オトコの定番

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2007/11/08

秋になるとセピア色のインクが使いたくなる。そして、パリに行きたくなる。

 秋は、セピア色のインクを使いたいと思わせる季節である。
 ずっとセピア色のインクを探しているのだが、この思い、ずっと、まだ果たせないでいる。イメージどおりのインクがないのだ。

 各万年筆メーカーからは茶系のインクが発売されている。万年筆愛好家は古風なものに心惹かれる人が多く、古めかしい雰囲気漂う「茶縞」とか懐かしい響きの「セピア色」といった言葉に反応してしまう。茶系のインクに人気があるのも関係があるに違いない。

   ウォーターマン「ハバナ」
   ペリカン「ブラウン」
   シェーファー「ブラウン」
   モンブラン「セピア」
   モンブラン「ダーク・チョコ・ブラウン」
   カランダッシュ「グランドキャニオン」
   デルタ「セピア」
   スティピュラ「セピア」
   ビスコンティ「セピア」
   ヴァルドマン「バウムブラウン」
   セーラー「ブラウン」
   NAGASAWA「神戸インク物語・旧居留地セピア」
   万年筆博士「イカ墨セピアインク」
   エルバン「ティーブラウン」
   エルバン「ココアブラウン」
   エルバン「アイランドカフェ」
   エルバン「ティエラ・デル・フエゴ」
   エルバン「ビルマの琥珀」
   プライベートリザーブ「カパー・バースト」
   ヌードラーズインク「ビーバー」
   ヌードラーズインク「ゴールデンブラウン」
   ヌードラーズインク「カイオワペカン」
   ヌードラーズインク「ウォールナット」
   ドクター・ヤンセン「シェークスピア」
   ドクター・ヤンセン「レオナルド・ダ・ヴィンチ」
   ドクター・ヤンセン「カエサル」

 列記してみると、まぁ随分と多くの茶系のインクが発売されているものだと、今回あらためて認識した。

 4、5種類を除いて、実際に使ってみたのだが、私にとっては、納得のいくインクは1種類もなかった。

 常用インクを選ぶにあたって、大前提となるのは、
   (1)にじまない
   (2)裏写りしない
   (3)ある程度のスピードで乾く
 この3点である。
 私の場合、満寿屋の原稿用紙と相馬屋の原稿用紙の2種類をテストペーパーとして使っている。この2種類の原稿用紙に書いてみて、上記の3つの条件をすべてクリアすれば、晴れて常用インクとして使用し始めることになる。




 セピア色のインクに出会えない、と書いたのは、市販されているインクのセピアと私のイメージにあるセピアとで色合いにかなりの隔たりがあるからだ。


 大まかにいって、茶色には4種類あると私は考えている。
   (1)赤色系の茶色(赤が強い茶色)
   (2)緑色系の茶色(緑色っぽい茶色)
   (3)白色系の茶色(白っぽい茶色)
   (4)黄色系の茶色(黄色っぽい茶色)

 市販されている茶系のインクは圧倒的に(1)の赤色系の茶色なのである。「ブラウン」と称しているインクは、まずこれ。赤色を感じさせる茶色は嫌いな色じゃないけれど、探している色はあくまでも「セピア」なのである。

 スティピュラの「グリーン」は(2)の緑色系の茶色といえるインクで、色合いは大好きである。置いているお店は決して多くないが、毎年欠かさず買っているインクの一つである。深緑でもなく焦げ茶でもない色合いだ。古名でいえば、「媚茶色(こびちゃいろ)」あるいは「利休茶色(りきゅうちゃいろ)」に近い色だ。しかし、これも私が探している「セピア」ではない。

 今から2年ほど前、鳥取の「万年筆博士」が、コウイカの墨袋から取り出したメラニン色素をもとにインクを生産することに成功した。セピアという言葉はギリシャ語で「コウイカ」を意味する。文字通り、セピアで作ったセピア色の「イカ墨セピアインク」なのだが、使ってみると、(3)の白色系の茶色に思われた。書いた直後の色合いは、私のイメージに合ったセピア色をしている。それが紙に浸透していくと、薄く、白茶けていく。万年筆用と書画用と2種類あって、書画用のほうが色合いは濃く、好みの色合いだったが、粘性が高く、万年筆には不向きなインクだという。万年筆用は、書画用に比べると、明らかに色味が薄く、白っぽく感じた。値段も高く、また置いているお店も限られているので、食指が動かなかった。

 私の追い求めているセピア色とはどんな色合いなのか。






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