このオペラを見よう! 第5回 二期会「エフゲニー・オネーギン」
いよいよオペラシーズンも開幕ということで、久々に「このオペラを見よう!」の復活。まずは、二期会の「エフゲニー・オネーギン」から。
コンヴィチュニーのブラティスラヴァ版。2幕に友人のレンスキーを殺してしまったあと、
死体のレンスキーと共に踊るオネーギン、という衝撃的なシーン
もくじ死体のレンスキーと共に踊るオネーギン、という衝撃的なシーン
1. このオペラを見よう!第1回 チューリヒ歌劇場来日公演『椿姫』
2. このオペラを見よう!第2回 二期会『仮面舞踏会』
3. このオペラを見よう!第3回 藤原歌劇団『蝶々夫人』
4. このオペラを見よう!第4回 日生オペラ『 カプレーティとモンテッキ 』
「エフゲニー・オネーギン」はロシアが生んだ大作曲家ピョートル・チャイコフスキーが書いたオペラである。日本でも大変人気のあるチャイコフスキーだが、「白鳥の湖」「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」の3大バレエや、交響曲4番、5番、6番(悲愴)、ピアノ協奏曲第1番、ヴァイオリン協奏曲などが広く知られ、多くのジャンルに傑作を残しているのに対して、オペラ作曲家としてはあまり有名でない。しかし、実際にはチャイコフスキーにとってオペラはライフワークの1つであり、11もの作品を残しているが、現代でも上演されるのは「エフゲニー・オネーギン」と「スペードの女王」くらいのものである。上演機会に恵まれない理由としては、台本に恵まれなかったとか、題材が悪かったとか、オペラ独特の華やかさがないとか、いろいろ言われているが、ロシア語であることも大きなハンディキャップであろう。更に言うとこの「エフゲニー・オネーギン」の主役、オネーギンは実に嫌味でいけ好かない男。典型的なインテリのロシア人と言われ、ロシア国内でもこのオペラはあまり人気がない。
しかし実際には、私はこの「エフゲニー・オネーギン」は、不朽の名作であると思っている。全編に甘く哀しく美しい旋律が流れ、チャイコフスキーの真骨頂であるロマンティックな音楽が満載だ。原作は、ロシア文学最高の詩人と言われるプーシキンの同名の小説。初演は1879年にモスクワのマールイ劇場で行われた。また、オネーギンはプーシキンの分身と言われる。
ストーリーを簡単に追うと、ロシアの田舎の地主のラーリナ家に、末娘オルガ(メッツォ・ソプラノ)の婚約者レンスキー(テノール)が友人のエフゲニー・オネーギン(バリトン)を連れてくる。するとオルガの姉タチアーナ(ソプラノ)は、オネーギンに一目ぼれをしてしまい、オネーギンへの愛の手紙を書くが、彼に分別くさく拒否され、絶望する。ラーリナ家のパーティーで自分の悪口を耳にしたオネーギンは、このパーティーに誘ったレンスキーへの腹いせのために、執拗にオルガとばかり踊り、嫉妬に狂ったレンスキーは彼に決闘を申し込む。そして、レンスキーは銃弾に倒れてしまう。ペテルブルクのグレーミン公爵(バス)の家の舞踏会に決闘のあと海外を放浪していたオネーギンが姿を現す。そこで今はグレーミン公爵の妻となったタチアーナと再会、美しく大人の女性に成長した彼女を見て、今度はオネーギンが恋の炎を燃やす。情熱的なオネーギンのアプローチにタチアーナの心も揺らぎかけるが、最後はきっぱりと拒否し、永遠の別れを告げられたオネーギンは絶望する。
見所も数多いが、幾つか挙げてみよう。まずは、1幕のタチアーナが手紙を書く場面のアリア「私は死んでもいいわ!」。20分に及ぶ名シーンで、恋心が抑えきれず、ドンドン盛り上がって行き、最後は感動的に歌い切って夜が明ける。そして、2幕フィナーレのレンスキーのアリア「青春は遠く過ぎ去り」。決闘を前にしてオルガへの愛を切々と歌うが、これほど哀しく美しい旋律を持ったテノールのアリアは滅多にない。単独でも良く歌われるので、知っている人も多いであろう。3幕のグレーミンのアリア「誰でも1度は恋をして」は、バスの名アリアで、チャイコフスキーが友人のバス歌手のために書いたと言われている。オーケストラのシーンでは、3幕の舞踏会のシーン冒頭のポロネーズ、2幕冒頭のワルツもいかにもチャイコフスキーらしい名曲だ。
上のシーンをリハーサル中の二期会
ブラティスラヴァ版。オケピットの周りに回廊を造って、歌手はこのようにして歌う
これもブラティスラヴァ版





