旅・宿・移住

2007/12/18

W・モリスは言っている。「役にたたないと思うもの、 美しいと信じないものを家の中に置いてはならない」

ストーブは我が家に絶対に、必要不可欠のものであった。自ら割った薪を焚いて暖まるストーブこそ、我が家の中心にあり、核となるものでなければならなかった。

家を建てる際の基本設計の第1番に、まず、ストーブがあった。最初にストーブを家の中心に置いて、そこから、私は家の図面を作成したのだ。
ありとあらゆる建築部材のうち、最初に選択したのは、薪ストーブの機種だった。 始めて期待に胸を膨らませて調査に行ったのは、墨田区立花にある、「永和」さんだ。
2階のショールームにあがると、世界中の名品が勢揃いしていた。入って右側の一角にヴァーモント・キャステイング社の、真っ赤なホーロー仕上げの「アンコール」があった。店主の気配りだろうか、炉の中には既に薪が燃えていた。全体としては、クラシックな印象だが、細部に及ぶ機能の説明を聞くと、とてもモダンに思えた。全体として、アーリー・アメリカンの雰囲気。ドア、ハンドル、窓はニューイングランド風な意匠で飾っている。私はこの手に弱い。自慢ではない、滅多に一目惚れするタチではない。しかし、私は一目見るなり、このストーブに惚れてしまった。こいつとは一生上手くやっていけると思えたのだ。こいつとなら、ずっと仲良く出来ると思えた。
店主に「アンコール」の仕様と性能を聞いて私は焦った。美瑛の丘で、私たちが自給可能な薪は、カラマツが7割、残りは樺、楢等である。
店主曰く、カラマツは「アンコール」には不適だというのだ。松等の針葉樹には多量のクレオソートが含まれていて、「アンコール」のキャタリテイック・システムには不向きだろうというのだ。この娘は育ちがいいから、それなりの生活を保証してくれないと、あんた、アカンヨと冷たく言われたような気がした(本当は、キャタリテイックとは触媒の作用により、第2次燃焼を助ける機能であり、松のクレオソートはその機能を阻害するだろう、と店主は言っただけなのだが)。
エーッ、オレ、これがいい。これしかない、と私は一途に焦がれるのだが、店主は仲人然とした、クールな視線を変えず、商売人とも思えない落ち着いた態度を崩さない。
「長い目でみたら、例えば、アクレイムの方がよろしいのではないですか?」と惨いことを言う。「あれ、イヤだ、なんか骨太だし、形は洗練されないし、肩の辺りがすっきりしていないじゃないの」
「でも、このアクレイムなら、松を主に燃やしても、それほどストーブ自体に影響は出ないでしょうね。触媒を使用しないノン・キャタリテイックですから、将来的にも問題なく、長く愛用できますよ」と請け負ったのだ。
さて、どうしましょう。





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