クリスマスまであと1カ月! 愛する彼女に素敵な万年筆を!
10月29日付の産経新聞文化面に「万年筆が静かなブーム IT時代も女性のステータス」という記事が掲載されて、「女性用の素敵な万年筆を推挙してください」といった問い合わせをいくつかの女性雑誌の編集部から受けた。
あらためて、どれどれと探してみると、店頭に並んでいる万年筆はどれもこれも合格点ではあるけれど満点ではないモデルばかりで、これはという1本にお目にかかれない。
大きさや色合いなどから、
デルタ「ドルチェビータ・ミニ」(通称“沢尻エリカ モデル”)
モンテグラッパ「ミクラ」
アウロラ「フォーコ」
アウロラ「ミニオプティマ・バーガンディー」
モンブラン「ボエム」
モンブラン「グレタ・ガルボ」
などをご推挙申し上げてみたのだけれど、
「パッと見、決して悪くはないって思うんですけどぉ、率直に言ってぇ、お高いなぁっていうぅ印象が強くてぇ…」
などと言われてしまう。金額の割にデザインに惹かれないようなのだ。
女性用に限らず男性用だって、お手頃お値段で、見た目も中身もググッとくるような万年筆はめったにないのだ。彼女彼氏を探すときと同じでね…。
比較的買いやすいお値段の万年筆ということで、
パーカー「ソネット・ルビーレッド」
セーラー「プロフェッショナルギア・ミニ」
などを、それならこちらでいかがでしょう、とお伝え申すのだが、
「……」
メガネをちょいと押し上げたりする仕草はしてくださるものの、レンズの奥の瞳はつまらなそうである。で、結局、こりゃ、もう駄目だ。困った時のペリカン頼みとばかりに、
ペリカン「M320グリーン」
ペリカン「M400ホワイトトータス」
ペリカン「M400赤縞」
をおそるおそるお答えしてみたら、
「あぁ、やっぱり…そうなっちゃうんですねぇ。みなさん、同じものを…」
みなさん? うんっ? あ、そういうことか、これまでに何人かの人に同じ質問をぶつけてきたんだなぁ…。悪かったヨ、期待に応えられなくて。
こいつならきっと何やらまだ誰も指摘していない素敵な万年筆を教えてくれるに違いないと接触してきてくださったのに、私はその期待に応えることができなかった。“わたしたちのバッグのなかに入れておきたい万年筆”なんていう特集記事の企画がボツだワ…というメッセージがありありと伝わってきて、麗しいインタビュアーのお顔を拝見することなどできなくて、ただただ机に並べた自分の、傷だらけの、万年筆たちを見つめているほかはなかった。
心の端っこのほうにちっちゃなキズができたような気がして、南青山にある中国茶専門店「テホン」で燻製茶の名品『正山小種(ラプサンスーチョン)』を静かにいただきながら、そのちっちゃなキズを癒していたら、万年筆仲間がはいってきた。
「あはー、やっぱりここにいましたね」
「どうしたの?」
「いやぁ、相談にのってもらいたいんですヨ」
「相談?」
「ええ、女性用の万年筆を探しているんです」
おいおい、勘弁してヨ! そのテーマだけは。しかし彼はこちらの心象風景など知る由もなく、ニコニコしながら話を続けるのだった。
「実は、好きなコができましてねぇ。若いんです」
「何歳?」
「24です」
「へぇぇぇ。いくつ離れてるの?」
「15、いや16かな」
私の話の相手は独身である。未婚なのか結婚して離婚しているのかは知らないが。年の差の話のあと、眼がパッチリで綾瀬はるかチャン似だとか、唇が厚くてきっと情愛が深いなどなど彼女の魅力を御披露くださっていたのだが、私はコクの深いラプサンスーチョンを味わっていたので細かく覚えていない。
「それで?」
「アタシに似合う万年筆がほしい、なんてせがまれちゃって…」
「ペリカンのM400でいいんじゃない」
「いや、自分が生まれた頃の万年筆がほしいっていうんですよ」
「ん?」
面白いことを提案してくるコじゃないか。すこしだけ聞く耳を持ち始める私。
「っていうことは、何年頃につくられた万年筆になるんだ?」
「1983年頃のですね」
即座に私は回答した。
「ないな」
「ない?」
「ないね」
「そんな!」
「ないものは、ない」
「どうして」
「それはだな、1983年といえば、前年にペリカンの#500、今のM400の前身モデルが出たばかりだゾ。あの頃はどのメーカーも売れ筋商品が開発できないでいた時代なんだ」
「そんなぁ…」
ありゃりゃ! またまた、何だよ!せっかく頼ってきたのに…、という顔をされちゃった。今日はついてないや、厭なことが重なるときはホントに重なるもんだ。
このままじゃ、いけない。
態勢を立て直して記憶の引き出しをひとつひとつ開けていってみた。ビギニングオブオジイサンの私は、最近、思い出したいものが思い出せない。映画監督の名前、短篇小説が収められている全集の巻数、美酒銘酒の銘柄などなど…。もう少しやせていたころは即答できたのに。
でも、やっぱり、万年筆のこととなると、記憶の引き出しの奥の奥のほうにしまいこんでいたことでも、きちんと思い出すのだ。
「あるなぁ」
「ある!」
「うん。あるよ」
「さすが!」
「ただし、1987年でよければ、だけど」
「4年の差ですね、たいしたことない。で、どんな?」
「実物を見たらほしがるゾ! 君も」
「そんなに素敵な万年筆なんですか?」
「あぁ。見ないほうがいいかも。知らないほうがいいかも」
「見たい! 知りたい!」
「教えて、っていってほしいぃな」
