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2008/05/31

イエス・ミュージックの夜16  イゴール・コロシェフとハウス・オブ・イエス

Igorの唯一のソロアルバムは、『The Ladder』と同じ99年に発表された『Piano Works』というものです。IgorをYesに引っ張ってきたJonのアイデアをもとに製作された、ピアノによるソロです。『Relayer』が好きで、ライブではRickよりもPatrickに近い派手なプレイを目指していたIgorですが、ソロアルバムではむしろ地味なほど静かでさびしげな演奏を聴かせてくれます。1曲目の「The Blue Rider」では、『Country Airs』のRickを思わせるプレイをしていますが、全体としてはクラシック音楽に裏打ちされた、演奏の技術やスタイルに重きを置いた音楽になっています。同時に、どんなに派手なプレイをしてもどこか寂しげなのは、故郷を遠く離れてしまったロシア人の心象というものなのでしょうか。耳に残るメロディというよりも、中途半端な印象の曲が多く、コンポーザーとしてどうかとは思うのですが、だからこそ、Igorの孤独を感じてしまうのです。

Igorは引き続き、Jonとの共作『True You True Me』の製作に取り組みました。しかし、これは結局、実現しませんでした。予告までされ、Igor自身のレコーディングがなされても、Jonが忙しくて歌うことができないまま、先の事件に至ってしまったのです。

Igorはその後、セッション・プレイヤーとして活躍を続けることになります。けれども、高い技術を持ったこのプレイヤーが、自分自身を取り戻すのは、まだ先になりそうです。

それにしても思うのですが、Yesという老舗のバンドに参加した若いミュージシャンにとって、参加そのものが幸福だったのかどうか、考えてしまうのです。そのことによってバンドは若返り、質の高い作品を送り出すことに成功します。けれども、若いメンバーはそれに見合った成功を手にしているのかどうか、難しいところです。それは、厳しい経営に直面している老舗企業に若くて才能あるマネージャーが入社し、一定の成果を収めつつも、会社全体の改革ができず、挫折するという構図なのでしょうか。そうだとすれば、複雑な気持ちになります。

Yesは7月から、Close To The Edge And Backと題されたツアーを開始します。Jon、Chris Squire、Alan White、Steve Howe(Asiaで来日したばかりだ!)に加え、Rick Wakemanの代わりにOliver Wakeman、すなわちRickの息子が参加します。今のところ、サポートメンバーという扱いですが、すでに何枚ものアルバムを発表し、実績のあるミュージシャンでもあります。この若いプレイヤーが、父親が在籍していたバンドに参加するわけです。できれば、『House Of Yes〜』におけるIgorのように、自分らしいプレイを展開してくれるといい、そう思っています。





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