酒の旅人<6>
本蔵へ戻る。出羽桜の蔵は何度か見させてもらっているが、その度に感心するのがビン火入れだ。絞ったお酒をすぐビン詰めするのだが、その際、ビンのまま熱湯の容器に入れ加熱殺菌する。65℃で1分間、6本P箱を順繰りに移動させながら、手作業が繰り返される。
さらに面倒なのは加熱殺菌後、すぐ冷やしていくため、別の容器に移さなければならない。P箱を持ち上げる作業だけでも重労働だ。これを1日フル稼働させると1升ビンでおよそ2000本処理できる。通常、火入れ作業は蛇管やプレートで過熱しながら殺菌していくが、これだと手間はそれほどかからない。なぜビン火入れにこだわるのか。絞ったばかりのお酒の風味が損なわれないからである。最近、この方式のビン火入れが見直され、小さな規模の蔵へ行くとよく見かける作業だが、出羽桜はこれをもう20年以上前から淡々と続けている。出羽桜が消費者に支持されている、大きな要因と私は強く思っている。

もう1つの出羽桜人気のヒミツは蒸米の処理だ。甑で蒸した米を放冷後、エア・シューターにかけて運ぶのではない。蔵人が木桶を肩に担いで何往復かして所定のところに運んでいく。全量この方式をとっているので大変な労働である。なぜ、こうした作業にこだわるのか。これも明解である。せっかく外硬内軟に蒸した米をエア・シューターで運ぶ事によって蒸米をつぶしかねないからだ。人間の手作業が必要な部分は妥協する事なく徹底する。名酒・銘醸蔵といわれる蔵のこれは共通のポリシーといっていい。




