浅田次郎「薔薇盗人」を読む
二番花が色濃く咲いている。急に暑くなってきて、昨日は熱射病でだいぶ人が倒れたとか。とても日中はバラの世話をしていられないので、今日は朝5時に起きて、木酢液とアグリチンキを撒いた。アグリチンキはこないだのバラクラ行きの際に買ってきたもので、初めて使う。ウドンコ病の効果に期待。ひと仕事を終え、シャワーを浴びて、朝ごはんを食べたら、まだ7時だった。なんという健全な生活。
黒星病が発生したが何とか治まっている。「Dr.真島康雄のバラの診療室」(ベネッセ)という本を読んだら、「黒星病の葉は放っておきます」と書いてあった。バラと黒星病は人間が思っているよりもいい関係なのではないか。葉が黒星病で落ちることを、バラは期待しているのではないかという仮説だそうだ。そういえば、バラが密生した葉を黒星病の菌を利用して始末しているような気がしないでもない。大きく育ってしまったバラには、かなり悲惨な格好になるが、黒星病は怖い病気ではない。ただ、新苗のような小さな苗木がかかってしまうと、あっという間に丸坊主だし、茎だけになると枯れるのも早い。だから、放っておきますという勇気はまだない。
「薔薇盗人」浅田次郎(新潮文庫)を読み返してみた。
いろいろな小説にバラは登場する。例えば、古くはボーモン夫人の「美女と野獣」。これはジャン・コクトーがまず映画化して、ディズニーのアニメにもなったので、バラが重要な役割を演じているのを覚えている人も多いだろう。ただ、多くの場合、小説に登場するバラは、バラ好きの重要な問題、「それはどのバラですか」という問いには答えてくれない。ディズニーの「美女と野獣」では、ハイブリッド・ティーのような赤いバラがガラス器の中に入れられていたが、ボーモン夫人がこの話を書いた1757年には、まだハイブリッド・ティーは作出されていない。「
薔薇盗人」は、その点、大変画期的な作品である。この作品は、少年が世界一周航路の客船の船長である父親に手紙を書いて日常を報告することで、書簡体の小説になっている。そして、主人公の洋一少年は、父に命じられて、不在の間、父の代わりにバラを育てているのだ。当然、そこにはいろいろな種類のバラの名称が出てくる。家の南向きの庭には、鉢植えで、ハイブリッド・ティー。ダブル・デライト、プレシヤス・プラチナム、パスカリ、レディ・ローズとかいろいろあって、中でも、父親が「命より大切」いうのが、キャプテン・ハリー・ステビングスである。
フロリバンダは地植えになって、庭のあちこちにあり、シャンペン・カクテル、チャールストン、トゥモローが咲いている。玄関のアーチは、赤い一重のドルトムント。裏庭はイングリッシュ・ガーデンになっていて、手のかからないファンタン・ラトゥール等のオールド・ローズや、イングリッシュ・ローズ。塀と家の壁には、白いモダン・シュラブがぎっしりと咲いているのだそうだ。さらにこのご町内は、近所の家でもみなバラを育てていて、毎年コンテストまで行われる。少年のガールフレンドのヘレンは、ハイブリッド・ティーのレッド・デビルの大輪をみごとに咲かせている。





