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2008/03/09

至福のデザート

おいしい食事を堪能したあとのひととき、それが長い昼あるいは夜が約束されているのなら至福のデザートワインと共に過ごしたくなる。

新宿から京王新線に乗ってひとつめの停車駅に東京オペラシティコンサートホールがある。オペラシティに行くのは今回がはじめて。京王新線に乗るまで駅の通路を散々歩かされるのだが、これなら新宿駅から直接歩いてもそう大差ないと知ったのは、夜遅くまで続いたコンサートが終わり、寒さと空腹を癒してくれる熱い味噌ラーメンが無性に食べたくなって、甲州街道を新宿方面に向かった時のことである。 

陽射しが春めいて気温の上がる日中の格好のまま、コンサートが終わった22時過ぎに表に出るとまるで真冬の寒さであった。薄着の僕は凍えそうになり思わずタクシーを目で追ったが、寒さと空腹を天秤にかけて、結局、そのまま新宿まで歩いてしまったのだが、やっと見つかったラーメン屋の味噌チャーシューの旨いことといったら、どんなに贅を尽した料理よりも美味しいと感じた。こんなふうに身体が幸せを感じる食事は久しぶりである。 

オペラシティのこの日の曲目は、聖トーマス教会合唱団、ゲヴァントハウス管弦楽団、ゲオルク・クリストフ・ビラー指揮による「J.S.バッハ:マタイ受難曲BWV244b(初期稿)」というもの。延々3時間にわたる長丁場の演奏とは思えない、夢か幻のような素晴らしい瞬間であった。幸せな時間は決して長くは続かない、まるで儚い夢のようだが、味わい尽くしてしまえばカタチとして残らない無形文化財はワインと似ていなくもない。 

おいしい食事や素晴らしい音楽を堪能したあとのひととき、それが長い昼あるいは夜が約束されているのなら至福のデザートワインと共に過ごしたくなる。満腹であることも忘れてしまうほど美味なデザートを伴侶とするもよし、食後酒をゆっくりと味わうもよし、シガーの芳香に身を委ねるのもよし。愉しみ方はいろいろとあるが、喜びを分かち合える相手が一緒であればもっといい。 

世界の3大デザートワインとはフランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイアスーエッセンシアと言われている。これらのワインに共通している事、それは下げられているプライスタグの桁の多さだけでなく、時に人間の一生を超える長命さ、そして最高のものを味わったという感動である。





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