「教えて!」
「わかったよ。とりあえず、今度『男の隠れ家ONLINE』で記事を書くから。写真もアップするから」
「お願いしますよ」
「あいよ!」
「なんとかクリスマスまでに探し出したいんです」
「あいよ!」
大きさや色合いなどから、
デルタ「ドルチェビータ・ミニ」(通称“沢尻エリカ モデル”)
モンテグラッパ「ミクラ」
アウロラ「フォーコ」
アウロラ「ミニオプティマ・バーガンディー」
モンブラン「ボエム」
モンブラン「グレタ・ガルボ」
などをご推挙申し上げてみたのだけれど、
「パッと見、決して悪くはないって思うんですけどぉ、率直に言ってぇ、お高いなぁっていうぅ印象が強くてぇ…」
などと言われてしまう。金額の割にデザインに惹かれないようなのだ。
女性用に限らず男性用だって、お手頃お値段で、見た目も中身もググッとくるような万年筆はめったにないのだ。彼女彼氏を探すときと同じでね…。
比較的買いやすいお値段の万年筆ということで、
パーカー「ソネット・ルビーレッド」
セーラー「プロフェッショナルギア・ミニ」
などを、それならこちらでいかがでしょう、とお伝え申すのだが、
「……」
メガネをちょいと押し上げたりする仕草はしてくださるものの、レンズの奥の瞳はつまらなそうである。で、結局、こりゃ、もう駄目だ。困った時のペリカン頼みとばかりに、
ペリカン「M320グリーン」
ペリカン「M400ホワイトトータス」
ペリカン「M400赤縞」
をおそるおそるお答えしてみたら、
「あぁ、やっぱり…そうなっちゃうんですねぇ。みなさん、同じものを…」
みなさん? うんっ? あ、そういうことか、これまでに何人かの人に同じ質問をぶつけてきたんだなぁ…。悪かったヨ、期待に応えられなくて。
こいつならきっと何やらまだ誰も指摘していない素敵な万年筆を教えてくれるに違いないと接触してきてくださったのに、私はその期待に応えることができなかった。“わたしたちのバッグのなかに入れておきたい万年筆”なんていう特集記事の企画がボツだワ…というメッセージがありありと伝わってきて、麗しいインタビュアーのお顔を拝見することなどできなくて、ただただ机に並べた自分の、傷だらけの、万年筆たちを見つめているほかはなかった。
心の端っこのほうにちっちゃなキズができたような気がして、南青山にある中国茶専門店「テホン」で燻製茶の名品『正山小種(ラプサンスーチョン)』を静かにいただきながら、そのちっちゃなキズを癒していたら、万年筆仲間がはいってきた。
「あはー、やっぱりここにいましたね」
「どうしたの?」
「いやぁ、相談にのってもらいたいんですヨ」
「相談?」
「ええ、女性用の万年筆を探しているんです」
おいおい、勘弁してヨ! そのテーマだけは。しかし彼はこちらの心象風景など知る由もなく、ニコニコしながら話を続けるのだった。
「実は、好きなコができましてねぇ。若いんです」
「何歳?」
「24です」
「へぇぇぇ。いくつ離れてるの?」
「15、いや16かな」
私の話の相手は独身である。未婚なのか結婚して離婚しているのかは知らないが。年の差の話のあと、眼がパッチリで綾瀬はるかチャン似だとか、唇が厚くてきっと情愛が深いなどなど彼女の魅力を御披露くださっていたのだが、私はコクの深いラプサンスーチョンを味わっていたので細かく覚えていない。
「それで?」
「アタシに似合う万年筆がほしい、なんてせがまれちゃって…」
「ペリカンのM400でいいんじゃない」
「いや、自分が生まれた頃の万年筆がほしいっていうんですよ」
「ん?」
面白いことを提案してくるコじゃないか。すこしだけ聞く耳を持ち始める私。
「っていうことは、何年頃につくられた万年筆になるんだ?」
「1983年頃のですね」
即座に私は回答した。
「ないな」
「ない?」
「ないね」
「そんな!」
「ないものは、ない」
「どうして」
「それはだな、1983年といえば、前年にペリカンの#500、今のM400の前身モデルが出たばかりだゾ。あの頃はどのメーカーも売れ筋商品が開発できないでいた時代なんだ」
「そんなぁ…」
ありゃりゃ! またまた、何だよ!せっかく頼ってきたのに…、という顔をされちゃった。今日はついてないや、厭なことが重なるときはホントに重なるもんだ。
このままじゃ、いけない。
態勢を立て直して記憶の引き出しをひとつひとつ開けていってみた。ビギニングオブオジイサンの私は、最近、思い出したいものが思い出せない。映画監督の名前、短篇小説が収められている全集の巻数、美酒銘酒の銘柄などなど…。もう少しやせていたころは即答できたのに。
でも、やっぱり、万年筆のこととなると、記憶の引き出しの奥の奥のほうにしまいこんでいたことでも、きちんと思い出すのだ。
「あるなぁ」
「ある!」
「うん。あるよ」
「さすが!」
「ただし、1987年でよければ、だけど」
「4年の差ですね、たいしたことない。で、どんな?」
「実物を見たらほしがるゾ! 君も」
「そんなに素敵な万年筆なんですか?」
「あぁ。見ないほうがいいかも。知らないほうがいいかも」
「見たい! 知りたい!」
「教えて、っていってほしいぃな」
「教えて!」
「わかったよ。とりあえず、今度『男の隠れ家ONLINE』で記事を書くから。写真もアップするから」
「お願いしますよ」
「あいよ!」
「なんとかクリスマスまでに探し出したいんです」
「あいよ!」






