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2008/01/22

チェコ、オランダ編

チェコ、プラハのビール酒場「ウ・フレク」は世界最高のビールだ。モルダウの流れのように陶然とした味わい。盛り上がった泡にマッチ棒がプスリと立つ。本当だ。

プラハのビール酒場の代表といえば、「ウ・フレク」と断言してよいだろう。
今や観光コースの一部となっていて、大型バスで押し寄せる外国人で連日満員である。にも拘わらず1種しかないダーク・ビールは1499年の創業以来不変の味を誇っている。スパイシーなこのビールを指して、プラハの誇りだと言ったチェコ人もいる。
在プラハ20数年のさる日本人指揮者が最大の賛辞をおくるのもここのビールである。
酒場は、国民劇場の脇を少し入った路地の奥だ。1ブロック全てが店舗及び醸造所になっている。入り口上の丸い大時計が正確な時を刻んでいた。店内は広大でかつて礼拝堂を利用した、ビアホールを中心に中庭、それに幾つもの大部屋があり、各部屋にも必ず入り口の大時計に似た時計がかけてある。
営業時間は朝9時から夜11時まで。告知では定員1200人である。
やはりここも世界の酒場に共通の入れ混みのテーブルで、壁は堅牢な黒光りした板で囲まれ、白シャツ、黒ズボンの立派な体格のスラブ人ウエイターが十杯以上のジョッキを肩にかついで各テーブルを回る様は我々には真似の出来ない仕事だろう。
パンがついたソーセージ200グラム (ここはグラムの表示があるのだ)で約500円。ダンプリング付きのグラーシュが150グラム で約700円。ビール0.4リットルで 約300円であるから、ビールとツマミ1品で約千円。これでこの快い酔いが堪能できるのだ。永住したいと思うのも解っていただけるでしょ。
夢がもしかなうなら、今宵またウフレクでビール。
盛り上がった泡にマッチ棒がプスリと立つ。本当だよ。

オランダ、アルクマール市、HOUTILL通り1番地。店の名は、デ・ブームDE BOOM。
オランダの旅で最も行きたかったビール酒場がここだった。
街の中心の広場に近いビール博物館の一隅。道路から覗けば地階、運河から見上げれば1階のコーナーにその酒場はあった。
土曜の午後だ。すでにテーブルは満卓。カウンターの周りには10人ほどが立って飲んでいる。運河沿いにはテラスもあり、家族連れもいる。
バーマンは白い髭をたくわえた初老の男。他に中年女性のお手伝いが二人、カウンターの中にいて、笑顔で次から次へと押し寄せるオーダーを裁いている。
バーの棚にはウイスキーではなくオランダ中のビールが本当に、嘘ではなく、マジに、歴然と、目の前になんと、なんと86種が勢揃い。
そうか、ここには本当にオランダ中のビールが全部揃っているのだ。見ているだけで目尻が下がる。
目の前につり下げられた黒板に書かれた本日の生ビールは
BRANDS IMPERIAL、RIDDER PILS、WIECKSE WITTE、AFFLIGEM、HEINEKEN、DE KONINCKの5種。
私は黒板の上から順に4種いただいたが、いずれも生ならではのフレッシュさが、長旅で寝不足の体全体にしみこんで元気が漲る思いがした。
ブランズ・芳醇、リダー・軽快、ヴィスケ、爽快、アフリゲン、豊穣。
4種飲み干して、やっと落ち着く。全てが私のために作られたような官能溢れるビールだ。目の前にならんでいても、オランダの全てのビールが置いてあるというのは本当だろうか、当方は疑心暗鬼である。たぶんこれは無いだろうと思い、セント・クリストフェルを所望したら、なんとブロンドの小瓶が出てきた。世界的な名品とされる1品だ。グイと飲んでみた。期待したほどじゃない。悪くない、悪くない。が、上から下までブランドで固め、メイクバッチシの美女のお相手をする気分。今日は多少野趣でもスッピンのチューリップ娘がいい。

アムステルダム市内にもビール酒場はいくらでもある。例えば、ヘットアイ’T IJはどうだろう。私のノートには”風車の下にあるビール酒場。中央駅の東、フネンカーデ。シンガーソングライターの経営”とある。
行ってみて、ビックリである。
客層が異質なのである。男ばっかし。ネクタイ族が全くいない。いわゆるブルーカラー。しかも皆さんかなり酩酊なされている。まだ明るい7時半だ。入り口まえの屋外にテーブルが10卓ほどあって、これは酔っぱらいで満席。そこで、椅子に座れない客は脇に流れる川の土手に車座で飲んでいる。
店内は前半分がスタンディング、後ろ半分の左にカウンターとバー。右にテーブルが3つ。椅子が10脚ほど。バーの中の怖そうなインデイアン顔のおばさんにナッテNATTEとザッテZATTEを1杯ずつお願いする。淡色だがどちらも風味に富み、野生派であり個性派だ。わたしには少々甘いかもしれない。つぎはコロンブスCLOMBUSかストラウスSTOROUSのどっちにしようかと壁の黒板を睨んでいたら、中のおばさんがとてつもなく破格にバカデカイ声でなにやら絶叫した。
「・・・・・・・・・ツ」。
叫んだおばさんは怖いから脇に回って、若ハゲのバーマンにコロンブスとストラウスを1杯ずつ頼んだら、8時でお仕舞いだとツレナイ返事。そんな馬鹿な、みてよ、おれの時計はまだ7時45分だよ、と泣きついてもとりつく島もない。
つまり、45分までに頼めば8時までは店内で飲めるというわけなのだ。
したがって、さきほどのおばさんの奇声はラストオーダーを高らかに、ややヤケッパチに宣言する鬨の声だったのである。
どおりで、ちょっと前までやたらカウンターが込んでいたものなー。
それしにても閉店が早すぎないか。でも聞いてみたら3時開店だという。ということは5時間飲みっぱなしの連中もいるのだ。客はほとんどヨレヨレ、泥酔状態だものなあ。もし、これで、11時まで営業したら大変な狂乱錯乱ドチャメチャ状況になるだろうと納得。私たちはとぼとぼと店をでた。残念半分安堵半分で。





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