絶品の揚げ蕎麦がきに舌鼓を打ち、風味豊かな「階上早生」の十割粗挽き蕎麦を味わう
独学ではじめた蕎麦屋さんは発想が豊かだ。粗挽きの2種をはじめとする蕎麦、手作り豆腐料理、そばがき・・・個性的な蕎麦と料理を味わうには何度も通わなければならないだろう。
「我のみの 柴折りくべる そば湯かな 蕪村」蕪村と一茶の俳句が端正な字で書かれ、壁に飾られている。小さな半紙には川柳。窓の障子には百人一首。これだけ書に囲まれた店は珍しく、独特のゆったりとした空気感が流れている。
「純手打ち 十割そば 蕎澤」は開店して9年。ご主人の澤村富夫さんは蕎麦打ち体験がきっかけで、蕎麦に惹かれたという。
「蕎麦打ちを始めたら面白くて、なんとなくやれそうな気がして・・・。でも、蕎麦屋になろうと思ってからが大変でした。店をはじめてから、ここで修業したようなものです」
蕎麦屋さんの場合は修業しなくても、よい蕎麦を打っているケースが少なくない。生まれながらにセンスを持っているのであろう。デザイナーだった沢村さんもその1人といえる。
開店当初から自家製粉。現在は青森産の「階上早生(はしかみわせ)」という品種を使っている。「色が黒くて、味が濃いのが特徴。気に入っています」
「盛りそば」(写真)は丸抜きから自家製粉。12メッシュで篩った粗挽きを細打ちにした蕎麦は、香りがあって、穀物の味がする。噛むとフワッと口の中で溶けるような食感があった。ご主人によればこの日の蕎麦は「ちょっと弱い」という。夏の暑い時期はどうしても蕎麦の状態が悪くなる。
しかし、十割特有の食感が楽しめて、これはこれでよいと思う。
「田舎盛り」は玄蕎麦から挽いた「玄挽き」。24メッシュのフルイで篩った。少し太めで色も濃い。細打ちの「盛りそば」よりもさらに粗挽きに感じる。おととしから、田舎は発芽した蕎麦を使っている。
「雑誌で発芽蕎麦のことを知って研究しました。蕎麦を洗って一晩発芽させ、1ミリくらいの芽が出たものを乾燥させて使っています。発芽させたほうが、味が濃厚になりますね」
たしかに、味、香りとも細打ちよりも濃厚、もっちりとした歯ごたえは発芽させた成果だろう。




