アユに支配された水族館
マルチ漫画家のシャシャミンと僕の我々ちょうどいい隊は、レートが普通の四分の一という1円パチンコにさえ大負けし、京王稲田堤駅前でヒソヒソと話し合っていた。近くに警察がいたら職務質問間違い無しのヒネクレ文科系丸出しの顔ぶれだが、運良く警官の姿はなかった。
「ね、ホラ、魚が一杯だよー!気持ち悪いねー」無邪気に喜ぶシャシャミン隊員
「あのさ、この辺に水族館があるらしいんだよ、多摩川の魚専門の淡水魚水族館。知らない?シャシャミンってこの辺地元なんでしょ」
「そんなのあったかな〜?」
「確か多摩川近くの大きな公園にあるらしいよ」
「じゃあクジラ公園かな?行ってみよう」
ビィー、トコトコトコ。ちょうどいい隊二人の原付バイクが青空の下走り出す。今日は雨になるようなことを予報で言っていたが、結局晴れた。なので大変気持ちがいい。このまま日本一周に出発しそうなぐらい、気持ちがいい。30も後半のいい歳こいた大人二人が、原付をトコトコ走らせるなんて、情けないと言えば情けないが、気持ちいいのは間違いないのだ。燃費もいいし、サイズも小さくて、うろちょろアレコレちょうどいい。だから、コレでいいのだ。平日の昼間大人バカ二人が、原付でクジラ公園を目指す。
信号待ちの間は、二人でなんでもないことを話す。東京じゃセカセカしてる道路も、神奈川県では大分ゆったりしている。この辺りって東京からちょっと来ただけなのに、一気に東京感が無くなって、のどかでのんきで気持ちがいい。
「ここがクジラ公園なんだけど…、あっ!あった、あれじゃない?」
みつけた多摩川水族館は、もっとものすごく小さな施設を想像していたのだが、その想像よりちょっとだけ大きな施設…って何の説明にもなってないかもしれないが、そんな規模の水族館。水族館っていうより、ちょっと養殖場的な雰囲気もあって、コンクリートの大きな水槽がいくつかに、一部にガラスの水槽が並ぶ。
「アレ?ガラスの水槽の中、鯉やフナに交じってアユがいる。すみません、アユってエサは何与えてるんですか?」
アユって成長すると普通のエサは食べなくなって、川底の石に付いた苔しか食べない。どうやって飼育しているのだろう。実に不思議で、近くで作業していた水族館のオジサンに聞く。
「エサなんかあげないよ。アユは苔(こけ)を食べる魚だからね、ほっとけば水槽の苔を全部食んでくれるの」
「え?そうなんですか。僕子供の頃家の中でこうやって水槽で魚飼ってたんですけど、じゃまだって外に出されたら一気に苔だらけになっちゃって掃除が大変だったんですよね〜」
「そうでしょ〜。外に置くとすぐ苔が生えるからね。だからホラ、全部の水槽にアユ入れてるの。そうすれば勝手に苔を食べてくれるから、自然に水槽の掃除をしてくれるんだよ〜」
うわ〜、施設の人手不足を魚の性質まで利用して上手いこと運営している、って感じが面白い。こういうアイデア経営みたいな話、大好き。
アユのおかげで奇麗な水槽
「わっわっ、かせくん(僕のことね)、こっちのコンクリの水槽見てよ。なんだか魚だらけで真っ黒!ビッシリいる。気持ち悪ぅ—、なんて魚だろうね」
「え〜と、これは全部アユだね」
「よく上から見ただけでわかるね〜さすがかせくん川育ち!」
「すみません、こんなに沢山のアユ、どうしたんですか?(こんなに大量のアユ、稚魚から育てるなんて大変そうだし)」
またオジサンに質問。
「これはね『おたすけレスキュー』で助けたの。中州の、あとは干上がるだけってところに取り残されてるアユを、網ですくったりしてここに移すの」
「え?そんな簡単に捕れるもんなんですか」
「簡単だよ、ウジャウジャいるからね〜」
「多摩川はやっぱり奇麗になったんだよ〜、昔より」
感慨深げな地元育ちのシャシャミン隊員。シャシャミン隊員が子供の頃は、噂通りやっぱりひどかったそうだ。





