オトコの定番

2007/12/06

年賀状の宛名書きには、これらの万年筆とこのインク

 年々、お出しする年賀状の枚数が増えていっている。入院生活を送った年は思い切って減らしたのだけれどなぁ…。昨年は、術後の経過のことも書き記さなければならなかったので、たしか300枚近くになったと思う。

 手間がかからないといえば嘘になる。手っ取り早いのはプリンターで、ご挨拶の文面も宛名も印字してしまうことだけれど、どうも味気ない気がして、宛名を印字するために使ったことは過去に一度もない。バタバタと貧乏暇なしの生活を送っているので、特別に手の込んだ年賀状を誂えることはしていないけれど、万年筆愛好家としては、襟を正し、姿勢を正して、お気に入りの万年筆で宛名を書きたいと思っているのだ。

 宛名書きに使うのは「カーボンブラックインキ」。インクでなくインキ。このインキは、万年筆用のインキなのに、一度乾くと、濡らしても文字が滲まない、消えない、というすぐれモノなので、大変重宝している。神田神保町の金ペン堂がこのインキを作ったのは、井上ひさしさんが清書する際に用いてもらうためだった。





 色は黒だけ。取扱いは面倒ではないけれど、頻繁に使用しない人は使わないことである。それと、専用の万年筆を用意できない場合も使わないことである。これは、カーボンブラックインキに限ったことではないけれど、インクを安易に混ぜ合わせるのは万年筆にとっては決していいことではない。インクのブレンドや“熟成”をよく耳にするけれど、私は足を踏み入れないようにしている。これ以上の書き心地はまずないだろうというくらいにチューンナップしてあるわけで、自分から嘆きの穴に落っこちていくつもりはないからネ。成分の違うインク同士は、少量でも、混じりあうと化学変化を引き起こすので要注意だ。

 一時期、金ペン堂では、カーボンブラックインキ用に調整された万年筆(あれはたしかオマスのパラゴンだったと思う)と一緒に販売していたが、使用時の約束事を守らないで調子の悪くなった万年筆を持ち込む客が急増したのと、インキの製造に手間がかかったために販売をやめてしまった。現在でも販売はしていない。





 現在、金ペン堂の「カーボンブラックインキ」とほぼ同様のインクが、プラチナから「カーボンインク」として売られている。愛好家の間でも、このインクを使用している人は結構多い。









 私がこのインクを使用している理由は、書いた後の文字のテカリ具合が好きだからだ。まだ乾いていない文字のように線の表面が光り輝いている。その輝き方は、墨で線を引いた時のように見えるので、年賀状にはうってつけなのだ。初めて年賀状をお送りした方からは、年始のご挨拶の後に、お決まりのように、いただいた年賀状の宛名は何でお書きになったんですか、と質問される。

 もうひとつ。このインクは実にフローがよく、ヌルヌルっとした書感を楽しめるのだ。このインクを入れて使うようになって、万年筆の書き味の虜になった人は少なくない。病みつきになってしまう…。





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