本・エンタメ

2008/09/11

悠々として急げ、金魚の釣り堀へ

「悠々として急げ」
これは大作家・開高健が、我々一般庶民に贈った言葉である。

大作家・開高健はベトナム戦争のルポや、アマゾンの魚を釣ったりと、悠々として急いだ。
そして我々一般庶民は三軒茶屋の『金魚の釣り堀』に、悠々として急いだ。

これが駅から歩いてすぐ現れる問題の金魚の釣り堀。
正しい店の名前は『ツリボリ三軒茶屋』のようである

僕もこの店の存在は昔から知っていたものの、実際に足を踏み入れたことはなかった。しかしこの店の外観のインパクトもあって、噂だけはいろいろ伝え聞いている。

「金魚が釣れるらしい(あたり前か)」
「釣った金魚は持ち帰れるらしい」
「2時間で二百匹ぐらい釣る猛者もいるらしい」
「ちょっと空いた時間にプレイするとちょうどいいらしい」

最後の噂はちょっとワザとらしいが、そうと聞いた以上はちょうどいい隊をすぐさま結成し号令をかけ、月曜の昼三時に三軒茶屋に集合した(噂によると休日はかなり店が混むとのこと)。
日常の『ちょうどいい』を探すちょうどいい隊、今回のメンバーは隊長の僕、最近僕の仕事のお手伝いをしてくれているイラストレーターの山崎美帆隊員、そして前回も登場した映像を中心に活動しているマルチ漫画家のシャシャミン隊員の三人。隊員の二人は三軒茶屋に詳しく、隊長は借りてきた猫のごとく街を神妙に眺め回す。隊長がこの街に来るのは何年かに一度、免許の書き換えのときだけである。

「おおっ、三軒茶屋の西友ってなんだかフンデルトヴァッサーが作ったみたいな屋根してるね〜(フンデルトヴァッサーとは曲線やフリーハンドの線を多様するオーストリアの建築家で、自然回帰を唱える面白凄い人。大阪の奇妙奇天烈なゴミ処理場を作ったことでも有名)」

フンデルトヴァッサーが作ったかのような形をしている、三軒茶屋の西友。
屋上やベランダに木が生えていたらもっと『ぽい』

隊長は少しでもいいところを見せようと博識ぶるのだが、隊員の二人は反応無し。

「わたしの友人がここの西友の上の階で働いていて、内田裕也がよく来るらしいんですよ。それで友だちがいつの間にか内田裕也の担当みたいになっちゃって、内田裕也が来ると指名がかかるらしいですよ」
「へ〜、指名がかかるってどうゆうこと?」
「なんか内田裕也と一緒にどこの売り場にも付いていって、全部の買い物につき合うらしいですよ」
「担当の販売員が付くっていうVIPな感じと、でも西友っていうギャップが凄く内田裕也っぽくていいね〜。素晴らしいよ〜。さすがパワー・トゥー・ザ・ピーポー!だね」

隊長のフンデルトヴァッサーには食いつきもしないで、内田裕也で盛り上がる隊員二人。でも確かに面白いぞ、内田裕也。

そんなことを話しているうちにすぐに問題の『金魚の釣り堀』に着いてしまった。駅からすぐの小径にある、かなりの立地条件なのだけど、外観はかなりのバラック感。でもそれが意外に心落ち着くのである。人間はバラックが好きな生き物だ、と断言できなくもない。ひょっとしたら、フンデルトヴァッサーの建築とは違う意味で、この店もデザインされているのかもしれない。





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