八ヶ岳産・信濃1号の“野趣”を愛する脱サラ蕎麦職人の、十割セイロと手挽き蕎麦がきを味わう
ちょっと足を延ばして埼玉県深谷のお蕎麦屋さんへ。そこには信濃1号にこだわって十割蕎麦を打つ脱サラのご主人がいた。しばしの蕎麦談義は楽しく、遠出した甲斐があったというもの・・・。
看板がなければ見過ごしてしまいそうだった。隣の建物の陰に隠れるようにして、竹林に囲まれた蕎麦屋さんがあった。クリーム色のシンプルな外壁。中に入ると木をふんだんに使い、天井の梁が剥き出しの山小屋風だ。
3方に開けられた窓からは竹林や木々の緑、放し飼いの鶏が見えて、そこだけ山里の風景が広がる。
これはもう、ゆっくりと蕎麦前でも頼みたい雰囲気である。ところが、
「駅から遠いので車で来るお客さんが多く、残念ながらお酒を飲む方は少ないですね」とご主人の根岸昇司さんは言う。
酒を飲まなくても蕎麦だけでも十分楽しめる店であることはたしかだ。「セイロ」と「甘味粗挽きそば」に加えて、日曜・月曜限定の「田舎」。3種類の十割蕎麦を用意してある。
ここの特徴は何と言っても八ヶ岳産の信濃1号。同じ信濃1号でも、八ヶ岳産がよいそうで、たとえば松本近郊になるとサッパリとして濃い味わいが少ないという。自家製粉ではなく、諏訪の高山製粉から石臼挽きした蕎麦粉を取り寄せている。何度も挽き方に注文を出した末に決定した蕎麦粉を使用している。
「のど越しの江戸前よりも、噛んで甘味と香りがある田舎に近い蕎麦が好きです。信濃1号はとくに好きな蕎麦。強烈な蕎麦の個性があって、上品というより野趣があふれている」
その「セイロ」(写真)を食べてみた。細打ちで、十割らしい、しなやかなコシがあって、噛むともちもち感もある。次第に甘味も出てくる。「甘味粗挽きそば」は八ヶ岳産信濃1号をメインに4種の蕎麦粉をブレンド。「田舎」は山形『あらきそば』を意識して、黒めの蕎麦粉を太打ちしている。
八ヶ岳産の信濃1号は製粉会社で挽いた蕎麦粉にしては、香りと味わいがあった。これなら自家製粉しなくても・・・という考えは理解できる。





