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2008/06/07

イエス・ミュージックの夜+1  フラッシュとピーターの70年代

イエスを脱退したピーター・バンクスにとって、70年代はさまよえる時代でした。その前半、わずか2年間で3枚のアルバムと1枚のシングルを残したのが、ピーターのバンド、フラッシュでした。決して成功したとはいえないバンドでしたが、その疾走感は今年になって紙ジャケとなって再発され、再評価される機会を得ました。

 5月下旬、Yesを脱退後にPeter Banksが結成したバンドFlashの3枚のアルバムとPeterの最初のソロアルバム『Two Sides Of Peter Banks』が紙ジャケで再発されました。今夜はこのFlashを聴いてみたいと思います。

それにしても、ぼくがまだ若い頃は、Flashのレコードなんてそのへんで売っているわけではなく、とうに廃盤になっていました。けっこう、手に入れるのに苦労したわけですが、それが再発されてしまうのだから、感慨深いものがあります。

もっとも、CD化は初めてではなく、かなり以前にOne Way Recordsから出ていますし、ぼくの手元にあるのもそれなので、今回の再発は買っていないのですが。

Flashを聴いていると、PeterとSteve Howeのギターという楽器に対する姿勢の違いというのを強く感じます。具体的に言うと、Peterはギターという楽器がいろいろな音を出してくれることに関心があり、Steveはギターという楽器でいろいろな音を出すことに関心がある、ということです。つまり、Peterにおいては主役はギターであり、Steveにおいてはプレイヤーが主役だということです。

本当に、Peterのプレイを聴いていると、ギターが音を出すことが楽しくて仕方ないのではないか、そう思うのです。けれども、そうした姿勢がYesにおいては受け入れられなかった、ということになるのです。

Flashは1971年頃に結成されました。メンバーはボーカルのColin Carter、ベースのRay Bennett、ドラムスのMike Hough、そしてPeter。ファーストアルバムの『Flash』を製作したときは、同じ元YesのTony Kayeがゲストとして傘下していますが、『In The Can』と『Out Of Our Hands』ではPeter自身がシンセサイザーを演奏しています。

バンドとしての勢いを感じさせるのは、何といってもファーストアルバムです。1曲目から彼らの代表曲となる「Small Beginnings」が疾走します。レコーディングのスケジュールを見ると、ほんとうに数日間で作業が行われており、勢いそのままがアルバムに反映されています。Peterのギターが炸裂し、それを正確なドラムスやベースが支え、Collinの伸びのあるボーカルが引っ張っていく、そんな音なのです。とにかく走っていく演奏は、聴いていて本当に気持ちが良いいのです。個人的には、ぼく自身の身体が持っている本質的なリズムというのが一致していると感じていて、繰り返し聞いてきたレコードでした。

不思議なのは、Peterがコンポーザーとしてほとんどクレジットされていないということです。音を聴いていると、Peterが主役のバンドに聞こえるだけに、とても不思議です。けれども、Peterにとって曲というのは舞台なのかもしれません。RayやCollinの曲はPeterが存分にギターを演奏できるように用意されたものではないか。曲そのものの持つドライブ感こそが、Peterのギターを生かしているのではないか、そう思います。

思い返せば、YesにおけるPeterの演奏が光る曲は、「I See You」や「Everydays」といったカバー曲でした。

セカンドアルバムの『In The Can』はファーストアルバムの延長という音作りをしていて、聴いていてあまり区別がつかなかったりもしますが、それでもMike Houghのドラムソロがあったりして、ちょっと余裕を見せています。

けれども、そのことがFlashを袋小路に追い込みます。サードアルバムはコンセプトアルバムでした。『Out Of Our Hands』はチェスをテーマにした曲が演奏されます。ドライブ感よりも音の重さが求められました。それは、Flash自身が、Peterが在籍していたYesのような作品を追求した結果なのかもしれません。けれども、レコーディングこそ終えたものの、リリース時にはすでにバンドは解散していました。

ジャケットを見ると、『Flash』のパンチラ、『In The Can』の乳首が髪の毛で隠れた女性の胸といったデザインと比較して、『Out Of Our Hands』では手が重なって砂漠の夜のような風景という色気のないものでしたし、邦題は『死霊の国』というものでした。バンドとしてようやくオリジナル色の強い音作りになったという評価がある一方で、何かが失われてしまった、そんなアルバムになっています。





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