酒・食・名店

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2007/05/11

お酒と料理の相性は絶対的じゃない<その3>

よく見かける図なのだが、縦軸と横軸に線を引いて、味の濃淡、風味や香りの強弱を4つのクラスターに分け、そこに相性のいい酒と食を当てはめているものがある。

例えば熟成タイプのお酒には和食料理でいえば うなぎの蒲焼、鯛のあら煮、豚の角煮、鯉の甘煮と記され、香りの高いタイプのお酒にはスズキや鮎の塩焼き、山菜てんぷら、平目のこぶじめ、あなごの白焼きといった料理が当てはめられている。
どれも相性が良さそうで、私もお酒と一緒に食べてみたいものばかりだ。

「似たもの同士」という諺がある。
酒と料理もこれに似た事が言え、甘い料理には甘いお酒、辛い料理には少し辛めのお酒なんかが合う、ともいえるだろう。
だが、そんな事は当たり前といえば当たり前で、どこまでも目安にしか過ぎない。
いちいちクラスター分類するほどのものではないと思うのだ。

というより、人間の味覚は官能であり、極めて個人的で好みの問題となり、一見、科学的に見える普遍的な分類は出来ない、といっていい。と同時にさらに問題となるのは、一度分類してしまうと、相性の合うもの以外の組み合わせに対して、こんどは合わないという考えが発生してしまうからだ。

熟成タイプのお酒に塩辛をあてにして飲(や)ると、私は充分美味しいと思うのだが、その分類を信じるプロの人たちは合わないからやめた方がいい、と助言してくる。

美味しく飲み食いするなら分類にのっとった相性のいいもの同士で飲(や)るのがいい、という訳だ。

とんでもない話である。

私自身もっと個人的に言わせてもらえば、自分が飲み食いするのに何を飲んで、何を食べるのがいいか、を他人に教えてもらいたいなど考えた事がない。

自分の好きなように勝手に飲(や)りたいだけだ。

仮りに今飲んでいるお酒とその料理が合わなかったとしてもそれはそれでいい。失敗は成功の元である。すでに先人が教えてくれている。

「武者くん、でもね、僕ぐらいの年になると食べられる回数も限られてくるから、やっぱり美味しい物だけ食べるようにしているんだ」。

以前、服飾評論家の故石津謙介さん(元VAN社長)はそう言って私を美味しい店に何度か連れて行ってくれた。感謝もしているが、石津さんの言は当然である。
が、石津さんだから言える言葉であって、若い連中の場合、少し違うんじゃないか、と思うのだ。
(この稿つづく)





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