アウトドア・スポーツ

2008/09/09

残暑の緑は蜜の味  山頂・清流アイロニング紀行 

秋を求めて山脈に分け入った9月初旬。
しかし依然として濃い緑は思いのほか蒸し、アイロンの蒸気で僕は更に蒸されるのだった。僕は山に色濃く残る夏を引きずったまま、大いなる自然と戯れた。やはり秋の訪れは思いのほか遠いのである。

9月。世間的な夏はすでに終わりを告げ、僕はまだ夏が色濃く残る、とある山脈に向かった。残暑と言われるこの季節だが、空に輝く太陽は一切の容赦なく僕の体を照りつける。時々山道を包む木陰がやけに気持ちいいが、それでも気温は30度。あたりでは騒々しく蝉が鳴き、しばし動きを止めた僕の脚には元気いっぱいの蚊が付きまとう。山は依然として夏を謳歌しているのだった。

今日の僕のバッグには直火対応可能なドライアイロンが入っている。今回登った山間には清流が流れているので、そこに流れる清き水をシャツに降りかけ、しっかりと濡らしてからアイロニングをキメようという魂胆である。手軽に山岳アイロニングをするなら、携帯コンロでの熱源確保と、直火アイロンの使用が最も手っ取り早いのだ。今回登る山は自宅からは結構遠い。しかし最近お気に入りであるマウントKPPである。ここは筑波山に次ぐ僕の山岳アイロニングにおけるトレーニングマウンテンなのだが、ここには今も静かにアイロニングが出来る環境が整っているので、現時点では名前は伏せさせて頂きたい。現在、波乗りでモモの付け根を怪我している僕は、この日はKEENの親指隠れサンダル履きにグレゴリーのディ&ハーフという軽装スタイル。僕は一歩ずつ噛みしめるよう山の緑を楽しみながら、かなりゆったりとした登山を開始した。


途中登山者にほとんど出会う事もなく、僕はのろのろと山頂に到着した。なんともいえない青い空が、とてつもなく近く感じる。どんなに低い山でも、山頂から見上げる空はとても近く、その青はとても深い色をしている。そこで深呼吸するだけで、僕は山の多くを手に入れるのだ。そんな余韻の中で、のろのろと携帯コンロでアイロンを温め、これまたのろのろとアイロン台を組み立てた。この山頂には清流はないので、ここでは持参したミネラルウォーターでシャツを軽く絞り、それでアイロニングをする。空の青、山の緑、そのすべてが濃い。そんなこんなで僕の気持もだんだんと濃くなり、その濃くなった思いを、ただ目の前にあるアイロンにぶつけるのだった。


山頂でのアイロン掛けは何度やっても本当に気持ちがいいし、その達成感もまたひとしおだ。しかもこの青空に、見渡す限りの夏の緑である。気分はまるで、偶然密に囲まれた、さぼり癖のあるダメな働きバチのようであった。今日も僕は残暑の緑に包まれつつ、その深い緑を見下ろしながら、山の蜜を体全体で吸い取った。





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