坊主とグランパとその母親
日常の『ちょうどいい』を探すべく、我々ちょうどいい隊(僕、イラストレーターの山崎美帆、マルチ漫画家のシャシャミン)の三人が、前回から訪ねているのは三軒茶屋にある一見バラックのような出で立ちの、狭くて妙に居心地のいい金魚の釣り堀。始めて三十分、釣れたのは隊長の僕が2匹で、あとの二人は釣れずにそろそろ焦りの色が見える(取材費をケチった隊長は、1時間分の料金しか払ってないのだ)。
我々ちょうどいい隊が、1時間三人で釣り上げた総金魚が
これである。こうやって見るとけっこう多く感じて大満足
これである。こうやって見るとけっこう多く感じて大満足
「あのね、さっきから向こうの常連のグランパの動きをみているとね、柔らかいエサを何度も打つことによって、金魚を集めて、それを釣ってるようだよ」
「ん?どゆこと」
「君たち二人は固いエサでずっと粘ってるでしょ、それだと魚は集まらないの。柔らかいエサを何度も打って水中にエサをとけ込ませるのがコツらしいよ」
隊長の助言を聞いて二人とも早速柔らかいエサをつけて何度も打ち込む。
「わっ、釣れた〜!」
「キャーッ、わたしも釣れた〜!」
「ハーイ、ご覧の通り、釣れました〜」とシャシャミン隊員。
釣れた人はみんなこの笑顔になる
釣れた人はみんなこの笑顔になる
「わっ!釣れたー!」と美帆隊員。
後ろのシャシャミンは、もはや完全にハマった目
後ろのシャシャミンは、もはや完全にハマった目
この金魚の釣り堀のいいところは各自の上達が速いことである。完全に初心者で、右も左もわからなかった美帆隊員も、今じゃ慣れた手つきでエサを針に付け、打ち込んでいる。なんだか俄然面白くなってきて、三人は真剣にウキを見つめる。
「そんなんじゃダメなんだよ、坊主!」
声を荒げる常連のグランパの方を見ると、さっきお母さんと一緒に店に入ってきた小学三年生ぐらいの男の子に言っているようだ。グランパは聞く。
「坊主、釣りは初めてか?」
「ハイ、初めてなんです。釣りもここも」
グランパは男の子に聞いてるんだけど、お母さんが答える。その男の子はやっぱり素人で、ウキを水面までつけずに空中でブラブラさせている。
「あのな、そこに付いてるのはウキって言ってな、こうゆーふーに浮かせるんだよ。そのウキを良く見て、ウキが動いたらピシッと竿をあげるんだよ」
「ホラ、こうやってやるのよ」
だからなんでお母さんが間に入っちゃうの〜。しかも男の子の方もハナから返事する気無しって感じ。坊主とグランパと母親、この関係性、もちっとなんとかならないかね〜。
「よし、坊主、場所変われ。お前ここに来い。ここは釣れるぞ〜!」
そうか!さっきから常連のグランパがしきりにエサを打ち込んでいたのは、この子に釣らせるために、わざとやっていたのか。う〜ん、常連の思いやりに、ちょっと感動。
「ここに魚を集めておいたから、ここにエサを打ち込むんだぞ。いいか?わかったか」
「あっ、ありがとうございます」
お母さんがお礼言っちゃったよ。通訳か!お母さんは。
「だから〜、そんなところで釣ったって釣れないって言ってるだろう〜!なんで言うこと全然聞かないんだよ、坊主は。釣りって言うのはな、自己流なんかじゃ釣れないんだよ。おじさんの言うこと聞けば釣れるの!だから〜、なんで言うこと聞かないんだよ〜」
子どもはガン無視。現代の子ども事情丸出し。せっかくグランパが魚集めたって場所とは全然違うところで釣っている。





