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2008/02/10

頭の痛い価格上昇

ワインは難しい。ワインを究めようとすれば、おそらく一生を費やすことになる(それでも足りないかもしれない)。そして、ワインに向き合う姿勢はおおきく二つに分けられる。

ひとつはワインがもたらす楽しさだけを求めること。もうひとつは美味しさの裏にある“何か”を求めること。表面的な美味しさだけで満足しない者は、様々なワインを飲み進めていくうちにひとつの結論に達するのだ“お金がかかるという事に”(笑)。ワインの道は深く果てしないが、深く追求すればするほど、べらぼうに高いワインの購入費用に頭を悩ませ、挙句の果てには、飲み頃まで寝かすべきワインの置き場所にも困ることになるのだが..

価格上昇のメカニズム

ワイン愛好家の懐を直撃する、最近の価格上昇は、ワインショップとしても本当に頭が痛い。ひとりのワイン好きとしても頭痛の種になっている。ひと昔前なら30万円台で買えた、あの世界最高の赤ワイン「ロマネ・コンティ」が今では100万円の大台を突破してしまい、グレートヴィンテージものになると更に数割アップとなる。私がはじめてロマネ・コンティを飲んだのは、とはいえ、後にも先にもそれ一度だけだが、DRC最高級の出来の良さを誇った1985年モノであった。友人がアメリカのワインショップから直接取り寄せたそれはたったの30万円だったが、当時は、それでも高いと感じていたので、数人のワイン仲間でチビチビと堪能した次第。そして、大ぶりのブルゴーニュ・グラスで味わったそれは、まるで香りの洪水だった。どこまでも広がる花畑にいるような、それでいて深い森や険しい峰々が連なる大地から立ち昇る、すべてのフィネスを含んだ風味が口中と鼻腔いっぱいに広がる様に圧倒された。なるほど、この価格は伊達ではない。大枚はたいてやっとこの世界に到達できるのだなと。まるで臨死体験によって長くて暗いトンネルを飛び出した私の目の前に広がるのは、言葉を失う程の素晴らしく美しい、まるで天国そのものであった。とは多少大袈裟であるが、それ位に感動した。

その‘85年ものが今では200万円を超える。蔵出し間もない最新ヴィンテージものでも100万円を超える場合が多い。確かに、もう一度あの天国を味わえるのであれば、100万円なんて惜しくはないのかも知れないが、ワインの味わいがもたらす天国はあまりに儚い。凡百のワインが束になっても敵わないほどの持続性は備えているが、飲み終われば空瓶しか残らない。あとは記憶の奥深くに仕舞われるだけだ。それならカタチとして残る品物に変えた方が賢いかも知れない。例えばスイスの機械式時計だったりすると、左腕に輝くそれを愛でる度に幸せになれるというもの。女性だったらバックや宝飾品でもいい。飲めば消えて無くなるアルコール飲料にこの出費は辛い。カミさんががそれを知った日には三下り半を突き付けられても仕方ない。価格高騰の何と憎いこと。もう二度とロマネ・コンティの天国を体験することは敵わないのかと途方に暮れている。





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