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2008/04/13

SAKURAとフェラーリ

突然の春の嵐で露と消えた満開の桜を愛でることが叶わなくなった代わりに、今回、別のSAKURAを堪能する機会に恵まれた。

4月某日は結婚記念日、今年はちょうど10年目に当たるアニバーサリーの年である。気がつくとあっという間の10年、カミさんと知り合ったのもワインが取り持つ縁であった。ワインがもたらしてくれたのはカミさんばかりでなく、他にも様々な縁が、ワインを通してやって来た10年だったといえるだろう。良縁、奇縁、腐れ縁、様々な縁を経験したが、喉から手が出るほど欲しい「円」にはあまり好かれなかったようだ。

私は日頃から、これだ!と決めたモノやスタイルを頑なに愛用する習慣がある。父親から譲り受けた、頑固おやじの性質に恵まれているらしい。刻々と進歩する文明の利器やハイリターンの投資話には目もくれず、馬鹿のひとつ覚えのように旧弊を使い続けるのだ。だから商売が下手とよく言われる(笑)。

ホテル(宿)もそんな性格が幸い?して、ずっと同じところを利用する。いわゆる「定宿」というやつだが、ここと決めた宿はとことん使い倒す。そのうち、まるで自分の家に帰るが如くになってくるから、ますます離れられなくなるのだ。もちろん、定宿のハードルは高く設定しており、どこでもいいという訳ではない。小さな宿、田舎の宿、温泉のある宿、料理の旨い宿、よく眠れる宿、快適で清潔な宿、ワインが美味しく飲める宿、人好きなホストのいる宿、空気がきれいで星空が良く見える宿などなど、これらをキーワードに宿探しをしているが、これらが全て揃った宿というのはなかなか見つからない。至れり尽せりというのではなく、ほどよく放っておいてくれる距離感も大切だから、見張られているような緊張感のある宿もご免である。

私は、いわゆるクラシックホテルというやつに目がない。著名な建築家による設計のホテルは経年劣化に強く、単に古臭くなるだけの建物とは一線を画す。例えば、上高地の帝国ホテルに泊まるとそんな想いは一層強まったりする。めったに選ぶ(泊まる)ことのないのが比較的大きな宿(観光ホテル系)である。何が苦手かといえば、それは大宴会場であったり、カラオケ施設だったり、コンパニオンが出入りしたり、せっかく静かな環境を求めているのだから、賑やかなのは興醒めなのである。

上高地にはずっと前から泊まってみたかった。泊まるなら帝国ホテルと決めていたのだが、予約が簡単には取れず、泊まるチャンスがなかなか訪れないでいた。やっと平日に予約を入れられ、ちょうど紅葉が見頃の頃だから幸運であった。ここは全部で70ちょっとの部屋数があり、11月上旬の閉山まで殆ど毎日予約で埋まっているのだから大したものである。料金は決して安くない。室料と食事代は別々、朝飯も別。ワインも頼んだら二人で大台に乗る支払いが待っている。だけとそんなのは大した事ではない。観光客がどっと押し寄せる昼間の喧騒が嘘のように去り、静謐な雰囲気を取り戻す夕刻から本物のホテルの時間が始まるのである。その変化がたまらなく心地よい。昔から多くの人に愛され、時間というスパイスによって複雑な味わいの歴史を作ってきたクラシックホテルでしか味わえない、空間を隙間なく満たす何か、本物を本物たらしめている見えない意思を強く感じるのだ。

私が都内で定宿にしているのがホテル西洋銀座というところで、ここも70ちょっとの部屋しかない。開業から20年を経てほどよくヤレているというのもいい。同じ帝国ホテルでも都内にあるのは1000室を超えるようなマンモスホテルだから、求める理想のホテルとは相容れない。また、最近は外資系のホテルラッシュで、最新モードをまとったゴージャスな装いと手厚いおもてなしを売りにしているようだ。頑なに新しいものを排除する訳ではないが、古いものを使ってばかりいたのでは何も見えてこない。一度利用してみたいと思っているが、決して安くはないからなかなか食指が伸びない。何事も馴染むには時間を必要とするから、そうあわてて味わう必要もないだろうと思っている。






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