クロノグラフの雄、バルジューの系譜
数多くの時計メーカーにクロノグラフのムーブメントを提供し続けたバルジュー。自社ブランドを持たなかったこの専門メーカーを抜きにして機械式腕時計は語れません。

柔らかい輝きは放つスターリング・シルバー製ケースに身をつつんだクラシカルな佇まいのクロノグラフ。ブルースチール製の繊細な針、オニオン型のリューズ、文字盤のギョーシェ彫り等スイスの伝統に忠実なこの腕時計は、ジャッケ・エトアールのシルバーストーン72です。
ドイツの時計師クラウス・ヤコブ氏が、交換パーツすら入手困難な過去のムーブメントを発掘してオリジナルの腕時計「ジャッケ・エトアール」を作り始めたのは今から10年程前、日本国内で注目され始めたのは2000年頃のことです。このモデルにはバルジュー社が60年代に製造した希少なキャリバー72を搭載しています。
デッドストックのムーブメントとそれに見合う古典的な外装を備えたこの腕時計の購入に躊躇することはありませんでした。丸みを帯びた小振りなケースを見れば、そもそもケースというものはオーバー40ミリのデカ厚時計の豪奢なデザインを形成するためではなく、精密なムーブメントを包み込みためのものであることを実感します。

現代のムーブメントにはないメカニズムの妙味が味わえることから、未だにこうしたオールドストックを使った限定モデルが後を絶ちません。既に世界中のどこを探してもキャリバー23/72系のストックは底を尽いたようですが、今年は後継機種のキャリバー92を搭載したモデルが一部の高級メーカーから発表されました。コストダウンした当時の中級機でありながらも、これらの限定モデルの価格は200万円を優に超え、オールド・バルジューの希少性が増していることがうかがえます。

クロノグラフを専門とするバルジューが創業したのは1901年と古く、懐中時計用のムーブメントには後に全盛を極めるキャリバー23/72系レイアウトの片鱗を見ることができます。1916年に開発された腕時計用の2レジスターの基本キャリバー23に始まり3レジスターの72、ムーンフェーズとカレンダーを備えた88まで、バリエーション豊富なこのラインは基本性能に定評があり、多くの時計メーカーが好んで採用しました。





