オトコの定番

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2008/06/25

個性派モバードが手掛けたクロノグラフのディテール

1881年創業と歴史のあるモバードは、早くから自社で一貫生産していたため、この手巻き式キャリバー95Mにも独創性があります。

キャリバー95M
レマニア製クロノグラフのブリッジモバードの銘が刻まれた特徴的なブリッジはサイズが大きく、安定度と耐久性を増しています。一般的なY字型のブリッジ(右の写真)が心細く見えてきます。レバー類はどれも太く頑丈で、固定するネジもこれまた大きいことがわかります。

そして、最大の特徴はメンテナンスが容易である点です。通常はブレーキや中間車、リセットハンマー、更にそれを動かすレバー類が複雑に重なりあっているものなのですが、テンプの上のスペースを有効に使うことで、パーツのレイアウトに余裕を持たせているのです。おかげでテンプがほとんど見えなくなってしまっていますが、精度を調整できる程度のスペースは一応空いています。

このような点から傑作として誉れ高いキャリバー95Mですが、手放しで絶賛することはできない点もあります。それは操作性です。ストップウォッチのスタートとストップが下のボタン、リセットは上のボタンで行うという、通常のクロノグラフの操作とまったく逆なのです。さらにボタンをしっかり押し込まないときれいにリセットできない特性もあります。明らかに、独自レイアウトと、複数のレバーを介して伝達する工夫がもたらした弊害だと考えます。しかし、耐久性やメンテナンスを重視した設計だからこそ後世に残り、他にはない個性的なメカニズムが今なお魅力を増しているのです。


後にモバードはゼニスと革新的な自動巻きクロノグラフの開発に着手します。
60年代当時のゼニスは、ユニバーサルのクロノグラフを製造していたマーテル社を傘下に収めていました。既にこのクロノグラフは30年代に溯る旧世代の設計だったとはいえ、マーテルは高い生産能力を有していました。一方のモバードは、三針のキングマチックに搭載する高振動キャリバー405系を開発中で、自社製クロノグラフで培った開発力を持ち合わせていました。

ゼニス エルプリメロ
これらが歴史的なクロノグラフ3019PHCに結実したのです。秒10振動を誇る世界で唯一の自動巻きクロノグラフは「エルプリメロ」と呼ばれ、40年経った今もゼニスのフラッグシップとして燦然と輝き続けています。


現在、アメリカ資本となったモバードはニュージャージーに拠点を置いています。コーチやヒューゴ・ボス、ラコステ、トミーヒルフィガーのファッションウォッチを製造し、異色のマニュファクチュールとして名を馳せていた面影はありません。ところが、2008年、グループ傘下のコンコルドが本格的な機械式時計の分野に戻ってきました。薄型のラグジュアリーウォッチを得意とするコンコルドが、トゥールビヨンやクロノグラフを発表したのです。同じグループのエベルは機械式クロノグラフに定評があります。原点回帰の今、モバードから往年のクロノグラフの復活を心待ちにしている愛好家は少なくないでしょう。





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