オトコの定番

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2007/02/21

太い線で綴った文字は 不思議なくらいに物語る

 ゴシック体だったり明朝体だったりと、ボクたちは、手書きの文字よりも活字体の文字に接する時間が多い日々を送っている。液晶画面に映し出された、細微な点の集合体は、小さく、おぼろげなので、眼鏡をはずして読み返したりしている。

オレはまだまだ…、とつぶやいておられるかもしれないが、この拙稿に辿りついてしまったということは、アナタ様もそれなりのオトシなわけで、オメメちゃんがローガン氏になるのもそう遠い日のことではないはず…。

一度は滅びそうにもなった万年筆だけれど、ここのところ復権ブームが再燃していて、決してお安くはない1本を、前後左右の、友人、知人、同僚、上司、部下の諸氏が、案外、密かに持ち歩いていたりする。
彼らの多くは、デパートの文具売り場や大手文房具店で、あるいはインターネットで入手していることが多いと予想され、購入の決め手となったのは、<ブランド名>と<値段>と<デザイン>のはずである。
そこで。
あえて。
遅ればせながら、これから万年筆を買ってみようと食指が動き始めた御同輩に、万年筆選びの、こだわるべき、もうひとつの基準をご紹介しよう。

 今回から12回にわたって「魅惑のヴィンテージ万年筆」と題して連載をしていくわけだが、前半の5回は、万年筆選びのポイントと、使用するインクと紙について、私なりの考えを綴っていこうかと思う。

さて、第1回目の万年筆選びのポイントだが、それは、インクが流れ出て書き生まれる字幅、線の太さである。
万年筆の字幅には、<EF(極細)>から<F(細字〜中字)>、<M(中字〜太字)>、<B(太字〜極太字)>まで各種あるのだが、お気に留めていただきたいのは<B>である。この<B>とはBroad(ブロード)の頭文字で、線が太いことを意味している。Bの数が増えるごとに、ペン先についているイリジウムと呼ばれる銀色の玉は大きくなっていき、太い線が書き生まれるのだ。紙との接地面積が広くなる分、インクの流れに異常がなければ、書き味はスラスラヌルヌル、万年筆ならではの書き心地を堪能できるわけである。
こだわって万年筆を選ぶ基準とは、<B>や<BB>、できれば<BBB(3Bとも記す)>まで用意されているモデルを選ぶ、ということなのだ。
BBや3Bの万年筆は、インクの流れを調整するのが難しく、アフターケアが面倒なので仕入れて売るだけの店ではあまり扱いたがらない。これは逆に言えば、BBや3Bの万年筆を置いている店は、検品をしているはずであり、アフターケアも万全のはずである。うるさい客の扱いにも慣れているはず…。
ならば。
だったら。
こだわる更なるポイントを付け加えたい。購入する時点で次のように依頼してみるのだ。
「ペン先を裏返して、小さな文字が書けるように調整をしてもらえませんか」
こうしてもらえば、手帳に書き込むことも難しくなくなって、オールパーパスの1本が手に入ることになる。A面で極太字。B面で中字。調整さえすれば、万年筆という筆記具は、1粒で2度おいしい思いが味わえるということは意外に知られていない。

 キャップをはずす。紙にイリジウムが触れる。まもなくインクが紙に滲み始める。慌てず、あせらず、丁寧に、濡れた線と線とを組み合わせていくと、できあがる文字は、きっと10円玉くらいの大きさになることだろう。書き生まれた文字は、判読しやすく、驚くほど豊かな表情をしていて、不思議なくらいに、使い手の心を物語る。

玉、琢かざれば光なし。あとはひたすら使うだけ。使えば使うほど、光り輝き、愛着に満ちた1本となる。





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