心地よい空間と心のこもったもてなしに酔い、十割蕎麦と蕎麦デザートをいただく。
大好きな秩父「こいけ」のお弟子さん、と聞いて以前から訪ねたい店だった。熊谷駅からバス・・・とアクセスはよくないが、店主夫妻の人柄がにじみ出るような店だった。

一歩足を踏み入れた瞬間からいい店だと感じた。玄関の引き戸を開けると京の町家のような細長い空間がある。
花や岩石などが置かれて、日常から異空間へと誘う結界の役割を果たしているが、かといって緊張感が漂うような凝った造りというわけではなく、ゆったりとした空気が流れている。
店内はテーブル席と、丈の低いテーブルが印象的な小上がり。全体にスペースをゆるやかに取った無駄な空間が、何とも言えず居心地がよい。
こういう店ではひとまず蕎麦前である。桜えびのお刺身はまだ入荷していなかった。ゴールデンウィーク前から6月いっぱいまで、11月〜12月には食べられるという。
代わりに平日の昼のみの、料理2〜3品プラスせいろ「藍」を。 写真のプレートは(手前から時計回りに)ニンジンの煮物、蕎麦団子、ヤーコンのきんぴら、セリと豆腐の和え物。小鉢は自家製豆腐。小川町産の有機野菜を使用。豆腐は大豆から作っているそうだ。昼酒でほろ酔いになったところで締めの蕎麦を頼む。ところで、ここでいつも問題が出来する。テーブルの上には料理や酒の器が所狭しと並べられて蕎麦を置くスペースがない。この状況をどう打開するか、である。
すると、この店の女将さんは蕎麦が来る前に酒肴の器を片付けて、盆も新しいものに取り替えてくれた。その動作がスムーズで自然の動きだった。食べ散らかしたあとがきれいになって気持ちがよい上に、茹でたての蕎麦をすぐに食べられた。当たり前のことかもしれないが、嬉しくなるような対応だった。にこやかな笑顔とさりげないもてなし。こういう女将さんは宝物である、と思う。
聞けば、ともに34歳のご主人・荻原清征さんと奥さんの真紀子さんはリゾートホテルに勤務しているときに知り合い結婚した。無駄なスペースを使った空間造りやもてなしに、ホテルマンとしての体験が生きている。





