文房具界隈の移ろい(後編)
では具体的に、日本の文具関連サイトの何が優れていたかと言いますと、まず筆記具や文房具のどのような点をユーザーが評価しているかが的確に表現されていたこと。カタチや色、機能など、ユーザーならではの見どころや楽しみ方を伝えていたこと。それと、メーカーへの改善提案が明示されていたこと。などです。単にコレクションの公開ではなく、製品を愛し、ちゃんと使っている、ユーザー視点の情報がサイトで示されていた点が評価できると思うのです(残念ながら多くのサイトは、現在では閉鎖または更新の停止をしています)。
こうした個人サイトの効果は表立って語られることはありませんが、文房具の世界に少なからず影響を与えていたのではないかと想像をしています。たとえば、メーカーにとっては、流通や小売店を一気に飛び越えてエンドユーザーの声を聞けるようになりました。いままでの開発方針が正しいか否かをダイレクトに知ることができます。小売店にとりましては、メーカーや流通からの提案とは違う、顧客側の要望や最新の商品情報をいちはやく入手する事が可能になりました。そしてなにより、ユーザー同士の情報交流や「思いの共有」を支えていたことも忘れてはなりません。個人サイトと、その後のブログへの繋がりは、20年前のシステム手帳の流行ほど顕著な形では見えないものの、ユーザーのパワーとして、文房具の世界に少なからず変化をもたらせたはずです。
ところでこの世界には、もうひとつの動きもありました。万年筆の輸入に携わる方々のご尽力です。戦後、筆記具の主役がボールペンに移ってしまい、次第に使われなくなってしまった万年筆。その楽しさや美しさを再び認知してもらおうと、関係する業界の人たちがメディア等に働きかけを行って、万年筆を表舞台へと連れてこられました。そのほか万年筆を愛する人達のからの直接・間接のバックアップもありましたし、変わった見方では、いま市販されているノート用紙の多くが万年筆での筆記にも耐える性能を持ち合わせるようになった効果もあり、ごく普通の人が万年筆を気軽に買って使うまでになりました。四半世紀前の日本の状況を思えば、現在のこの様子はとても凄いことなのです。万年筆はシステム手帳と同様に単価の大きい製品ですから、万年筆の復権は、小売店の活性化にもつながってきます。
近年では再び、文房具をテーマにした書籍や雑誌、ムック類が数多く出ています。紙メディアの多くは、個人のウェブサイトでは不可能であった取材力・編集力を持って、数多くの製品が集約され、美しい写真とともに掲載されています。他方、メーカーや小売店レベルで見聞きしたところ、企業ユーザーの後退による影響が大きいのか分かりませんが、売り上げ的に良くなったという話は、現時点ではあまり確認できませんでした。しかし文房具関連の書籍やムック類が、このようにほぼ継続的に送り出されている様子を見ると、個人ユーザーの範囲では文房具が趣味のひとつとして認知されているはずです。まあ、とにかく、それらの紙面を目にして、文房具ファンや業界にとっては幸せな時代だなと感じています。
さて、3回に渡って書かせていただいた「文房具界隈の移ろい」。これで最後になりますが、さきほど申し上げた「幸せな時代」とは、決して思いつきで出た言葉ではありません。これまでの流れを順番に見直してゆくと、ユーザーの興味も知識も深まっていますし、市場も着実に広がりを見せています。いつでもユーザーからの「引きの力」が生まれうる、ほどよく活性化した時期を迎えているように思えます。メーカーや小売店の提案次第ですぐに反応してくれる素地がそこに存在するということです。世の中の景気は残念ながら停滞気味ですが、丁寧に良い物や仕組みを提案してゆけば、かならずユーザーが受け止めてくれるものと、私は確信をしています。
【文房具に寄す】 これまでの記事
文房具界隈の移ろい(中編) (2008/07/03)
文房具界隈の移ろい(前編) (2008/06/26)
文房具の「好き」を明確に (2008/06/19)
「文房具に寄す」スタートします。 (2008/06/12)
こうした個人サイトの効果は表立って語られることはありませんが、文房具の世界に少なからず影響を与えていたのではないかと想像をしています。たとえば、メーカーにとっては、流通や小売店を一気に飛び越えてエンドユーザーの声を聞けるようになりました。いままでの開発方針が正しいか否かをダイレクトに知ることができます。小売店にとりましては、メーカーや流通からの提案とは違う、顧客側の要望や最新の商品情報をいちはやく入手する事が可能になりました。そしてなにより、ユーザー同士の情報交流や「思いの共有」を支えていたことも忘れてはなりません。個人サイトと、その後のブログへの繋がりは、20年前のシステム手帳の流行ほど顕著な形では見えないものの、ユーザーのパワーとして、文房具の世界に少なからず変化をもたらせたはずです。
ところでこの世界には、もうひとつの動きもありました。万年筆の輸入に携わる方々のご尽力です。戦後、筆記具の主役がボールペンに移ってしまい、次第に使われなくなってしまった万年筆。その楽しさや美しさを再び認知してもらおうと、関係する業界の人たちがメディア等に働きかけを行って、万年筆を表舞台へと連れてこられました。そのほか万年筆を愛する人達のからの直接・間接のバックアップもありましたし、変わった見方では、いま市販されているノート用紙の多くが万年筆での筆記にも耐える性能を持ち合わせるようになった効果もあり、ごく普通の人が万年筆を気軽に買って使うまでになりました。四半世紀前の日本の状況を思えば、現在のこの様子はとても凄いことなのです。万年筆はシステム手帳と同様に単価の大きい製品ですから、万年筆の復権は、小売店の活性化にもつながってきます。
近年では再び、文房具をテーマにした書籍や雑誌、ムック類が数多く出ています。紙メディアの多くは、個人のウェブサイトでは不可能であった取材力・編集力を持って、数多くの製品が集約され、美しい写真とともに掲載されています。他方、メーカーや小売店レベルで見聞きしたところ、企業ユーザーの後退による影響が大きいのか分かりませんが、売り上げ的に良くなったという話は、現時点ではあまり確認できませんでした。しかし文房具関連の書籍やムック類が、このようにほぼ継続的に送り出されている様子を見ると、個人ユーザーの範囲では文房具が趣味のひとつとして認知されているはずです。まあ、とにかく、それらの紙面を目にして、文房具ファンや業界にとっては幸せな時代だなと感じています。
さて、3回に渡って書かせていただいた「文房具界隈の移ろい」。これで最後になりますが、さきほど申し上げた「幸せな時代」とは、決して思いつきで出た言葉ではありません。これまでの流れを順番に見直してゆくと、ユーザーの興味も知識も深まっていますし、市場も着実に広がりを見せています。いつでもユーザーからの「引きの力」が生まれうる、ほどよく活性化した時期を迎えているように思えます。メーカーや小売店の提案次第ですぐに反応してくれる素地がそこに存在するということです。世の中の景気は残念ながら停滞気味ですが、丁寧に良い物や仕組みを提案してゆけば、かならずユーザーが受け止めてくれるものと、私は確信をしています。
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文房具界隈の移ろい(中編) (2008/07/03)
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文房具の「好き」を明確に (2008/06/19)
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