ユニークな8日巻き腕時計、ヘブドマス
前回に引き続きインパクトのある時計を紹介します。懐中時計を思わせるルックスが独特なヘブドマスの8日巻き腕時計です。

聞きなれないヘブドマスという名前。今から120年前、8日間動き続ける世界初の懐中時計を世に送り出したメーカーです。「ヘブドマダ」がギリシャ語で「1週間」を意味するように、このムーブメントの商標が、そのまま社名となったのではないかと思います。かのオメガも、1894年に開発した究極のベースキャリバーをギリシャ語の最後の文字「オメガ」と名づけ、それがそのまま現在の社名となったのです。
ヘブドマスの8日巻きムーブメントは、その後、約100年もの間、製造され続けましたが、残念なことに90年代に製造中止となりました。この腕時計は、その歴史的ムーブメントの貴重なストックを使って、古典的な懐中時計のイメージをそのままに腕時計として蘇らせたものです。

古めかしいルックスは、腕時計というよりも工芸品として見る者の目を愉しませてくれます。
アシンメトリーの文字板には、珍しい琺瑯(ほうろう)が用いられています。琺瑯とはガラス質の上薬を焼成したもので、手間がかかる上に製造も難しいため、今ではほとんど見かけなくなった伝統技法です。左側には、時計の心臓部のテンプが見え、両側のブリッジには緻密なエングレービング(彫刻)が施されています。温かみのある白い文字盤に実に良く映えます。オニオン型のリューズやレザーストラップを固定するヒンジも、こうした古典的な魅力を一層引き立ててくれています。
このようにムーブメントの一部が表から見えるのは、今では珍しくないどころか、機械を見せるという安易なデザインの常套手段となっています。しかし、ヘブドマスがテンプを前面に配置したのには理由があります。









