINICK STANDARD ALE、IPA、SCHUITZIES PILS、NYZACK BARLEY WINE、以上七種。
私はPILSと小麦ビールのFRAU COWが特に気にいった。IPAは実に香りが豊かでフィニッシュのきれが良く、後日再来店してたっぷりとのみたいもんだと思わせる1品だった。
入って右にバーカウンター。その奥に調理場。左側全部がテーブル席。ブリュワリーはタンクが1階と2階にある、変則型で、規模は工場酒場共に大教室程度の店だった。何度ももカウンターまで往復し、グラスの受け渡し度にエヴァから仕入れた情報によると、バークリーにある店と経営者は同じだがビールの味は随分違うらしい。
わたしははこっちのほうが好きよ、とニッコリ断言。わたしもコッチがいいです。
カルフォルニア北部のメンドシノ地方は知る人ぞ知るビールの産地である。良質の麦が収穫されホップも自前だ。なんだか出来過ぎの気がするがホップランドHOPLANDという町があるくらいだ。
そうしたこの地方を代表するビール酒場の一つが、州道128号線に面したBOONVILLEという文字通り田舎町の街道沿いにある、BUCKHORNである。住所に14081番地、HIGHWAY128であるから州道沿いにあることは分かっていた。たまたまガスが切れかかっていたので、通りの町外れにある、ガソリンスタンドに車を入れて、給油しながら従業員に聞いてみることにした。
「レギュラー、満タン。ところで、バックホーンというビール酒場知ってる」
と聞いたら、全員が同じ方向を指さして、アッチ。みると木造の古ぼけた切り妻屋根の2階建てが見える。通りに面して、ペンキの剥げかかった醸造用のタンクがおいてあるので、酒場とわかるがうっかりすると通り過ぎてしまいそうな店構えだ。
店は高床式になっていて、2階の店内は教室が2つ程度。小さな事務所とTシャツとかの売店があり、バーカウンターは右。テーブル席は左奥にひろがっていて、カウンターの外の裏側にテラスが用意されていた。先を急ぐ旅なので6種のサンプラーを頼む。
POLEEKO GOLD ALE、BOONT AMBER ALE、BARNEY FLATS OATMEAL STOUT、DEEPENDERS DARK PORTER、BELKS EXTRA SPECIAL BITTER、HOPOTTIN INDIA PALE ALE、の6種のセットで6.25ドルである。
おしなべて豊穣、滋味溢れるビールだ。麦とホップを豊富に使用した直球勝負の男らしいビールだった。
窓際にはハチドリがやってきて、店が用意した甘い汁を餌場からすっているのがよく見える。もし、こんなに旨いビールが無ければ、地元民が日がなたむろする、ただのローカルな酒場である。ここの人々は幸せだ。自分たちが丹精込めて作った麦とホップとコーストレーンジズ山脈の湧水とでできたビールを町の居酒屋で存分に飲めるのだから。
酒場は教室程度だったが、醸造所は町外れにあり、立派な体育館クラスが林に囲まれているのがハンドル越しに見えた。
このビールをつくっている醸造所の名はANDERSON VALLEY。
地元の方々も大勢働いているのだろう。ますます立派だ。後髪が引かれる思いで、滅多にしないのだが、おみやげにアンバーエールの大瓶を1本買った。
しかし私が飲みたいのはドラフトである。
ただただアンカーの生が飲みたかったのである。現地で、蔵出し間もない、新鮮な1杯のジョッキを傾けたかったのである。そのための、はるばると世界旅なのだ。
そんな気負った気持ちでサンフランシスコの街へ着いてからは、あちこちのバーやレストランでアンカーを浴びるように飲んだ。
しばらくして落ち着いて見渡すと、アンカーはあるていどの店には必ず常備しているようにも見受けられた、とくにここでなければならないといいた店も見あたらないようだ。 なんと4ドルの定食の中華屋にもあった。これでわたしもやっと落ち着きを取り戻し、サンフランシスコを散策する余裕ができたものであった。
サンフランシスコ周辺には行くべきビール酒場は実に多い。このベイエリア地域には地ビールが群集しているからだ。
その代表はやはりノースビーチのサンフランシスコ・ブリュワリーだろう。
街で一番古いブルーパブといわれるだけあって開設は1896年である。私が訪れたときはアルバトロスというラガーとレッド系のエンペラーノートン。ポーターのグリプマンがあった。南京豆の殻を大きくしたような形の扇風機が頭の上でゆったりとクルクル回っている。食事もできるが誰も食べている人はいなかった。ワイワイガヤガヤひたすら飲むのがこの店では通例のようだ。郷にいれば郷に従えである。ままよとグラスを重ねたらホテルにもどるノブヒルの坂道が昇れなくなってしまった。
