【嗜むための六本目 スペイサイド編 カードゥ】
スペイ川の西側、国道B9102を東に進むと小高い丘にこの地域で一番古い蒸留所が見えてくる。それがカードゥ蒸留所である。
昔からこの場所に居を構えていたいう。見通しの良い場所で遠くからキルンを見ることができる。この蒸留所を創設したのは小作人であったジョンとヘレンというカミング夫妻が、当時違法であった密造酒を造り、キッチンの窓から密造酒を売っていたという、密輸の時代にまで遡る。
見通しの良いところに蒸留所があったせいか、彼らは3度も検挙されたという。この時代ジョンの妻、ヘレンが優秀なウイスキーの作り手であったことは安易に想像できる。なぜならば当時、田舎の蒸留所では女性が蒸留の全責任を負っていたという伝統が古くからあり、スコッチの歴史には度々、著名なウイスキー職 人 が現れる。
ヘレンは税収官がやってくる度に、巧みな話術と、ごちそうを用意して接待し、ジョンが逃げるための時間稼ぎをしたという伝説を残している。またヘレンは税収官がくる度に、峡谷の上の方にいる密造酒の製造人に知らせるために赤い旗を振ることが役目でもあった。カミング夫妻は1824年に正式に政府に登録してウィスキー作りを始めた。
カードゥを有名にしたのは、カミング夫妻の息子、ルイスの妻エリザベスだった。1880年代エリザベスは蒸留所を拡張して、その時古いポットスチルを新しく建てたグレン・フィデック蒸留所の設備を探していたウィリアム・グラントに売却した。エリザベスは見事な経営手腕を発揮し、カードゥ蒸留所の発展の礎を築いた。カードゥの生産するウイスキーはジョニー・ウォーカの原酒として1893年に採用され、カードゥの名声はエリザベスのおかげでさらに高まった。
当時エリザベスは「モルトウイスキーの女王」と呼ばれていた。ヘレンとエリザベスという二人の女性の活躍によってカードゥが人気を博したせいか、カードゥには華やかなイメージがある。ウイスキー自体はチョコレートにオレンジを加えた香りが立ちこめ、独特なヒースの草の香りをまとっている。ボトルのデザインもどこか女性的だ。






