髪は男の命。と、彼は言い切った!
毎日たくさんの患者さんとお会いする。それぞれの人生ドラマがあるわけだが、今日はF氏(56歳)の話をしよう。2ヶ月に1回ほど、出張帰りにフラッと品川に立ち寄る。
今回はドイツ、フランス帰りだという。パリのオルセー美術館の写真を見せてくれた。顔色よく、体もひきしまって見るからに健康そうだ。
当院との「馴初め」は、2年半前。C型肝炎で週に2回のインターフェロン治療を余儀なくされていた。東京に転勤が決まり、ネットで、駅前で夜7時まで開いているうちのクリニックを調べ、主治医に言ったそうだ。「品川のクリニックで注射だけしてもらってもいいですか?」 C型肝炎は、肝炎ウイルスの感染により起こる。血液を介して感染し、自覚症状がない場合でも、治療しないで放っておくと、肝硬変さらに肝がんに進行する確率が高くなる。図はC型肝炎ネットhttp://www.c-kan.net/

現時点で、もっとも有効なC型肝炎の治療薬はインターフェロンだ。インターフェロンはウイルスの増殖を抑える働きを持ち、もともと体内にある白血球・リンパ球などから産生されるタンパク質。C型肝炎ウイルスを体内から排除して完全治癒することができる。
治療中のF氏は本当に辛そうだった。インターフェロン療法の副作用で、だるい、熱が出る、筋肉痛、食欲がない。抑うつ症状も出ることがあるが、これだけ辛ければ、うつ傾向が出るのもうなずける。それでも副作用に耐え、諦めることなく治療を続けた。
その後ウイルスは検出されなくなり、完治することができた。関西に戻り、もうクリニックに通院する理由はないのだが、東京方面に出張があると立ち寄ってくれる。
今日も、いい色に日焼けした、元気な顔で訪れた。医療にたずさわるものとして、元気になった患者さんにお会いできることほど嬉しいものはない。

ゴルフも今では海外で、というから、羨ましい限り。QOL(生活の質)はもと患者さんだったFさんが、品川の狭いクリニックの鳥籠中の医師よりも、今は断然上である。
今日はひとしきり、海外の楽しいお話をしてくれた後に、「先生、髪の薬を下さい」という。え?何で?必要ないと思うけど・・・
年齢からみて十分だと思うのだが、インターフェロンで薄くなりかけた額の生え際が気になるらしい。こんな話をしてくれた。
インターフェロン療法で体力的にも精神面でもきつかった頃、自分の姿を鏡で見て、弱っているなと感じ、こんな事ではいけない。と強く感じたそう。