お店はシテイライト書店のすぐそばである。ケルアックもここのビールを飲んだかもしれないと考えるとさらに旅の感傷が深まる。我もまた、終わりなきオンザロードである。見果てぬ果てしなき路上の旅人である。すこしだけわたしも若返る。
日曜から木曜の4時から6時まではハーフパイントのビールがわずか1ドルで飲める。
ねえ、今すぐ行ってみたくないか。星空へも届きそうなケーブルカーが駆けて昇るあの坂の街、あの黄金色に光り輝くビール酒場へ。
ことビールに関しては、オレゴン州ポートランドの右に出る都市はないといいきったのが我が師マイケル・ジャクソンだ。都市部においては最低12.州全体では軽くその2倍以上のブルワリーがあると著書「世界ビール大全」にいうのだ。ちなみに隣のワシントン州にはやはり20以上。メッカ、シアトルには10以上のビール酒場があると読んだ。
真面目なビール愛好家として、オレゴンに行かずに済むものだろうか。世界のビール酒場探訪者を自称するものとしてシアトルで飲まずに済ませられるものだろうか。
持論の「ビールは喉の乾きをいやすだけのものではない」という思いが内から湧き上がる。
私はシリアスなビアラヴァーである。
額に汗する勤労者が今日という日に感謝し、明日への希望をつなぐための不可欠の飲み物。恋人や友人と、しみじみと和み、喜びと共に味わえる生活飲料。風土と気候と人々の知恵がはぐくみそだてたもの。数千年の古来から営々と連なる欠くべからざる文化だ。
ビール酒場は人々が日々集い共感する一大ページェントなのだ。
緯度的・風土的・気候的にもあのあたりでは旨いビールができるにきまっている。不味いビールなどできるはずない。
それにしても40社以上のビールか(スゲー)。1社に最低四種として160種類(ウシャー)。一週間ではたりない(体に悪いゾ)。一ヶ月でも不十分かもしれない(でも俺ならヤレル)。またしても私は移住をまじめに考えてしまった。
さて、今回のビール酒場巡りはサンフランシスコに降りて、カルフォルニア州を南から北へ縦断し、オレゴンを走り抜け、ワシントン州シアトルに至る全行程1500キロ、10日間の正にシリアスなビアラヴァーの旅である。
まず、オークランドへ向かった。地下鉄の駅から街の中央で表に出ると近代的な町並みが広がっていた。五分ほど歩いたワシントン906番地にあるのが、パシフィック・コーストPACIFIC COAST。すぐわきに小さな市場があり、町並みを見渡すと、あたりは古くからの地区だとわかる。店は入って右がバーカウンター。左にテーブル席が10ほど。その奥にはテラスがあった。
ビールはCODE BLUE BARLEY WINE、GRAY WHALE ALE
BLUE WHALE ALE、IMPERIAL STOUT、CASK BLUE
EMERALD ALE、IRISH STOUT の7種。
24時間まるで寝てないし、おまけに午前中ゆえ、全7種のテイストをお願いした。
やや大きめのショットグラスを目の前に並べて色の薄い順に空けてみたら、バーリーワインとスタウトが出色の出来映えだった。
ブリュワリーは教室程度のものが地下にあり、7種ほどの樽で交互に醸造していた。
週末の金曜日のせいか、カウンターの中のバーマンの老中年二人もウエイトレスの中年二人もニコニコ笑顔が絶えない。全体にのんびりした雰囲気のなかでみなさんな楽しそうにビールの飲み、ブランチを楽しんでいた。
さて、夜は本店がパロアルトにあり、その筋では本格的なドイツ風なビールとして高名な
GORDON BIERSCHへ行く。
BARTをエンバーカデロで下車し、ベイブリッジの方向へ歩く。しかし人通りはほとんどなく、町並みもだんだん寂しくなっていく。こんなとこにビール酒場があるのかなーと不安になった頃、ヒルズ・ブラザーズ・プラザの一角にそれがあった。オソルオソル入ってみて本当にビックリ。そとでは人っ子一人歩いていないように見えたのに店内には2,300人のビール好きが溢れかえっていたのだ。
小学校の体育館ほどのスペースの真ん中を横断するどでかいカウンター、窓側には若干のテーブルはあるがほとんどの人がスタンデイングで飲んでいる。ベイブリッジ側にはテラスもあり、そこも満席である。私たちはやむを得ず二階のレストランで飲む事にした。
ゴードンが誇るビールは三種類。PILSNER、DUNKEL、MARZENである。
