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2008/03/15

イエス・ミュージックの夜8  アラン・ホワイトと海洋地形学の物語

イエスのファンの間では、アラン・ホワイトのドラムは必ずしもいいといわけではありません。ビル・ブラフォードと較べると、品がないとか、力任せなどと言われてしまいます。けれども、メロディを弾こうとするクリス・スクワイアのベースに対しては、アランのドラムはむしろ必要不可欠な要素だったのではないか、そう思っています。

 Yesの二代目のドラムスであるAlan Whiteのプレイを紹介するにあたって、選んだアルバムは、『Tales From Topographic Ocean』です。実は、ぼくが初めて買ったYesのアルバムって、これなんです。このアルバム、何がすごいといって、2枚組で全4曲、つまりLPの片面に1曲しか入っていないという、あんまりといえばあんまりな、そういう意味ではプログレとしてのYesの究極のアルバムではないか、というものなのです。
確かにアルバムとしては、少し散漫かもしれません。1曲目の冒頭はまるでお経だし。Jon Andersonに言わせると、CD1枚に収まるようにレコーディングし直してもいいかもしれない、というものです。

アイデアとしては、Yesの日本公演のときに、Jonが読んでいた本、インドの哲学者についての注釈が元になっていたとか。そこから、あえて邦題で書くと、「神の啓示」「追憶」「古代文明」「儀式」の4曲が、JonとSteve Howeによって作られ、それに他のメンバーが肉付けしていった、ということになります。
確かに冗長といえばそうなのかもそれません。Steveは自分のソロのライブアルバム『Not Necessary Acoustic』の中で、この4曲のメドレーを10分かそこらで演奏していますし、まあ、それはそれでいいのですが。
それでもなお、ぼくはこのアルバムを何回聞きました。当時、まわりの友達が聞いていたポップミュージックが子どもっぽく思えるほど、思想性や物語性を持った音楽でしたし、4曲はある意味で組曲でしたから、ジャケットの内側の清流や雲の写真を見ながら、古代へ至るトリップをこの音楽を通じて体験していったということになります。そこまでの経験をさせてくれる、それは音楽だけではなく、Rodger Deanのアートワークまで含めて一体のものとして存在する、そういう作品なのだと思います。同じことは、2度と繰り返されませんでした。


というわけで、Alanです。もちろん、Bill Brufordの後任として加入し、ライブでもせっせとドラムを叩いていたわけですが、スタジオでのプレイはこれが最初ということになります。そういう意味では、Alanにとって記念すべきアルバムなのです。

さて、Yesのドラムスとしては、Billの方が上だということを考える人は、Yesファンの半数以上ではないか、とは思います。けれども、バンドとして考えたとき、Billでは限界だったというのがぼくの見方です。前作のタイトル曲「Close To The Edge」でのベースはひたすらリズムをはずしていました。それはそれで効果的だったのです。けれども、それころがまさに、メロディ楽器としてベースギターを演奏するChris SquireとBillの限界ではなかったか、だからこそ、曲としてまとめることがバンドとしてできなかったのではないか、と思うのです。その点、Alanであれば、Chrisのベースをしっかりサポートできる。そこに、Yesの音が生き延びる道があったのではないか、そう思うのです。

Alanが、いかに自己主張の強いメンバーの中で音を調整してきたのか、そしてその中でいかに自己主張してきたのか。そのことは、『Tales From・・・』の中の、とりわけ「The Ancient」の中に強く現れています。
この曲はYesの曲の中でも、インストの力強さがもっともよく出た曲です。前半のドラムスを中心とした、ギター、ベース、キーボードのバトルという演奏は、King Crimsonに負けないのではないか、とも思うのです。そして、このパワフルな演奏は、BillではなくAlanなのです。本当に、King Crimsonの「Red」のドライブ感と比較すると、Alanのドラムスがいかにパワフルかはわかると思います。
それだけではなく、Alanは来日したときに、日本でいろいろなパーカッションを買っています。それをアルバムの中でせっせと使っているというのも、もっと注目されてもいいことです。Yesにとって、あまりにも挑戦的なアルバム、ある意味では究極のアルバムにおいて、Alanは持てる力を全て出した、そう思うのです。
決して、プログレに縁があったとはいえない、器用なドラマーが、けれどもその場面において全ての力を出した、それが、Alanにとっての『Tales From・・・』なのです。
そして、そのAlanのドラムソロは、「Ritual」でたっぷりと聞くことができる、というわけです。







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