旅・宿・移住

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2008/03/04

アイルランド編

アイルランドの地図を出発前に毎晩のようにベッドで寝ながら眺めていて、モーハの断崖は絶対行こう。ケリー周遊は一応いく。アデアにも泊まってみたいし、ウオーターフォードではクリスタルガラスをお土産に、ドネガルではツイードのジャケットか帽子を買いたい。でも、このキンセールはどうだろう、コークに近いからマーフィーとビーミッシュは絶対飲めるし、海に面しているから、旨いシーフードを食べられそうだ、と想像をたくましくしていた。
人口400万程度の小さな国だが、アイルランドには、訪れてみたい街やら村やら市がいくらでもある。私は、自分の触覚を尊重したい。KINSALEという7文字からは、わが琴線に訴えかけるモノがある。コークはいつでも行ける。やはり、キンセールへ行こう。
さしずめ日本なら伊豆高原を越えて、西伊豆に降りていくようにキンセールへは山や丘を下っていく。すでに日が落ちた街道には所々にBBの案内がみえた。やっと街中に入ったところにTAP TAVERANEという酒場があった。ここでスタウトを飲みながら、バーマンのお婆さん(変だ)に電話を借り、BBの空きを確認することにした。しかし、希望の宿は満室。カウンター内の白髪頭の強面の気むずかしそうなバーサマに聞いてみたら、街の中心にある宿とレストランを兼ねたJIM EDWARDSを紹介してくれた。これが正解。アタリだった。
出発前にインターネットで調べてあったキンセールの行きたいと思っていたレストランの一つがなんと、このジム・エドワーズだったのである。バーのビールも充実していて*、評判どおりシーフード料理もすこぶる美味。幾分遅い夕食となったが、予想以上の収穫だった。
メニューを紹介する。地元のスモークサーモンが5.5P。ガーリック味のムール貝が4.7P。地元特産の蟹爪のグリルが5.9P。地元産牡蠣が半ダース4.9P。シーフドサラダが8.9P。
すべてOKである。ビーミッシュがあうのである。マーフィーが絶妙なのだ。キンセールにおいては魚介類には白ワインではない。地ビールのスタウトに限ると確信した夜になった。

アイルランドは空前の好景気に湧いていると書いた。ビールを巡る産業も例外ではない。ダブリンにはTHE PORTER HOUSEという素晴らしいブリュワリーができていた。場所はテンプルバーのすこし先、ダブリン城の手前である。
なによりもまず、そのラインナップを紹介しよう。
PLAIN、PORTER HOUSE RED、BRAINBRASTA、OYSTER、XXXX、HERSBRUCKER、TEMPLE BRAU、CHILLER
WEISSBIER、以上9種。
ヴァイスは季節がら製造していなかったが、ほかはすべてあった。
おのおのがすべて世界水準の名作である。英国とかドイツとかアメリカとかチェコとかの国とジャンルを凌駕してビールの名品である。この国でもやはり世界のビールを巡る趨勢は生きていた。
宣伝告知にはこうある。合計905年の経験を携えた16の国々からの36の醸造者たちが3日間を費やし、得られた結果がこれらのビールだ。
特にPLAINは1998年のベストスタウトに選ばれた傑作である。
ベジタリアンには不向きとされるオイスターもギネスに充分に対抗できる1品だった。
レッドもいい。4Xは我々日本人には説明しきれないが、ウエストコークのダービーに1900年代から伝わる製法を踏襲した、かのマイケル・コリンズも愛飲したスタウトとある。私はアイルランドへはスタウトを飲みにきた。従って、オイスターと4Xにこだわったが、期待に充分答えてくれる素晴らしいビールだった。

ダブリンでは、壮絶な酒場巡りをした。
美術館をでてから2時にビール酒場の老舗パレス・バーに入って、一人で1パイントを飲み始めた。配偶者Aは買い物中で、しばらくは戻ってこない。偶然となりに座ったアイルランド人の学生と話し始めたら、5人組の大男たちがはいってきて、周りを取り囲んだ。
2パイント目に入ると、大男たちとも会話がはじまる。かれらはマンチェスターから、アイルランドにゴルフにやってきたグループだ。女性も一人いる。いわゆるラウンドが始まる。3杯目で歌がでる。知ってる歌なら合唱しなければならない。4杯目になるともう立ってられない。連中は平然としているが、これ以上はむりだ。みんなと握手で分かれた。
酔い醒しに少し歩こうと思うが、もうめんどう。やっとの事でツイード製のジェームズ・ジョイスに因んだ帽子とイリアンパイプのCDを1枚買って、タクシーを捕まえ、リフィー川を渡って、運河そばのヘデイガンへ。
6時。サマータイムだ。まだ陽は高い。やっと混みだしてきた店内の一隅に座り、まずマーフィーを1パイント。ステンドグラスの窓からは初秋の柔らかな日差しがさして、店内に長い影を店の端から端まで渡している。目の前のカウンターに一人毅然と座り、新聞を読みながら座っている老人は、いまだ同じページを睨んだまま、最初のページすらめくっていない。
2杯目はギネス。ここもすこしちがう。ギネスはやはり店によって微妙に味わいを変えるようだ。7時を回ると、腹も空いてくる。いろいろ考えて、フィニックス公園脇のライアンズへ行くことにした。
タクシーを降りて、4割ほど客の入った店に入る。やった、奥のスナッグがあいている。
ここは食事も定評のあるパブ。バーやカウンターの内装調度品の豪華さはダブリン随一だろう。3人で個室に籠もってステーキとフィシュアンドチップスとサラダで大満足。ビールはマーフィーズ、とハープをそれぞれ1パイントずつ。
あーだ、こーだ、としゃべっているうちにもう9時すぎ。もう一軒だな。
予定通り、チャペリゾット村入り口のマリンガーへ向かう。木曜日の夜は、恒例のライブ。
地元の人々が楽器を手にあつまってきている。演奏はなかなか始まらない。
やがて、片隅のテーブル席に集結するとオモムロに演奏が始まる。ギターが2本、バンジョーが1、アコーデオンが1だ。
初老のバーマンが日本から客人がお見えだ。なんかやってやれよと、リーダー格の男に耳元で囁いているようだ。しばらくすると故郷を離れた恋人を想うバラードが始まる。地名のところが東京に変わるという万国共通のパターンで盛り上げてくれる。
そういう彼等のもてなしの気持ちがとても嬉しかった。ダブリン市内から随分とはなれたここチャペリゾットには日本人は珍しかったのかもしれないが、かれらのホスピタリテイには感動した。
ここではスミスウィックとギネスを1パイントづつ。12時になった。帰ろう。この日は午後2時から12時までで10パイント、なんと4.5リットルのビールを飲んでしまった。





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