アイルランド編
アイリッシュ海峡を渡ったギネスは、別物のギネスだ、と言う。アイルランドで飲むギネスは格別に素晴らしい、と言われる。それは本当だろうか。酒飲みの戯言ではないのか。いつも頭の片隅から離れなかった。では、ダブリンへ。
世界のあちこちでいろんな人に出会い、それぞれ旅の思い出を語り合って、ただ一度の
例外もなく共通していたのは、アイルランド。良い国だ。イイゾ。人がいい。食べ物が旨い。ギネスも旨い。であった。
そんなにも旅人たちに愛されて止まない国がこの地球にあってよいものだろうか。ポルトガルがいいとどこかできいた。トルコは素晴らしいともどこかで聞いた。バリは最高、バンコックもいい。アムステルダムもいい。ハワイもいい。いろんな意見を聞いたが、最後には、でも、がでる。そんな中でアイルランドだけは私の知る限り、「でも」がなかったのである。
アイルランドは空前の好景気だと聞いていた。ダブリンはもとより国内各地でEUをはじめとする公共投資による工事。また、海外からの資本によるビル建設ラッシュとも聞いていた。
しかし、こうした追い風の経済事情にもかかわらず、ざんねんながらアイルランドでは現在のところマイクロブリュワリーや地ビールの隆盛、台頭はみられないようであった。
となれば、かの国ではビール酒場巡り本来の姿に立ちかえって、ビールの種類ではなく、酒場のノレンを幾つくぐれるか、が自然旅の目的になった。
ヴァージン・アトランテックでロンドンに着いたのが4時。7時のブリティッシュ・ミッドランドでダブリン着が8時半。エイビスのレンタカーを借り、空港のインフォメーションで予約したBBにチェックインしたのが10時。10時半には宿近くのTHE POUNDという酒場で最初のギネスを飲んだ。
スタウトが好きなので、ギネスは日本でも海外でもよく飲んでいる。生も瓶も缶も、強いギネス、ドライなギネス、甘いギネス。ヘッドが白いやつ、茶色いもの。ガスの強い1杯。ガスをまるで感じさせないスウイートな1杯も飲んだ。
しかし、アイリッシュ海峡を渡ったギネスはすでに別物のギネスだと言う。アイルランドで飲むギネスは特にかくにも素晴らしい、という声を世界のビール酒場のあちこちできくたび、それは本当だろうか。酒飲みの戯言ではないのか、といつも頭の片隅から離れなかった。
ご承知のとおり、ア・パイント・オブ・ギネス、プリーズ。
と、土曜の10時半に満員盛況のバーカウンターでどなってもギネスはただちに出てこないし、飲めない。バーマンがポンプからグラスにそそがれてもすぐ出てこない。しばらく待って、泡が一通り落ち着いてから再び注がれるからだ。丁寧な酒場では3度注ぎをするところが多い。静かにオモムロに目の前に置かれたギネスは発砲中で半分がミルクをたくさん入れたコーヒーのような色合いをしている。やがて、ガスが落ち着くと例の真っ黒なスタウトに白いヘッドが盛大に盛り上がる。
口に含むと予想以上にソフトで軽く、スムースなフィニッシュはドライだ。この夜以降あちこちの酒場で経験することになる、恒例のフーンである。基本的な味わいは変わらないが、酒場によって微妙に異なるのである。アルコール度をまるで感じさせないものもある。わずかに雑味をかんじさせるのもあった。パイプの清掃がいきとどいてないのかもしれない。冷蔵時間が違うのかもしれない。製造時期の樽(カスク)あるいはカスクの残量によってにわずかに異なるのかもしれない。
にもかかわらずどこでのんでもギネスはギネス。瓶でもなく、缶でもない、生なギネスは本当に味わいふかく、はるばるとここまで来て良かったと心底思わずにはいられなかった。
私は本当はビーミッシュが好きである。それ以上にマーフィーも大好きだ。しかし同じスタウトでも明確に異なる個性をもつ、このギネスはやはりビールの世界的傑作であり、ヨーロッパの西の果てアイルランドまできて本当によかった、とおもわせずには置かない逸品であった。
さて、THE POUNDはダブリン郊外SWORDSスウオーズにある酒場だ。
