なんといってもイングリッシュ・ローズ
東京はいきなりの雪だが、この寒さを歓迎している。実は、このところ忙しくて、まだ鉢替え、土替えが全部終わっていないのだ。バラの根をいじる作業は、できるだけ寒い時にやっておきたい。地上部に変化がなくても、根が動いていることがあるからだ。この寒さがいつまで続くかと焦るが、もっとも、今年バラを始める人には、来年からの作業になるのでご安心を。
さて、前々回に、イングリッシュ・ローズをオススメした。その中でも、まず、鉢栽培に向いた品種がいいとした。これにはいくつかの理由がある。まず、陽当たりがどれくらいあるかを確認するためには、入手した時のプラスチック鉢のまま、予定の場所に置いて、しばらく育ててみるのがいい。意外に、例えば洗濯物の陰になったりして、陽が当たっていなかったりする。さらに、そうして試している間に細い根が育って、後に地植えやひと回り大きな鉢に移し替える時に失敗が少なくなる。また、植物は、環境によって普通より大きく育ってしまうことがある。特に、イングリッシュ・ローズは、日本で育てるとオリジナルのデータより大きくなることが多い。そんなことを実際に確かめるためにも、やはり鉢植えでしばらく育てられるものが便利だ。次に、四季咲きのものを選ぶ。最近のイングリッシュ・ローズは、ほとんどが四季咲きであるが、初期のものに、例えばコンスタンス・スプライなどの一期咲きのものもある。これは春に花が咲いてしまうと、それからずっと葉と茎を栽培することになるので、最初に一鉢だけ手にする品種としてはとても寂しい。他に鉢があればいっしょに面倒を見るが、花が咲かないとなると、ついその存在を忘れがちになる。
作出年が新しいものがいいとしたのは、イングリッシュ・ローズもすでに40年以上の歴史があり、品種改良が進んで、最近のものの方が耐病性の面でも進歩しているためだ。でも、これは逆にいえば、初期のものに比較的そのような弱い傾向があるということだけなので、それほど気にしなくてもいいかもしれない。最後に、芳香種。香りが強いとされているものを選ぶようにオススメした。香りは、バラの、特にイングリッシュ・ローズでは欠かせない楽しみのひとつだ。『美味礼讃』を書いたブリア・サヴァランなら、「チーズのない食卓」というだろう。香りのないバラには、それくらい大きな欠落感がある。まして、イングリッシュ・ローズには、花の色や形と同様に、品種によってそれぞれ異なる香りがあって、この香りの違いを楽しむだけでも、あれこれ何種類か集めたくなる。思いがけなく漂ってきた香りには、なんともいえない喜びがある。ペットの子犬が鳴いて、ふと視線が合った時、シッポを振りながら子犬の見せる愛くるしい表情に、思わずニッコリしてしまうあの感動に似ている。バラが香りで誘ったのだ。





