【嗜むための三十本目 スペイサイド編 バルミニック】
ヘザーハニーや麦芽の甘さ、蜂蜜、ジンジャーの香り、オイリーでコクがあり、熟成年数以上にリッチな味わい。
19世紀初頭、スペイ川とエイボン川に挟まれた田園を抜け、山深いトミントゥールの谷から15キロほどいくと、スコットランド独立を謳った勇士達がイングランド軍に最後まで立ち向かったホーズ・オブ・クロムデイルの谷がある。
敗戦の悲劇は「ホー・オブ・クロムディル」という地元の民謡にも歌われいる。
ホーはゲール語で「河岸台地」と呼ばれ、スペイ川上流の沖積平野で、クロムディルの丘から幾筋もの小川が流れ、スペイ川本流に注ぎ込んでいる。このクロムディルの谷にジェームズ・マクレガーが建てたのがバルミニック蒸溜所だ。

この蒸留所は1824年に認可を受けるまで非合法の蒸留所であった。へクロムディル一帯はもともと、密造酒造りのメッカでもあった。
ジェームズ・マクレガーの子孫でサー・ロバート・ブルース・ロッカートという著述家が執筆した『スコッチ(Scotch)』(1951年著)という本の中に、認可を受けるときのいきさつを書いた箇所がある。要約すると
「ある日、税吏がマクレガーの農場を訪ねると盛大なる歓待を受けた。ふと庭を見ると、不振な小屋が目に入った。税吏があの小屋は何をする小屋かとマクレガーに尋ねと、ピート小屋だとマクレガーは答えた。酒宴は大いに盛り上がり、帰る間際に税吏はそっとマクレガーに耳打ちし、「あのピート小屋のために免許を取りなさい」と言い残して、その場を去ったそうだ。




