オトコの定番

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2008/07/03

文房具界隈の移ろい(中編)

私が見た・感じた範囲で綴る「文房具界隈の移ろい」。書きたい事が増えてしまい、今回は中編です。

1980年代から勢いを増した輸入雑貨製品と時を同じくして、日本で目にする海外製文房具の数も徐々に増えてまいりました。しかし、これら製品ひとつひとつの動きを見てみますと、当時はショップ単位、売り場単位でスポット的に輸入されるパターンがも少なからずあったようで、商品は売り切りで終了。今でこそ有名な銘柄でも、当時では継続的に販売される事例はあまり見られませんでした。どちらかと言いますと「雑貨の添え物」的な位置づけです。これは、文房具が輸入の手間やリスクに対し利幅が少なく扱いづらかった製品であったことや、そもそもユーザー側に輸入文房具を引っぱる力があまり無かったことなどが原因ではないかと私は考えています。

早い話が、そういった市場が確立していなかったわけです。例えば、今でこそカジュアルな万年筆のスタンダードのひとつとなっているラミー社のサファリ万年筆は、25年近く前、すでに都内の文具店に並んではおりましたが、来店した人だけが気付いて買ってゆく地味な存在でした。海外製文房具を扱ったお店や売り場が出来ては消え、商社や代理店が頻繁に入れ替わる。つまり、全体では輸入雑貨増大の大きな流れがありながら、文房具について言えば、この流れに乗れない時期が長く続いたのでした。

ところで当時、文房具についての情報源は、紙メディアが中心となっていました。

なかでも、文房具のハードウェアが持つ奥の深い魅力と、文房具を趣味として捉えることの素晴らしさを世の中に示してくれたのは、中央公論社のムック「世界の文房具」や「文房具の研究」が最初であったように思います。これらは、紙面づくりや製品の捉えかた等で、以降の文房具や筆記具を取り扱ったメディアの基本形を作り上げたと言えます。

書籍「文房具の研究」表紙
中央公論社「文房具の研究」
(写真は文庫版)
 
そのほか、文房具や電子ツールとビジネスとのつながりを説いた雑誌「月刊BOX」(ダイヤモンド社)は、バランスの良い紙面レイアウトも含め、現在のモノ系を扱うメディアの源流のひとつであったと確信していますし、システム手帳の活用をテーマにした「リフィル通信」(アスキー社)は、「手帳を研究する」という考えかたを私たちに知らしめたものでした。多くの皆さんがご存じの、モノマガジン(ワールドフォトプレス社)で繰り広げられた文房具の特集記事や、マニアックなところでは文房具専門誌「B-TOOLマガジン」(ナツメ社)なども出て、紙メディアがこの時期に、日本の文房具ファンを着実に育て、増やしていったのは間違えありません。

こうした紙メディアが盛んとなった時期の後半、まったく新しい媒体が生まれてきました。パソコン通信です。もちろんインターネット以前のものです。電話機の後ろ側に大きい(なのに低速の)モデムをつなぎ、大手企業が主催する電子会議室にアクセスし、文字情報だけでコミュニケーションを取るというもの。今から思えばきわめて「か細い」通信環境ながら、文房具ファン同士が時間や距離に制約されず対話できる貴重な場となりました。またパソコン通信のおかげで、世の中に同じ思いを持つ人が居ることを知る機会にもなりました。

さてその後、世の中にインターネットが普及し、ユーザー間の情報交流に、そして文房具の流通にも大きな影響が及んでくるわけですが、続きは次回の後編にてお話をさせてください。





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