酒・食・名店

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2008/01/12

醪の表情、醪の声

以前、山形県の親しくしている蔵で5,6日間だったけど、杜氏蔵人たちと寝食を共にした事があった。夜中、杜氏が私を仕込蔵へ連れていった。醪がすでに10本ほどになっていて、昼間みた時には気づかないほど醪の香りが漂っている。

杜氏は1つ1つのタンクをのぞきながら醪の様子を見入っていたが、私は仕込蔵の隅でじっと耳を澄ませていた。ブツブツプツプツ、ブツンプツン、プツンブツン・・・・・醪の声がシーンと静まり返った蔵内で時に合唱でもしているようにリズミカルに、また乱れて騒々しく声を立てているのだった。こんな音は昼間ではよほどでない限り聞きとれない。
 当然の如く、仕込蔵は凍てつくように寒いのだが、香りと音の心地よさにしばらくここにしゃがんでいたかった。
 
「醪はそれだけじゃない。表情もあるんだ」杜氏はそういってそれぞれのタンクをのぞいて見ろ、と言った。
 そう、醪の表面の泡がそれぞれ違うのである。始めは三段仕込みの最後の留添えを終えて数日も経つと軽い「水泡」が全体を覆ってくる。さらに「カニ泡」になり、泡はだんだん濃さを増し岩のように盛り上がってくる。これが「岩泡」で、その泡がきれいにキメ細かく濃厚になると「本泡」に変わっていく。






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