すぐ隣にはRYANSという酒場もあり、どっちにしようかと躊躇ったが、騒がしいほうを選んだ。こんばんわと入ると、たちまち両脇からあれこれと声がかけられる。やっとカウンターの真ん中、つまりビールの通り道に腰をおちつけて、最初のギネスを飲み始めたら、たちまち後ろから声がかかり、振り向くと雲をつくような大男だ。いつもの会話が始まる。どこからきた。何時間かかったか、どこへ行く、東京か、ギネスはどうだ。
今回のアイルランドは同行者が美女二人だ。酒場の注目度も高い。そのうち大男の仲間も加わり、飲んでいる時間よりしゃべっている時間のほうが多い展開となり、通常は一番飲むおしゃべりな私が2杯しかのめずシラフ。普段あまり飲まない無口な美女Aが3杯飲んでベロベロで看板となった。
いいのいいいの、今夜は初日だ。この夜飲んだのはギネスとキャフリーズ。
さて、ゴールウエイまで来たなら映画フアンなら、行き先は決まっている。ドキュメンタリが好きなら、映画「アラン」の島へ行くだろうし、ラブストーリー好きなら「ライアンの娘」の舞台、デイングル半島INCHインチへ、アメリカ映画好きなら絶対CONGコングにいくに違いない。私はミーハーなジョン・フォード・フアンである。コング目指して北へ走った。
「静かなる男」の映画そのものともいえる村、それがコング。
N84を北へコリブ湖にそって北上し、途中ROSSで分岐、約30キロで、コングの町は突然現れた。あったアー、無意識に叫んでしまった。町に入った瞬間、映画そのままにパブ、「コハン」が目の前に見えるのだ。映画フアンならずとも、たまらない旅の導入部だろう。メインの通りが1本しかないチッポケな町だが、スクリーンそのままに町並みは残っている。大きなハンチングを被った、ジョン・ウエインと真っ赤なドレスを着たモーリン・オハラが目に浮かぶ。廃墟となった中世の教会を見学し、コリブ湖とマスク湖を結ぶ川沿を散歩し、ライアンというパブでマーフィーズを2杯のみ、現在では雑貨店に廃業しているパブ、コハンの前で記念撮影して、帰ってきた。ただそれだけのドライブだったが、心はなぜだろう、充実して幸せな帰路であった。
例外もなく共通していたのは、アイルランド。良い国だ。イイゾ。人がいい。食べ物が旨い。ギネスも旨い。であった。
そんなにも旅人たちに愛されて止まない国がこの地球にあってよいものだろうか。ポルトガルがいいとどこかできいた。トルコは素晴らしいともどこかで聞いた。バリは最高、バンコックもいい。アムステルダムもいい。ハワイもいい。いろんな意見を聞いたが、最後には、でも、がでる。そんな中でアイルランドだけは私の知る限り、「でも」がなかったのである。
アイルランドは空前の好景気だと聞いていた。ダブリンはもとより国内各地でEUをはじめとする公共投資による工事。また、海外からの資本によるビル建設ラッシュとも聞いていた。
しかし、こうした追い風の経済事情にもかかわらず、ざんねんながらアイルランドでは現在のところマイクロブリュワリーや地ビールの隆盛、台頭はみられないようであった。
となれば、かの国ではビール酒場巡り本来の姿に立ちかえって、ビールの種類ではなく、酒場のノレンを幾つくぐれるか、が自然旅の目的になった。

ヴァージン・アトランテックでロンドンに着いたのが4時。7時のブリティッシュ・ミッドランドでダブリン着が8時半。エイビスのレンタカーを借り、空港のインフォメーションで予約したBBにチェックインしたのが10時。10時半には宿近くのTHE POUNDという酒場で最初のギネスを飲んだ。
スタウトが好きなので、ギネスは日本でも海外でもよく飲んでいる。生も瓶も缶も、強いギネス、ドライなギネス、甘いギネス。ヘッドが白いやつ、茶色いもの。ガスの強い1杯。ガスをまるで感じさせないスウイートな1杯も飲んだ。
しかし、アイリッシュ海峡を渡ったギネスはすでに別物のギネスだと言う。アイルランドで飲むギネスは特にかくにも素晴らしい、という声を世界のビール酒場のあちこちできくたび、それは本当だろうか。酒飲みの戯言ではないのか、といつも頭の片隅から離れなかった。
