ブラッド・ピットに贈るとしたら…、と訊かれて思い浮かんだペリカン加賀沈金万年筆
アメリカ南東部を襲った大型ハリケーン「カトリーナ」のことは覚えていらっしゃることだろう。ハリケーンの強さを示すシンプソン・スケールで、最大時、最高位カテゴリー5を記録した。2005年8月23日から8月31日までの発生期間、死者1700名以上、行方不明者135名、被害総額は約3兆円に及んだ。
被害が甚大だった地域は、アラバマ州、ミシシッピ州、ルイジアナ州の3州で、なかでもルイジアナ州ニューオーリンズが最も深刻なダメージを受けた。湖の堤防や工業水路の堤防が数か所決壊したニューオーリンズは、陸上面積の約80%が水没した。なかでもアフリカ系アメリカ人が多く住むLower Ninth Ward(ロウワー・ナインス・ワード:下9区)と、湖に面した高級住宅街Lakeview(レイクビュー)という2つの地域に大きな被害を被った。
アレ?万年筆の話じゃないの?
ごめんなさい。もうすこしお読みくださいな。
8月28日、ブッシュ大統領はルイジアナ州に非常事態宣言を出し、ニューオーリンズの住民約48万人に避難命令を出した。しかし、確認された死者は9月1日の段階で数百人を超えた。
避難命令があったものの、取り残された、移動手段をもたない低所得者たち。避難命令を受けた老人ホームの職員が真っ先に逃げ出したために自力で避難できなかった高齢者たち。看守不在のまま水や食料も与えられず4日間放置された受刑者たち。
廃墟のような街並み。遺体が水面を流れているという絶望的な光景。
罹災後、ニューオーリンズの公共サービスは完全に麻痺した。最大の避難所となったルイジアナ・スーパードームへの避難者は、テキサス州のアストロドームへ移転することになったが、行政の対応が後手後手にまわり、移転は全く進まず、しかも支援物資の不足により、高齢者などの衰弱死が相次いだ。
また、被災者名簿の作成が追いつかず、避難先に移転した際、家族と離れ離れになる被災者が続出した。
あれから2年以上も経っているが、被災者への救援策は一向に捗っておらず、ニューオーリンズの復興が急がれている。
ハリウッドの映画スター、ブラッド・ピットが、ニューオーリンズの救世主として名乗りを上げた。「Make It Right Foundation(メイク・イット・ライト財団)」を設立して、募金を呼びかけている。
ブラッド・ピット自身も、500万ドル(日本円で約6億円)もの私財を投じた。世界中の著名な設計事務所に、実用的で、低コストのエコハウス150棟分の設計を依頼した。これは“Pink Project(ピンク・プロジェクト)”と呼ばれるが、「人々の生活が戻ってくることを最大限に主張する」との思いを込めた鮮やかなピンク色の建設用シートが用いられている。住宅1棟につき日本円で1700万円かかるという。災害から2年以上経っても、アメリカ合衆国政府がなしえなかったことを、ひとりの、傍観者になれなかった男が完遂しようとしている。同じ1963年生れ。顔つきが似ているとたまに言われる(嘘)。ますますブラッド・ピットという男が好きになった。
そのブラッド・ピットが日本にやってくるのだという。
来日の目的は複数あって、ここでは詳らかにはできないが、あちらこちらで重要な書類にサインをすることが多くなりそうだというのだ。
「彼にもし万年筆を贈るとしたら、なにがいいと思う?」
贈り主は、ブラッド・ピットが書類にサインをする際に、調印式での万年筆のように、記念になる万年筆を贈ろうとして訊ねているのだ。
「予算は?」
「片手ぐらいかな…」
「単位は? 百万円? 十万円? 万円?」
「竹で」
50万円の予算なら、書斎館オリジナルの『myth』なんていいんじゃないかなぁ、と思ったのだが、
「日本的なデザインのものがいいんだけど…」
と贈り主はおっしゃるのだ。
考えた。








