海のミルク
独りワインを片手に隠れ家に篭る。今の季節だったら、鄙びた温泉宿で、雪見鍋と地酒も悪くないが、オイスターバーでシャブリというのはどうだろう。
私たち日本人の牡蠣食の歴史は古く先史時代にまで遡る。世界の牡蠣は約70種、そのうち日本には約20種が生息する。日本では、江戸時代からマガキの養殖が行われ、古くは、縄文や弥生の頃から干潟に杭を打ち、自然に付着したマガキを採取していたようだ。寛政10年(1798)に出版された「日本山海名産図絵」には、こんな興味深い一文がある。「播州・紀州・泉州などより出すものは大にして自然なり、味佳ならず云々..、広島に畜養ののち大阪に送るもの、皆3年生なり。故にその味過不朽の論なし」。各地の天然の牡蠣よりも、広島で養殖された3年ものが文句なしに美味だとする記述である。なるほど牡蠣もワインと同様、熟成によって価値が高まるものらしい。
牡蠣の養殖は西洋では紀元前一世紀頃の古代ローマの時代から、東洋ではそれ以前に中国で始まっていたともいわれる。牡蠣食は、牡蠣が美味なだけではなく、滋養豊かな自然食品という医食同源に由来する。実際、牡蠣は蛋白質が豊富。しかも、通常の食品では不足しがちな各種ミネラルを多く含み、その栄養バランスの良さは牛乳に匹敵するというからすごい。それが「海のミルク」と称賛される所以。
牡蠣は産卵のために大量の栄養が必要になり、これを体内に盛んに貯め込む。このグリコーゲンが旨味のもとなのだ。広島のマガキを例にとれば、栄養を貯め込むのは大寒から一か月くらい、とくに1月末から2月はじめにかけてが一番旨い。
英国ではRのつかない月の牡蠣は食うべからずと云われ、暦の月にRの文字がないのは5月から8月。その間の牡蠣は卵に栄養がとられて身が痩せ細るからだ。ただし、夏場に好んで食される天然のイワガキだけは例外。少し深い海の岩場に棲息するイワガキは、卵を持ってもあまり痩せないからである。元来は、冬の味覚のマガキも、南北に長い日本列島では産地によって、美味しい時期が異なる。加えて、昨今は養殖技術や冷凍技術が格段に進歩。養殖海域を時節で変えて水温を調節、産卵期を前後にずらすことで、マガキを美味しく楽しめる期間も長くなっている。
「生の牡蠣にはシャブリ」という有名な定説がある。これなどは、ワインスクールで習わなくでも半ば常識化しているが、10数年前のシャブリと今のシャブリとでは味に微妙な変化が生じている。確かに、ワインスクールで習ったばかりの頃に嬉々として出かけたレストランで、生牡蠣と合わせたシャブリは酸が生き生きとしており、その溌剌とした酸によって、合わせる料理無しでは辛いものがあった。しかし、近年のシャブリは酸がまろやかになり、生牡蠣ではなく、調理した牡蠣料理に合うようになっている上、料理がなくたって美味しい。
牡蠣の養殖は西洋では紀元前一世紀頃の古代ローマの時代から、東洋ではそれ以前に中国で始まっていたともいわれる。牡蠣食は、牡蠣が美味なだけではなく、滋養豊かな自然食品という医食同源に由来する。実際、牡蠣は蛋白質が豊富。しかも、通常の食品では不足しがちな各種ミネラルを多く含み、その栄養バランスの良さは牛乳に匹敵するというからすごい。それが「海のミルク」と称賛される所以。
牡蠣は産卵のために大量の栄養が必要になり、これを体内に盛んに貯め込む。このグリコーゲンが旨味のもとなのだ。広島のマガキを例にとれば、栄養を貯め込むのは大寒から一か月くらい、とくに1月末から2月はじめにかけてが一番旨い。英国ではRのつかない月の牡蠣は食うべからずと云われ、暦の月にRの文字がないのは5月から8月。その間の牡蠣は卵に栄養がとられて身が痩せ細るからだ。ただし、夏場に好んで食される天然のイワガキだけは例外。少し深い海の岩場に棲息するイワガキは、卵を持ってもあまり痩せないからである。元来は、冬の味覚のマガキも、南北に長い日本列島では産地によって、美味しい時期が異なる。加えて、昨今は養殖技術や冷凍技術が格段に進歩。養殖海域を時節で変えて水温を調節、産卵期を前後にずらすことで、マガキを美味しく楽しめる期間も長くなっている。
「生の牡蠣にはシャブリ」という有名な定説がある。これなどは、ワインスクールで習わなくでも半ば常識化しているが、10数年前のシャブリと今のシャブリとでは味に微妙な変化が生じている。確かに、ワインスクールで習ったばかりの頃に嬉々として出かけたレストランで、生牡蠣と合わせたシャブリは酸が生き生きとしており、その溌剌とした酸によって、合わせる料理無しでは辛いものがあった。しかし、近年のシャブリは酸がまろやかになり、生牡蠣ではなく、調理した牡蠣料理に合うようになっている上、料理がなくたって美味しい。




