オトコの定番

2007/03/19

光りあふれ、固く、かぐわしい友としての万年筆を求めて

 車内には『You’ve Got a Friend(邦題 君の友達)』が流れている。キャロル・キングのアルバムを聴きながら、日本橋へと車を走らせていた。

 日本橋三越本店で「第9回 世界の万年筆祭 〜私の万年筆にめぐり逢う〜 」が開催されている(18日まで)。今年は、海外のブランドと国産メーカーと合わせて22社が出展している。生涯の友となるような万年筆とのめぐり逢いはそう簡単にはあるものではないのだけれど、もしかしたら…と期待に胸を膨らませ、自走式の駐車場をグルグルグルグル7階まで一気に上がり、ウキウキワクワク催物会場へと向かった。

 同行してくれたのは、スワン水口君である。ヴィンテージ万年筆に造詣が深く、なかでもマビー・トッド社製のスワン万年筆にはかなりのこだわりがあって、1920年代後半に作られた、手のひらサイズの、碧空のように清々しい青色軸の、レバー吸入式万年筆を超多忙なトーキョー・ビジネス・ライフのなかで使っている。

 最近の万年筆には書き味の硬いものが多い。しなやかだけれど弱々しくなく、のびやかだけれど薄っぺらでなく、傷ついても歪んでも、かわいくて、片時も肌身離さず持ち歩かずにはいられない、という万年筆になかなか出会えない。スワン水口君とはそんなことを嘆いたりする仲だが、莫逆の友になりうるかなと思えた万年筆を何本か所有している者同士、日々変わってゆく書き味や使い心地を語り合いながら親交を深めている。

 スワン水口君と各ブースを見て回った結果、印象に残ったブランドは3社あった。
 まずは、シェーファー。<プレリュード・ローズゴールド>を書かせてもらった。ペン先に程よい弾力があって、軽快。細かい文字を書き込んでいくのに使いやすい。
 続いてペリカン。1940年代から60年代のペリカン万年筆を愛用している者としては、2007年の特別生産品<ナイアガラ・フォールズ>のデザインに奇異の感を抱いたが、実際に持って見ると、重心が計算されているらしく、よく手に馴染んだ。これは案外、実用的な万年筆なのかもしれない。
 セーラーのブースで見せてもらった<シャレーナ>。世界最極細軸の万年筆。この<シャレーナ>を手にした私はまさにガリバーである。とにかく細い。小さい。ここまで小型になってしまうと使う用途は限られてしまうだろうが、手帳専用として使うのならば、繊細で軟らかな書き心地のシャレーナは、スパイカメラのように心強い味方になるはずである。
 たまたまいま、スワン水口君をはじめ、アーキテクト和太郎氏、サニー松田氏、インダストリアス喜代美女史、マスヤ川口君、レザー・アーティスト拓也君といった万年筆をこよなく愛する仲間たちと、今までにない<A6・8穴サイズ>の手帖を開発しているのだけれど、この極細筒の万年筆があれば、名刺入れのようなミニ手帖もできるナと盛り上がった。

 他にも、カラン・ダッシュ<エクリドール・レトロ>と<デュナス>、デルタ<ヴィアベネット>、スティピュラの<ヴェド>、セーラー<プロフェッショナルギア・14金・手のひらサイズ>、パイロット<カスタム742・フォルカンニブつき>などが印象に残ったけれど、いま使っている万年筆を凌駕するほどの輝きは感じられなかった。

 キャロル・キングの歌を初めて聴いたのは小学生の頃。もう30年以上も愛聴している。耳にした瞬間、心の琴線にふれて、以来、古馴染みのようなつきあいで、慰められたり、勇気づけられたり、奮い立たされてきた。<I’ve Got a Friend!>と今まで何度となく叫んできたけれど、光りあふれ、固く、かぐわしい<金蘭の友>にまで発展した関係は、人も、音楽も、ペンも、ごくわずかである。

 次回、いよいよヴィンテージ万年筆の世界へといざないます。





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