今こそ、こだわりの機械式ヴィンテージ
ここ数年、時計業界では古典を範とした新作や復刻モデルの発表が続き、まさに原点回帰の動きを見せています。そういう意味で過去の名品にも注目が集まってきています。古い腕時計は、壊れやすい、扱いにくい、正確ではない、といったイメージがあると思います。たしかに長い月日を重ねているので品質にばらつきが出てきますが、それを持ってしても余りあるほどの魅力がヴィンテージの腕時計にはあるのです。

40年代から60年代にかけて作られた機械式腕時計のヴィンテージ。その魅力は、現代のモデルでは味わえない雰囲気と、何十年も正確に時を刻み続けるメカニズムにあります。
ヴィンテージの腕時計は、機械式時計が嗜好品である現代と違い、そのほとんどが時間を知る道具としてあくまでも控えなスタイルです。工業製品とはいえ、当時は手作業で仕上げられていたので、整えられたエッジを持つケースや夜光塗料の盛り上がりには、手間を掛けた質感が感じられます。長い月日を重ねたケースは鈍い輝きを放ち、古き良き時代の佇まいを楽しむことができます。
アンティーク・ショップに並べられたこの一本一本は、事実上一点ものです。現在は生産されていないのはもちろん、メーカーすら存在していない希少な逸品を見つけることもできます。同じモデルであっても文字盤の焼け具合やケースの色合いまで雰囲気はそれぞれ違ってきます。そんな中から自分だけの一本を選ぶ楽しみがあるのです。
実際に手に取って、ゼンマイを巻いてみると、その魅力に一層惹きつけられることでしょう。
昔の腕時計のゼンマイは柔らかいので、手で巻き上げる感触が優しいのです。巻き上げる時のカリカリというクリック感とゼンマイの軽い反発力は、手巻き式を敬遠しているクオーツ時計や自動巻き愛用者に新鮮な感動を与えてくれるはずです。

ここで、懐中時計時代からのゼンマイの巻き方の基本スタイルを紹介します。リューズを親指と人差指でつまみ、ゆっくり上方向に巻き上げた後、同じだけ逆方向に空回しします。この上下上下の操作を繰り返しながら、ジーコジーコとゼンマイを巻くのが通です。
この下方向の空回しには意味があります。巻き上げる時に僅かに巻き戻りを感じるはずです。これはゼンマイがほどけようと逆回転しているのですが、実際にはコハゼという爪ですぐに逆回転が止まります。このわずかな間の反発を、機械に無理がないよう手で戻してやるわけです。








