構造の冒険
しばらく前にも一度、このコラムに書いた事がありますが、ここ数年の建築界のトレンドは、構造と意匠の「一体化」にあるように思います。かつて構造設計と言えば、意匠が先にあり、その意匠について構造計算を行い、実現可能な設計に「落とし込む」というイメージでした。しかし近年は、むしろ構造的に実現可能なギリギリのレベルまで意匠を「研ぎ澄ます」というイメージに変わって来ています。
今週(6月8日)放送のA邸も、そんな「研ぎ澄まされた」住宅の1つです。

外観写真を見た瞬間、私はトランプタワーを思い浮かべました。そう、ニューヨーク・マンハッタンの5番街にある金ピカのビル・・・ではなく、トランプのカードをトラス状に積みあげていくあれです。正面から見て左側の斜めの壁と、それと対になった筋交いが、そう感じさせたのです。もっとも、A邸の場合は本物のトランプタワーとは逆に、上に向かって広がる逆3角形ではありますが。
果たして、実際にお邪魔しての印象は・・・まさしくトランプタワーでした。
A邸は、隣家が迫った南北を閉じ、道路に面した東側と、崖上のため隣家の屋根越しに視線が抜ける西側を開いた「筒」状の建物です。崖側にある玄関前のテラスに立つと、反対側までスコ〜ンと「筒抜け」になった間取りに驚かされます。
2階は約30畳大の文字通りワンルーム。南側の壁に沿った斜めの列柱(建築的には「偏心ブレース」と呼ぶそうですが)以外に室内に柱がありません。1階には個室が3室ありますが、間仕切りは全て引き戸なので、水回りを除いて、こちらも実質的にワンルーム。
とっても仲の良いAさんご一家ですが、だからといって永遠に家族構成が変わらない訳ではありません。子供たちが独立する事もあるでしょうし、新しい家族を迎える可能性もあるでしょう。A邸は、そうした様々な状況に対応できる柔軟性を持った建物です。








