個性派モバードが手掛けたクロノグラフのディテール
60年代、「ミュージアムウォッチ」の発売で腕時計モダニズムの先駆者となったモバード。アメリカ人のデザイナー、ネイサン・ジョージ・ホーウィットによる、一面ブラックの文字盤に唯一12時位置にゴールドのドットを配置したデザインは一斉を風靡し、MOMAニューヨーク近代美術館の永久所蔵品にも選ばれました。エスペラント語で「ムーブメント」や「モーション」という社名のとおり常に先進的な時計メーカーでした。

機械式クロノグラフにおいても、モバードは40年代から60年代にわたってオリジナリティーにこだわった独自のクロノグラフを作り上げました。一見クラシックなスタイルの中にミッドセンチュリー・モダンな味付けが効いています。
風貌ガラスを固定するベゼルには、段差があり立体感を持たせてあります。ステップド・ベゼルと呼ばれるこの意匠はモバードの腕時計によく見られます。この時代の特徴であるクサビ形のインデックスに、12時位置だけアラビア数字にするのはモバードのセンスなのでしょう。
特に、サブダイヤルのウネウネした計測針は、9時位置の秒針と差別化するという機能的な一面とともに、遊び心も感じられます。このようなサーペント(蛇)スタイルの針は、現代のアーティスティックなアラン・シルベスタインやフランク・ミュラーにも見ることができます。

写真では文字盤の色褪せがやや効きすぎている感もありますが、実物はなかなかいいアメ色に焼けていて、赤みがかった明るいブラウンのレザーストラップが良く似合います。現代では小さめの直径35ミリのサイズも、着け心地は抜群で厚みのあるステップド・ベゼルが腕上で存在感を増してくれます。





