本・エンタメ

2008/08/01

パリ国立オペラ来日公演

来日がまだだった最後の大物オペラハウス、パリ国立オペラが遂に来日を果たした。

 7月19日、兵庫県立芸術文化センターの「アリアーヌと青ひげ」を皮切りにパリ国立オペラの来日公演ツアーが始まった。私は昨日(29日)、バルトークの「青ひげ公の城」と「消えた男の日記」の2本を観に行った。その感想なども含めてレポートしよう。

世界中のあらゆる一流オペラハウスが毎年のように来日公演をする中、パリ国立オペラが来日しないことはオペラ界の七不思議であり、以前より待望論が声は大きかった。しかし、4年前に総裁に就任した世界一の敏腕プロデューサー、ジェラール・モルティエが遂に重い腰を上げさせたのだ。モルティエとは、オペラ界で知らない人はいないほど有名な人である。1981年にブリュッセルの名門モネ劇場の総裁として次々に新機軸を打ち出し、世界中の注目を浴びる存在となった。そして、カラヤン亡き後の1992年にザルツブルク音楽祭の総監督に就任するとカラヤンとは180度違う方向性へ向かっていったのだ。すなわちカラヤンのやっていた世界中からスター歌手を集め、オーソドックスで絢爛豪華な舞台を作り、スタンダード・ナンバーの名作を上演する、という直球勝負のエンターテイメント路線から、若手の無名なアーティストの積極的な登用、前衛的な舞台を造ることで知られたアバンギャルドな演出家を集め、20世紀の作品やナチスから退廃芸術と呼ばれた作品を積極的に上演したのだ。彼の10年に渡る任期中、プッチーニの作品は1度も上演されず、ヴェルディの作品はわずかに「ドン・カルロ」が上演されたのみであった。

当初は、ザルツブルク音楽祭の保守的なファンたちから賛否両論が、いや大ブーイングが巻き起こり、その前衛的で過激な演出に劇場中に怒号が飛び交うのも決して珍しくなく、聴衆の半分が1幕で席を立って帰ってしまったという事件も度々起こった。しかし、多くの保守的なオペラファンとは決別したかも知れないが、新しいヨーロッパの知的セレブの層等を獲得したようで、任期終盤には過去最多の観客動員数を記録するほどであった。そんなモルティエがルール・トリエンナーレ芸術祭の総監督を経て、2004年にパリ国立オペラの総裁に就任。彼の最大のテーマである「芸術の最大の敵はルーティンに陥ること!」という方針のもと、ここでも大鉈を振るったが、3年間でパリ国立オペラの聴衆の平均年齢を13歳も若返らせることに成功したそうである。

今回、モルティエが選んだプログラムは、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」、デュカスの「アリアーヌと青ひげ」、バルトークの「青ひげ公の城」、ヤナーチェクの「消えた男の日記」という4タイトル。来日オペラハウスのプログラムとしては、常識を逸脱したような組み合わせで、日本のオペラファンは保守的なものを好むと百も知っていて、挑戦してきたのだ。実施にチケットの販売状況はスタートが悪く、私も売れ行きを心配していたが昨夜はほぼ満席に近い状態だったので、モルティエは賭けに勝ったのかも知れない。

「トリスタンとイゾルデ」2幕の炎の世界
©Eric Mahoudeau Opera national de Paris

「トリスタンとイゾルデ」3幕フィナーレ モルティエはルーベンスのマリアの昇天を
イメージした、と言っていた。
©Eric Mahoudeau Opera national de Paris

「アリアーヌと青ひげ」 時代は1960年代の縫製工場に置き換えられている。
©Ruth Walz Opera national de Paris

もう1つ「アリアーヌと青ひげ」
©Ruth Walz Opera national de Paris





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