アウトドア・スポーツ

2007/12/18

霧の茶臼岳 山岳アイロニング紀行

紅葉で賑わった山々に、色濃い疲労が見え始めた今日この頃。
年明けから予定している冬山登山トレーニングに向けて、僕は日々着実に準備を進めている。この冬から、僕はチョモランマに向け長期的なスパンでの本格的な山岳活動に入る予定だ。

毎年、本格的な紅葉シーズン前の9月〜10月に、僕は集中して山に登っている。 人が少なく雪の無いシーズンを狙うと、山に行くのはどうしてもこの時期に集中してしまうのだ。今年は 10月毎週末行っていた筑波山の他に、僕は栃木の山々を訪れた。

栃木県にある那須連邦。ここは、現在も蒸気と火山ガスを盛んに噴出している茶臼岳(1915m)、朝日岳(1896m)、三本槍岳(1917m)らで構成された山岳地帯だ。ここには、それら山々を繋ぐ稜線と、火山特有ともいえる広い裾野があり、この那須野を超えると東北(みちのく)である。僕は荒々しく荒涼とした茶臼岳が好きで、エクストリームアイロニングに出会う前からすでに何度か訪れていた。今回の茶臼岳行きは、エクストリームアイロニングを始めてからはまだ2度目である。


茶臼岳は活火山だ。見上げると、禿げあがった山頂付近からはモウモウと噴煙が上がっており、それなりに迫力を感じる。ここ茶臼岳には9合目までロープウェーが通っており、そこから茶臼の頂までは歩いて40分程度で行ける。よって一般的なハイカーのほとんどがロープウェーを使って上まで行き、そこから縦走を楽しむことが多い。しかし、もちろんエクストリームアイロニストは極力乗り物は使わない。登山とは山との対話である。自分の脚で山に登り、一歩一歩その山を知っていく事。それが山での対話だ。そして常に極限を追い求める僕らアイロニスト達にとっては、その険しい行程も含めてエクストリームアイロニングなのである。点と点の極楽移動なら、じいさんになってからでも遅くはないのだ。

10月初旬の平日、僕とトレイルラン仲間である友人は、日の出と共に、霧の立ち込める下の登山口から登り始めた。今回はトレイル&軽登山の装備で、アイロンと携帯コンロの他にはゴアテックスのレインウエアとフリースに速乾タオル、それとPOWER BARとカロリーメイトとチョコレート。あとは粉末アミノバイタルと飲料水1.5リットルをザックに詰めた。輪行バッグに入れたアイロン台は、あえて片手に抱えたままにした。トレイルランであれば、アイロン台をバッグに装着するよりも、片腕に抱えているほうが振り子の原理でバランスがとりやすく、軽快なリズムを刻みやすくなるのだ。


登山道は、登り始めてしばらくは階段になっており、そこを抜けるとガレ場になる。砂と岩が入り混じった、いわゆる火山特有の道だ。あいにく霧が深く、視界があまり利かない天候だったが、軽く走りつつ30分ほどで峰の茶屋に到着。ここはいわゆる避難小屋で、天気が良ければなかなかの景色が広がる絶好の休憩ポイントである。しかし残念な事に、霧でこの日はまったく景色が見えなかった。

この日はいつものようにTシャツ一枚でスタートしたが、風が少し肌寒く感じられたので、ここでフリースのベストを着た。すぐ暑くなったり寒くなったりする僕の無節操な身体にとって、このフリースベストほど重宝するウェアは存在しない。体幹部は暖かいが、他の熱は脇や腕から逃げるこのウェアは、僕のアウトドアライフに一年中欠かせない必須アイテムなのだ。

こうしてフリースベストを着た僕は、アミノバイタルを口に含み、水を少し飲んでからまたすぐ走りだした。このあたりから硫黄臭(亜硫酸ガス)が立ち込めはじめ、霧と噴煙の区別がつかなくなってくる。そして登山道もさらに岩々しさを増してくる。そんな中を走り続け、避難小屋から約30分ほど経ったあたりで、ついに茶臼岳山頂に到着した。意外とあっけないのである。


この悪天候のせいだろうか、この時点で山頂に他の登山者は誰一人として居なかった。僕は山頂にある小さな祠に祈りを捧げ、休むまもなくアイロン台とアイロンを取り出した。そして山頂から少し離れた岩肌のエッジに行き、山に登った達成感が冷めぬうちにアイロン台をセットし、携帯コンロで直にアイロンを暖めた。はやる気持ち抑えつつも、僕の心は踊りはじめる。そんな僕を見る友人の目はどこか冷たい。それはまさにエクストリームアイロニングを見つめる世間の目そのものであった。





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