ご承知のとおり、ア・パイント・オブ・ギネス、プリーズ。
と、土曜の10時半に満員盛況のバーカウンターでどなってもギネスはただちに出てこないし、飲めない。バーマンがポンプからグラスにそそがれてもすぐ出てこない。しばらく待って、泡が一通り落ち着いてから再び注がれるからだ。丁寧な酒場では3度注ぎをするところが多い。静かにオモムロに目の前に置かれたギネスは発砲中で半分がミルクをたくさん入れたコーヒーのような色合いをしている。やがて、ガスが落ち着くと例の真っ黒なスタウトに白いヘッドが盛大に盛り上がる。
口に含むと予想以上にソフトで軽く、スムースなフィニッシュはドライだ。この夜以降あちこちの酒場で経験することになる、恒例のフーンである。基本的な味わいは変わらないが、酒場によって微妙に異なるのである。アルコール度をまるで感じさせないものもある。わずかに雑味をかんじさせるのもあった。パイプの清掃がいきとどいてないのかもしれない。冷蔵時間が違うのかもしれない。製造時期の樽(カスク)あるいはカスクの残量によってにわずかに異なるのかもしれない。
にもかかわらずどこでのんでもギネスはギネス。瓶でもなく、缶でもない、生なギネスは本当に味わいふかく、はるばるとここまで来て良かったと心底思わずにはいられなかった。
私は本当はビーミッシュが好きである。それ以上にマーフィーも大好きだ。しかし同じスタウトでも明確に異なる個性をもつ、このギネスはやはりビールの世界的傑作であり、ヨーロッパの西の果てアイルランドまできて本当によかった、とおもわせずには置かない逸品であった。
さて、THE POUNDはダブリン郊外SWORDSスウオーズにある酒場だ。
すぐ隣にはRYANSという酒場もあり、どっちにしようかと躊躇ったが、騒がしいほうを選んだ。こんばんわと入ると、たちまち両脇からあれこれと声がかけられる。やっとカウンターの真ん中、つまりビールの通り道に腰をおちつけて、最初のギネスを飲み始めたら、たちまち後ろから声がかかり、振り向くと雲をつくような大男だ。いつもの会話が始まる。どこからきた。何時間かかったか、どこへ行く、東京か、ギネスはどうだ。

今回のアイルランドは同行者が美女二人だ。酒場の注目度も高い。そのうち大男の仲間も加わり、飲んでいる時間よりしゃべっている時間のほうが多い展開となり、通常は一番飲むおしゃべりな私が2杯しかのめずシラフ。普段あまり飲まない無口な美女Aが3杯飲んでベロベロで看板となった。
いいのいいいの、今夜は初日だ。この夜飲んだのはギネスとキャフリーズ。
さて、ゴールウエイまで来たなら映画フアンなら、行き先は決まっている。ドキュメンタリが好きなら、映画「アラン」の島へ行くだろうし、ラブストーリー好きなら「ライアンの娘」の舞台、デイングル半島INCHインチへ、アメリカ映画好きなら絶対CONGコングにいくに違いない。私はミーハーなジョン・フォード・フアンである。コング目指して北へ走った。
「静かなる男」の映画そのものともいえる村、それがコング。
N84を北へコリブ湖にそって北上し、途中ROSSで分岐、約30キロで、コングの町は突然現れた。あったアー、無意識に叫んでしまった。町に入った瞬間、映画そのままにパブ、「コハン」が目の前に見えるのだ。映画フアンならずとも、たまらない旅の導入部だろう。メインの通りが1本しかないチッポケな町だが、スクリーンそのままに町並みは残っている。大きなハンチングを被った、ジョン・ウエインと真っ赤なドレスを着たモーリン・オハラが目に浮かぶ。廃墟となった中世の教会を見学し、コリブ湖とマスク湖を結ぶ川沿を散歩し、ライアンというパブでマーフィーズを2杯のみ、現在では雑貨店に廃業しているパブ、コハンの前で記念撮影して、帰ってきた。ただそれだけのドライブだったが、心はなぜだろう、充実して幸せな帰路であった。