小麦ビールのメルツェンの味付けにいささかの不満が残ったが、ほか2種は充分満足した。「良いビール酒場には、何十種ものビールは不要だ、旨いビールがありさえすれば、種類は1つでも2つでもよいのだ」という原則の見本のような店だった。料理も自前のビールを使ったものが多く、ここの地ビールに良くあっていた。
トイレにいく途中で覗いたブリュワリーは半地下にあり、これも立派な大教室クラスであった。醸造者のダン・ゴードンはドイツ、世界最古のビール醸造所ヴァイヘンシュテファンで学んだ職人と聞く。ロケーションはやや不便だがビールの味、料理のグレードを評価し、SF一のビール酒場と断定したい。
翌日、バスを11丁目で降り、バークリーにある、トリプルロックTRIPLE ROCKの姉妹店、TWENTY TANKへ向かう。
ハリソン通りに近い、11丁目の316番地。ここもやはりなんでこんなところに、という見本のような店である。夜ならタクシーでしか来れないようなヤバイ、ブロックにココもあった。
ここのバーのエヴァがとても快活でキビキビと働きかつ可愛く、ついついグラスを重ねたのがRED TOP ALE、BOWSERS BROWN ALE、FRAU COW(WHEAT)、KINNIKINICK STANDARD ALE、IPA、SCHUITZIES PILS、NYZACK BARLEY WINE、以上七種。
私はPILSと小麦ビールのFRAU COWが特に気にいった。IPAは実に香りが豊かでフィニッシュのきれが良く、後日再来店してたっぷりとのみたいもんだと思わせる1品だった。
入って右にバーカウンター。その奥に調理場。左側全部がテーブル席。ブリュワリーはタンクが1階と2階にある、変則型で、規模は工場酒場共に大教室程度の店だった。何度ももカウンターまで往復し、グラスの受け渡し度にエヴァから仕入れた情報によると、バークリーにある店と経営者は同じだがビールの味は随分違うらしい。
わたしははこっちのほうが好きよ、とニッコリ断言。わたしもコッチがいいです。
カルフォルニア北部のメンドシノ地方は知る人ぞ知るビールの産地である。良質の麦が収穫されホップも自前だ。なんだか出来過ぎの気がするがホップランドHOPLANDという町があるくらいだ。そうしたこの地方を代表するビール酒場の一つが、州道128号線に面したBOONVILLEという文字通り田舎町の街道沿いにある、BUCKHORNである。住所に14081番地、HIGHWAY128であるから州道沿いにあることは分かっていた。たまたまガスが切れかかっていたので、通りの町外れにある、ガソリンスタンドに車を入れて、給油しながら従業員に聞いてみることにした。
「レギュラー、満タン。ところで、バックホーンというビール酒場知ってる」
と聞いたら、全員が同じ方向を指さして、アッチ。みると木造の古ぼけた切り妻屋根の2階建てが見える。通りに面して、ペンキの剥げかかった醸造用のタンクがおいてあるので、酒場とわかるがうっかりすると通り過ぎてしまいそうな店構えだ。
店は高床式になっていて、2階の店内は教室が2つ程度。小さな事務所とTシャツとかの売店があり、バーカウンターは右。テーブル席は左奥にひろがっていて、カウンターの外の裏側にテラスが用意されていた。先を急ぐ旅なので6種のサンプラーを頼む。
POLEEKO GOLD ALE、BOONT AMBER ALE、BARNEY FLATS OATMEAL STOUT、DEEPENDERS DARK PORTER、BELKS EXTRA SPECIAL BITTER、HOPOTTIN INDIA PALE ALE、の6種のセットで6.25ドルである。
おしなべて豊穣、滋味溢れるビールだ。麦とホップを豊富に使用した直球勝負の男らしいビールだった。
窓際にはハチドリがやってきて、店が用意した甘い汁を餌場からすっているのがよく見える。もし、こんなに旨いビールが無ければ、地元民が日がなたむろする、ただのローカルな酒場である。ここの人々は幸せだ。自分たちが丹精込めて作った麦とホップとコーストレーンジズ山脈の湧水とでできたビールを町の居酒屋で存分に飲めるのだから。
酒場は教室程度だったが、醸造所は町外れにあり、立派な体育館クラスが林に囲まれているのがハンドル越しに見えた。
このビールをつくっている醸造所の名はANDERSON VALLEY。
地元の方々も大勢働いているのだろう。ますます立派だ。後髪が引かれる思いで、滅多にしないのだが、おみやげにアンバーエールの大瓶を1本買った。





